第一章 第11話 試しに一戦交えてみた結果・・・ その9
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いや、でも、ダメだな。
やっぱ、諦めちゃ、ダメだ。
俺は、すっくと起き上がる。
屈伸運動。
そして伸脚。
アキレス腱伸ばし。グッグッとやる。
妄想の中でかなみを召喚。
申し訳ないけど、困ったときにはかなみ&エロマン。
「かなみ、生きて戻ったら・・・いいな?」
「シン・・・あの下着つけて、ベッドで待ってる。約束・・・」
「わかった、約束だ(ウヘヘ、勝負下着だぉ)」
というやりとりをして、無理矢理自分を奮い立たせる。
「頑張るしか・・・ないな。約束だし(※約束していません)」
と言っても現状できることは、ひたすらに距離をとって、チャンスがあればコンクリ拾って投げるくらいしかできないんだけどな。
キビシィなぁ・・・。
何分持つかな・・・。
相手がただ近づくだけのパターンならいいけど、連携されて囲まれたら終わりだな。
「ボボボ・・・」
三匹のうちの一体が立ち止まり、手を前に出す。
手のひらから生えてるハトと目が合う。
その手がモリっと膨らんだ。
え? なにそれ。
ボン!
破裂音がして、前方から何か・・・。
「ぁぶねっ!」
寸でのところで身をかわす。
後ろの塔屋の壁にゴガンッと何かが当たって大きなヒビを入れた。
コイツ・・・手に生えてたハトを、高速で射出しやがった・・・。
もういいよ―――――っ!
これ以上難易度あげても無意味だって―――――――――っ!
なんでこの期に及んで敵に飛び道具っ?
ハトミサイル?
むちゃくちゃだ!
プレイヤーの心を折ろうとしてるとしか思えん!
俺の投げる球より全然速いじゃん。くっそ!
世界最速球投げられてちょっと嬉しかったのに―――――――ッ!
こんなん距離とっても無理じゃーん!
飛び道具合戦、圧倒的に不利じゃーん。
基本弓矢や鉄砲の打ち合いは上にいるほうが強いんだよ。
立てこもりたい! 砦に立てこもって城壁の上から勝負したい。
籠 城 し た い !
・・・あ。
砦、城壁。
・・・ちょっと、いいことと思いついた。
塔屋の上に登ろう。そして上から狙う。どう?
「ヨイセッ、ハッ!」
素早くコンクリを幾つか拾う。
それを抱えて、変な掛け声で、ジャンプ。背面跳び。
マットはないが、背中から塔屋の上にザザザーッと着地。
多分3mは余裕で跳べたね。
世界記録だ。人間的にはな。
上がって、見回す。
うーん。武器になりそうなものは落ちてない。
つーか、貯水タンクしかない。
塔屋の端あたりは霧の境界線が掛かっている。裏側に逃げるのは無理か。
立ち上がり、貯水タンクの影に隠れ、様子をうかがう。
壁の下から、「ボッボー」と聞こえる。
うん。あいつら鈍重だから、ここまで登ってこれなくね?
むしろ手をかけて登ってきてくれたらチャンスだ。
顔出した瞬間に狙い撃ちにしてやる。
いいところに陣取ったぜ。
古今東西、戦では高いところが圧倒的有利だからな。
戦国時代でも山城が力攻めで落とされた事はめったにないらしいし。
この塔屋を灰谷城と名付けよう。
難攻不落の居城なり!
最初からこうすればよかった。
この高低差なら、下からハトミサイル撃っても、伏せていれば、角度的に当たらないとおもう。
俺だけが一方的に当てられる超有利ポジション!
まぁ、鳩ミサイルにホーミング性能ついてたらヤバイけどさ・・・。いや。
つ い て そ う だ な ぁ ・ ・ ・ 。
だって、飛んでくるの、ハトだもんな。
方向転換くらいするよな。
撃ち出されるハトだって、同じ激突するならちゃんと相手に当たりたいだろうし。
この期に及んでの難易度二段階バク上げだもん。
もう、誘導弾だと思って作戦立てたほうがいいな。
つまり、ギリギリまで引きつけて被弾直前にかわすしかない・・・きつぅ。
でも、さっきのハトミサイルも相当速かったけど、軌道は見えたんだよ。
多分、動体視力とかも相当上がってるっぽい。
すると、ボンッ! ボンッ! と例の発射音。
撃った! 二発か!
よし、軌道を確認して、直前で・・・あれ?
高速のハトが二匹、俺を通り過ぎてそのまま上へ・・・。
そして霧のドームの壁にガンっと激突。
一匹はそのまま潰れて張り付き、もう一匹はボトッと塔屋の上に落ちてきた。
なるほど。
こっちの世界のヤツらは霧の外には出られないんだな。
「ボ・・・ボボ?」
「ボボボ・・・ボ・・・」
主観ですが、なんで当たらないんだ?的な会話してる?
しばらく経ってボンボン!と、再び発射音。
またハトが俺の上を通り過ぎて行く。
そしてドームの壁にぶつかり潰れる。
もう一匹は灰谷城の天守閣(貯水タンクともいう)に当たり、大穴を開けた。
バシュッと音がしてジャババと水が溢れだした。
うーん。
どうやらホーミング性能とかないね、こりゃ。よかった。
しかもバカだね!
そういやポヨンもこいつらは知能がアンポンタンみたいなこと言ってたな。
フッフッフ。
いかに戦力で劣っていても、バカなら付け入る隙はある。
この天才軍師、灰谷真太郎には、この状況を切り抜けられる策がある。
幼き頃よりあらゆる兵法に通じ(三国志、戦国モノ、戦記モノのマンガで)、数えきれないほどの戦をシミュレートしてきた(戦国・三国志系ゲームなどで)この俺だ。
知略こそが圧倒的不利な戦況をひっくり返す唯一の武器。
軍師がいかに大切か、その身を持って知るがいい、ポッポーよ!
そして三顧の礼を以って俺を迎えに来るのだ、劉備たちよ!
えーと、できれば美少女化した劉備たちよ!
あと、お礼はエッチなやつがいい。
その10へつづいたほうがいい。