第一章 第8話 初めて好きな娘の部屋に入った結果・・・ その2
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そして、ポヨンルーム全体に軽い浮遊感。
ポーチを持ち上げられたのか?
「これは? 瑠璃ちゃんの?」
「ん。知らないです。私のではないですね」
「じゃあ、これもシンのかなぁ?
でも、シンがこんなデザインのポーチ使う?」
「わからないですけど、自分の兄が、こんなプリ◯ュアポーチ的なものを所持して持ち歩いていると思うと悲しいですね・・・」
ふぅと嘆息した感じの瑠璃の声。
悪かったな!
望んで所持してるわけじゃねぇよ。
悲しむなよ!
せめて蔑め!
つーか、この状況ヤバくね?
フタ開けられたら終わりじゃん!
ポヨンルームの中をバタバタ走り回り、どこか隠れる場所がないか探す俺。
うん。知ってる。
さっき確認した。無いんだよ。
俺のサイズで隠れられるスペースはソファー前のテーブルの下くらいしか無いけど、このテーブル、天板がガラスなんだよな。
早速だけど、また詰んだね。
さっきから詰みっぱなし。
つむつむです。
「あの、にぃに・・・兄がこれをつけているところは想像したくないですけど、ベルトの調節の長さからすると・・・女子にしてはウエスト太すぎません?」
「ホントだ・・・じゃあ、やっぱりシンのかな?」
「んん・・・気持ちわる・・・」
怖気が走ったかのような、瑠璃の声。
うぉおおい。
探るなーっ!
推理すんな!
想像すんな!
俺がポーチつけてるところを!
つーか、実際これをつけてる格好はビキニアーマーだからな?
今の瑠璃の想像のはるか斜め上を行きますぞ?
後、気持ち悪いとかはホントにやめろ。
リアルに傷つくから!
ついでにウエストの太い女の子も傷つけたぞお前ら!
いくらお前らのスタイルがいいからって!
今朝のボストロール女子に謝れ!
そして、ポーチのフタは開けるな!
開けるな!
絶対、開けるなよ!
ホントだぞ?
フリじゃねぇから!
ダチョウじゃねぇから!
マジだから!
だって、あけたら・・・俺が小人で真っ裸だからね。
もう、言い訳とかごまかしとかできないから。
気持ち悪いとかそういうレベルじゃないから。
開けられたら・・・。
俺、「ち、ちゃ、ちゃうねん・・・」くらいしか言えないからね。
もうあれです。
死にましょ?
みんな。
ね?
ほんとそうなるよ?
だから開けるな!
開けるなよーっ?
「 開 け て み ま し ょ う か ? 」
や め ろ ぉ ぉ お お お っ 瑠 璃 ぃ っ !
すい、と横移動した感じ。
「はい、どうぞ」と、かなみの声が聞こえた。
この部屋の中にいると重力は常に床から発生していて、逆さになったりしても天井の方へ落ちたりすることはなさそう。
そして若干の揺れなどで外の動きはなんとなくわかるが振動や衝撃は殆ど感じない。
物凄い手ぶれ補正が効いている感じなのだろうか。
今の動きはおそらく、かなみから瑠璃にポーチが渡されたのだろう。
「なにか、にぃにの・・・兄のエロいの入ってたらどうします?」
「あはは、やだー、やめてよー」
うん。
やめて。
ほんとにね?
いい子だから。
エロいの入ってるから。
具体的に言えば俺のチンが陳列されてるから。
リアル猥褻物陳列罪でござーい。
つーか、瑠璃、お前かなみの前ではそんな感じなの?
そんなシモネタチックな冗談言っちゃうキャラなの?
クールビューティーだろ?
それとなんで「にぃに」って言った後、いちいち「兄」って言い直すの?
距離とってるの?
左右に何度か揺られる感覚。
音からすると、振ってる?
シェイキングマイポーチ?
「うーん。重さはあるみたいなんですけど、音しないし、何も入ってないのかな?」
壁の向こうからミシミシと言う音がする。
なに?
なに?
何してんの?
壊すの?
やめて?
乱暴はやめて?
優しくして?
初 め て な の ぉ っ !
俺はというと、無い知恵を絞った結果、ポヨンの掛け布団とシーツと毛布で体を覆い(布団のサイズが小さいから三枚ないと頭まで覆えないのだよ)、結局ローテーブルの下に芋虫のように潜り込んでいた。
どうかバレませんように。
「うーん。開かないです。
横のハートのボタンが外れないです」
「鍵付き?」
「鍵穴ないし、そういうわけでもなさそうですけど・・・無理矢理やると壊れそう」
そうそう、壊れるぞ?
壊れたら大変なことになるぞ?
俺の精神壊れるぞ?
「そっか・・・。
とりあえず、カバンとか、何で廊下にあるのかわかんないけど、うちに持って行っとこうか?
このまま置きっぱなしは・・・」
「というか、兄は結局どこ行ったんですかね?」
「ん~、コンビニ?」
「荷物の中、財布ありますよ?
後は・・・服がいっぱい?
え? なにこれ?」
おおい、勝手に漁るなよ!
ナギちゃんといい、最近のJCは・・・。
「え・・・?
なんか・・・なんだろね?
神隠し、かな?
なんて、ハハ」
かなみ、鋭い!
「かなみさん。
神様だってもうちょっと人選びますよ」
おう、ひどいな瑠璃!
選ばれるよ!
俺だって神に選ばれるよ!
選ばれし者になるよ!
日本には八百万も神様いるんだから、たまには物好きもいるよ!たぶん。
あれ?日本の人口が一億二千万くらいとして、八百万の神が一人ずつ神隠しするとして・・・。
えーと・・・15分の1くらい?
打率にすると、15打数1安打だから0割6分6厘。低っ!
無理かも!
俺、神に選ばれないかも!
神隠しされないかも?
いや! つーか、別にいいよ!
選ばれなくていいよ!
あと、俺、打率とか勝率とかマジック点灯の計算だと急に暗算得意になるから。
小学三年の時、選手の年間打席数と安打数言われただけで暗算ですぐ打率出して、大人ににめっちゃ驚かれて天才だ神童だともてはやされたから。
主人公、灰谷真太郎はそういう隠れスキル持ってるから!
でも数学は苦手だから!
もうちっとましなスキルのほうがよかったと神に愚痴ることしばしば・・・。
でも、そんな時、神様はいつも「おまえはそれでいい」って言ってくれる・・・。
ありがとう神様。
でもなー。
この神様、なんか阪神の帽子かぶってんだよなぁ。
八百万分の・・・やきうの神様だよ絶対。
手にはスポーツ新聞持ってるしさぁ。
よく「今日もあかんわ」とか言ってるしなぁ。
その3につづかなあかんわ。