第一章 第6話 ハングリーな結果・・・ その4
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鼻血出そうな顔?
まぁ、キモい顔なんだろうな?
わかるよ。
で も そ れ 、 デ フ ォ だ か ら !
俺は、鼻血なんか出てもいないのに鼻を手で抑えて
「んんななぎちゃん、ナギちゃん。
あああのさ。
ちょっと!やっぱ駄目だよ。
駄目。そういうのは。
軽々しく、だれでもいいってわけでは・・・」
最後はごにょごにょ口ごもる。
「あの・・・軽々しく、だれでも良いと思って、言った・・・と思いますか?」
潤んだ目で見つめられる。
うわー。ズキューンとキタ・・・。
「え?え? いや、で、でも・・・」
「・・・あたし、そんな不真面目に・・・見えますか?」
潤んだ目が伏し目がちに下を向く。
ぐはー。ドキューンとキタ・・・。
「・・・・・や、そんなこと・・・」
弾丸で撃ちぬかれて論破された。
いや、ぶっちゃけ、ギャルモードの外見だと意外とフマジメに見えてしまうんですがソレは。
でも、ま、押し切られた。
だって、じっと見つめてくるんだもん。
瞳、うるうるしてるだもん。
つーか、そもそも、そういう話だったっけ?
なんか論点ずれてきてない?
「あたし、真面目だし、本気です・・・ぐす」
顔を伏せるナギちゃん。
目の端に光るものが溢れ、ポタポタと膝に落ちた。
え? 泣いてる? ウソ!?
にわかに、慌てるモード発動状態の俺。
ダメなんですよ!
女の子泣くのとか、ホントダメです。
無理です。
どう対応していいか全くもってアイハブノーアイデアですよ!
ナギちゃんはスッと立ち上がり、俺の目の前に向き直った。
正面から強い視線で俺を見つめるその瞳からポロポロと涙が零れ、頬を伝う。
うわあああ。なんじゃそりゃぁあああ。
ににに、逃げ出したい!
ナギちゃんは余り気味のパーカーの袖で、ぐしぐしと顔全体を拭った。
しかし緩んだ涙腺はすぐさま新たな雫を供給し、瞳は再びうるうると涙を湛える。
零れるギリギリまで・・・。
俺の頬をタラリと伝ったのは、涙ではなく冷や汗だ。
「ちゃ、ちゃうねん・・・。
いや、チ、チガウンダ・・・」
何が違うかは、今、考えるから待って!
「えっと・・・、ナギちゃんが・・・嫌いというわけではない」
何、言ってんだ、俺。
「ではなくて、ナギちゃんに、ミ、ミ、ミロク・・・じゃなくて・・・」
魅力! 魅力って言いたいの!
五十六億七千万年後に救済に来てくれる菩薩様とかどうでもいいの!
つーかなんなら今すぐ助けに来て! 弥勒菩薩!
「ええと、ちがくて・・・。
つまり、ナギちゃんの、ミリョクがナイワケデハナイ!
・・・ある!」
ナギちゃんは、ちょっと何言ってるんだろうこの人って顔で少し首を傾げる。
涙の表面張力が左に寄って、今にもポロッていきそう。
いっちゃらめぇ。
「だから、だからな、なんというか・・・そんなことしなくても・・・ええと、そういうことは、ちゃんと・・・するべき・・・というか。
ちゃんと好き同士で、付き合った人と・・・」
いぇーい! ディスイズしどろもどろー!
そもそも、アイドルデビューをやめるためのスキャンダルの話だったのに、なんかぜんぜん違う感じになってきてるのは何故っ?
つーか俺の言語中枢が全然ちゃんとした言葉を供給してこないんですけどっ!
仕事しろ! 俺の前頭葉、言語野!
眼前のナギちゃんが少し笑った。
そして腰に手を当て、顔を近づけ、強い口調で訊いてきた。
「じゃあ、あたしとちゃんと付き合うってことですか?」
「ハイエッ?」
え? なんでっ? なんでそうなった?
「だって、付き合ってもいないのにホテルに行くのは嫌なんですよね?」
「え? あ、うん。いや、なんか・・・うん」
「それで、私のことが嫌いというわけではなく、さらに女の子として魅力がないわけじゃないんですよね?」
「それは・・・、うん。そう・・・だね」
「つまり、言い換えると、女の子として魅力的な私のことが好きだけれど、こんな、スキャンダルを利用するような形で、ホテルには行きたくないって事になりますよね?」
「え? え? え?
そう・・・なる? かな?」
「すると先ほどの、『そんなことしなくても・・・ちゃんと・・・するべき』って下りは、アイドルデビューのために付き合ってるフリなんかしなくても、ちゃんと付きあってからそういう行為をすべきってことで間違いないんですよね?」
「あれ? あれ? ちょっと、そういうことなわけ?」
「そういうことなわけです」
なんかあってるような気もするけど、違うような気もする・・・っていうか、涙でこっちをオロオロ引きつけてからの強い口調のカウンターパンチってすごくない?
白でも黒って信じそう。
なんか、ナギちゃんは、人差し指を口元に近づけて、「なるほどなるほど・・・」と言いながら、軽く頷いた。
何がなるほどなんですかっ?
「つまり、結論から言うと、ニーニくんは私に『好きだ、つきあってください』と愛の告白をしました。今!」
「えっ? へっ?」
その人差し指で俺を指さす。
「 ニ ー ニ く ん に は か な み 先 輩 と い う 人 が い る の に ! 」
「はああっ?」
えっ?
かなみ?
いきなりかなみ?
かなみ関係なくない?
「かなみ先輩かわいそう・・・プププ」
なんか笑ってますよ? この子。
「ニーニくんの気持ちはわかりました。
ちゃんと嬉しいですよ?」
いや、分かってないだろ!?
「かなみ先輩には~、フ・タ・マ・タ・・・黙っててあげますね?」
「えっ! ちょっと? フタマタッ?」
何いってんの?
そもそもかなみと付き合ってないし、君とも付き合ってないよ?
つーか誰とも付き合ったことないよ?
「まぁ、その代わり、いろいろお願い聞いてくださいね? ニーニくん?
あ、あんまり無理なことは頼まないですからダイジョウブですよ? ウフフ」
俺、そんな、なにも後ろめたいことしてないよね?
ていうか何もしてないよね? ねぇ?
なんで弱み握られたみたいになってんの?
脅迫されてんの?
「ちょ、ちょ、ちょっとまってよ!あのさぁ!」
「 話 し ま す よ ? 豪 華 な 尾 ひ れ 付 け て 」
「 ソ レ は ダ メ で し ょ !? 」
絶対その尾ひれの方がヤバイでしょ!
シレッとした顔で舌をペロっと出すナギちゃん。
あ、泣いてないじゃん!
涙引っ込んでるじゃん!
つーか、火のないところに煙が立って、その放火犯にされたぞ! 俺!
「あと、アイドルの話しとか、だいたいほとんどほぼほぼウソですから、ご心配なく」
「 えぇえええぇえぇぇぇ? 」
もうね。脳みそパンクしそうだよ!
ん? だいたい、ほとんど、ほぼほぼウソ?ってことは・・・
「どこかにホントのことも、あるのか?」
ナギちゃんはニンマリと笑って
「それは、ルゥに・・・訊いてみたらいいんじゃないですか?」と言った。
え? え?
ど、どういうこと?
まさか・・。
冷や汗かきながらその5へつづく




