第一章 第5話 謎の電話に出た結果・・・ その5
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メ リ ー さ ん じゃぁぁぁぁああああああぁぁぁああぁぁあぁぁんんん!
メリーさんです!
メリーさんです!
大切なことなので二回以下略!
白いコートに、裸足!
はだし!
はだしだし!
肩に西洋人形とか! もう!
メリーさん以外の何者でもないじゃん!
メリーさんの詳細知らんけどっ!
来てんじゃん!
メリーさん来てんじゃん!
いや、さっき、今から行くねって言ったけどあばばばばばどうしよう!
いるじゃん!
メリーさん現実にいるじゃん!
たすけて! まじで!
忍 者 さ ぁ ん !
もうね。
頭の中、大混乱ですよ。
「いやー、ようやく議題がまとまったねぇ」、「おつかれ~。どう?部長、この後一杯・・・」、「いいですねぇ、専務、いい娘いる店があるんですよ」、って閉会ムードの脳内会議の議場に突如、スズメバチとGキブリとムカデと貞子が乱入してきたぐらいの大混乱ですよ!
貞子だけで充分な罠!
メリーさんはひとことふたこと肩の人形と言葉をかわすと、そのまま、迷いなく隣の部屋に・・・つまり俺の部屋に・・・入っていった。
顔は、人形が邪魔で見えなかった・・・。
見たら死んでたかもな・・・。
◆ ◇ ◆
そこからの俺は、正直あんまり記憶が定かじゃない。
恐怖のあまり、「あああああっ」と叫びながら、廊下に出て、木片をまた踏んで、「イッテーっ」てなって、「くそ―――っ忍者め!一度ならず二度までもーっ」と理不尽な怒りを持つまもなく、廊下を転びまろびつ、玄関から飛び出した。無意識だが逃走用バッグを忘れなかったのは偉かった、俺。
その時、俺の部屋のドアが開いて、後ろから名前を呼ばれた気がする・・・。
どこをどう走ったか覚えていない。
気が付けば、中森駅正面の道路を挟んで向かい側、急な階段をのぼった先にある神社にいた。
社の前の階段に腰掛けて、ゼエゼエ息を切らせていた。
だいぶ走った。
家から出て、まっすぐ坂を下った記憶はないので、色んな所を走り回った挙句、遠回りしてここに辿り着いたようだ。
手には、逃走用にいろいろ詰め込んだ逃走用バッグと手に持っていた松井バット。
そしてなぜか玄関に飾ってあった花を活けてあるカビンを持ってきていた。
・・・カビン重いんですけど。
なんで逃走先が神社かと言われれば、多分幽霊とか妖怪の類のものは、神社とか寺が苦手なんだろうという短絡的な思考が無意識に働いたためと思われるが、西洋系というか現代都市伝説由来系のメリーさんに、日本の神仏のゴッド&ブッダパワーが効くのかは、今思えば甚だ疑問だ。
でも、だからといってどこ行くよ?
どこもいけねぇわ。
今境内から出たら、ヤツがソコにいるかもしれない。
今、鳥居の外には誰も居ないようにみえる。
しかし! 油断して、一歩外へ出たら、目の前には、あの裸足の白いコート女だよ。
もう、いるんだよ。
見えないだけで!
待ってるんだよ。
俺が出てくるのを!
・・・なんて妄想始まっちゃったから、もう無理だ。動けん。
つーか、マジで何?
そんなのある?
いるの?
オバケとか、ウソでしょ?
この神社の名前は天礎神社という。
大層な名前だが割と小さな神社だ。
小っちゃい公園も横にあるので、子供の頃からよく遊びに来ていた。
かくれんぼしたり、階段でグリコしたり。
ここに来ると町を遠くまで見渡せるので好きだった。
当時もさして広くはないと思っていたが、体が大きくなった今となっては、なおのこと狭いね。
神社の境内には誰もおらず、とても静かだ。
鳥居外の階段を降りれば駅の真ん前で、それなりに騒々しいはずなのだが、この一角は木々が茂っているせいか、それとも駅前とは高低差があるからか、喧騒はとても遠くに感じられるのだ。
そのせいもあって、ちょっと神聖な力というか結界的な何かで守られているような雰囲気がある。
ここならオバケも来られまい・・・的な。
そんな神社のパワーのおかげか、それとも単に時間が経過してきたからか、なにはともあれ俺は多少落ち着きを取り戻してきた。
心臓の動悸はようやく治まったね。
ようやくクールゲット。
いや、恐怖は拭えてないけどね。
「はぁああぁぁぁあぁ・・・」と大きく息をつく。そして考える。
なんなんだろ。アレ。
見た。
確かに見たんだ。
見間違えじゃない。
イメージとか妄想の産物なんかじゃなかった。
妄想であんなリアルな存在感出せるなら俺はとっくに童貞卒業してる!
そのイマジネイションでグラビアアイドル召喚しまくり、○○まくりだわ!
童貞と非童貞のあいだに素人童貞があるようだが、素人童貞と童貞のあいだに割って入るぞ、妄想童貞という新しい概念がな!
新機軸誕生の瞬間だ!
・・・とか言ってる場合じゃないだろ、このメリーさんに追われてるこの現状!
いや、マジであれどうなの?
だっていきなり八階のバルコニーに来たぞ?
オバケもヤバイが、もし現実の人間なら得体が知れなくてやっぱりヤバイ。裸足だし。
裸足でマンションの壁を這いずり登る例の女の姿を想像した。
しなきゃよかった。
で、さらに、俺の部屋にまっすぐ入ってきたよな?
一番間口の広いリビングじゃなく。
つまりあそこがオレの部屋だと知ってるわけだ。
逃げ出した時も、後ろから名前呼ばれたよな。
つまり、名前も、部屋も・・・すでに今の居場所も?
うぅ。思い出したらまたゾクゾク震えが来た。
会いたくて震える奴もいれば、会いたくなくて震える奴もいる。
コエー、マジコエーよ!
なんなんだよアレ~。
なんでこの季節にコートなんだよ。
なんで肩に人形おいてんだよ。
なんで喋るんだよ人形。
・・・もしかして人形のほうがメリーさん本体?
つーか! インターバルがないよ!
「今、あなたの街にいるの」と「今、家の前にいるの」を飛ばしていきなりズシンとか反則だろ!
ちゃんと電話してこいよ!
メリーさん自由か!
だいたい最初の無言電話からして・・・あ、電話!
電話ない!
俺はポケットを探る。
ない。
バッグの中をガサゴソ漁る。
うん。ないね。
あぁ、これ、スマホ、部屋に置きっぱパターンだ。
どうしよう。
誰にも連絡取れないじゃん。
助け呼べないじゃん。
ま、メリーさん相手に誰を呼べばいいのかわからんけどな。
マーセルとかどうかな? 『カトン、ゴウカキュウノ、ジュツ』効かないかな?
効かないだろな。
そもそもあれは火遁・豪火球の術に声が似てるだけの技だからな。
でも、もしかしたらメリーさんドイツ人かも!
そしてマーセルと仲良くなれるかも!
ハーイ、グーテンモルゲン!(ドイツ人てハーイっていうのか?)
マーセル、今のとこヲタ友達しかいないから、ちょうどいいじゃん。
メリーさんももしかしたらファッション忍者好きかもしれないし!
てか、外国人みんな忍者好きじゃん?
なれよ友達にさぁ。ユー、なっちゃいなよ!
だから!
もう!
マ ー セ ル ん と こ に 行 け よぉオオォォォォォおおお!
頼むよぉぉおおオオォォォぉおお!
あー、家、どうなってっかなー。
まだいるかな?
いないかな?
まさか俺の部屋でくつろいでたり? ・・・いや、違うな。
直 立 不 動 で 俺の帰宅を待ってる気がする・・・。
もしくはやっぱり神社から出るのを、鳥居の外で・・・待ち構えて・・・。
あああああ!
もうまた!
考えなきゃよかったぁ嗚呼ッッッァァァ嗚呼!
◆ ◇ ◆
謎の電話に出た結果・・・急にホラーな展開になってしまった。
ポヨン。助けて。
ファンシーな世界観に、戻してくれぇぇええ!
謝るからぁぁぁぁああああああ!




