第一章 第12話 初めて魔法を使ってみた結果・・・ その6
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ポヨンの魔法。
一瞬楽しみにした分、その使えなさに愕然とする。
いや、でも他に有効なものもあるかもしれない。
「チッ・・・・・・他だ」
「シンタロ、なんか冷たいポヨ!」
「いや、今殴ると、痛そうなんでね!」
確かにその魔法は効力を発揮している。
「むぅ~~~。
じゃあ、今度のはこうポヨ!」
ピカッと光る。
柔らかいポヨンの体が・・・なんかもっと柔らかく・・・。
やわいプリンみたいに・・・プルプルに・・・。
「軟体の魔法ポヨ。
トロトロになるポヨ~」
「役たたねぇ! 次!」
「えーっ! 役に立つポヨ!
敵に捕まった時とか、にょろにょろになって隙間から逃げられたりするポヨ!」
「 だ か ら !
な ん で て め ぇ の 魔 法 は
全 部 、 自 分 だ け が
助 か る た め の も の な ん だ よ っ !
俺はっ?
俺の補助は?
回復は?
一 緒 に 戦 う 意 志 は ? 」
ガンガン蹴るも、ウナギのようにニュルンと滑ってダメージいってる感がない!
涼しい顔で、「やめるポヨ~~」とかいってるポヨン。
あ あ 、 も う 、 悔 し い !
「他っ!」
「次は分裂の魔法ポヨ!」
トロトロのポヨンが、細胞分裂するように二つにわかれた。
「どうポヨ?」
「役立たずが二つに割れたら、二つの役立たずだ!」
「シンタロ、違うポヨ!」
え?何が違う? なにかすごい秘密が?
「3つにも4つにも分裂できるポヨ~。
でもあんまり小さく別れたヤツは、思考力とか意識が希薄になっちゃうポヨ」
「寄生獣かよ!
でも、ミギーと違うのは、お前は弱いってことだ!
くっそ―――っ! てめ―――っ! 腹立つな―――っ!
他―――ッ!」
「以上がポヨンの魔法ポヨ」
「 終 わ り か い っ ! 」
馬鹿な!
よくコレで騎士道者とやらの資格試験パスできたな。
いや、難易度知らんけど?
手がわなわなと震える。
極みだろ?
無能の極みだろ?
それとも何?
ツッコミ気質の俺が悪いの?
純真無垢な美少女なら、「キャー、ポヨンちゃん、すごぉい!」ってなるの?
純真無垢な美少女なら、「いっくぞーッ!」とか叫びながら突撃し、恐れも知らずに敵の攻撃をかわしつつ、相手の急所に「えーい! キューティーパーンチ!」とか、「トドメよ! ルナーキーック!」とか決められるの?
確かに、パンチ力そこそこだから、ハトの頭に上手くヒットさせればそれなりにダメージ行くとは思うよ?
上手くジャンピングキック決めたら、コンクリ投石でやったくらいにはハトの頭ももげるかもしれないよ?
なに? 俺が悪いの?
一歩間違えたらカウンターパンチで絶命するのにそんな無邪気になれないだろぉ?
もう、ほんと、どうしたらいいわけ?
こいつら・・・というか、この状況と縁を切って、合法かつ健康的に爆発もしないで元の生活に戻れないものだろうか?
できればこいつの記憶も消えてくれたら助かる。
ああ、もしも、昨夜の、バイト募集の広告をクリックする前にセーブポイントがあったらなぁ・・・。
連打してやるのにぃいいいい!
その7へつづくのにぃいいい!