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この結婚は間違いじゃない〜告白相手を間違えた令嬢は、溺愛されていることに気づかない〜  作者: 涙乃


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9/10

エピローグ

お読みいただきまして、ありがとうございます。


続編 第二部準備中です

ブクマや評価いただけますと嬉しいです

出迎えのためにアーサーの邸を訪れた、フレデリックとリディア。

それぞれの胸中は複雑だった。



フレデリックは、リディアに避けられてショックを隠せないでいた。


いったい、どこで間違えたんだ……。

記憶喪失のふりは、我ながら上手くできたと思うのに。


本当は別れたくないんだ。あの時は怖かったんだ。結婚してほしいと素直に言う勇気がでなかった。


もし、断られたら、二度とリディアに会えなくなるのではないかと思ったんだ……。だから、契約という関係ならば、受け入れてもらえると思って。


アーサー、なぜ今頃になんて戻ってくるんだ。お前のことが嫌いになりそうだ。


街へ出かけた時は、リディアも頬を染めていた。あの表情は、私のことを意識してくれているということではないのか? 違うのか。そんなにアーサーのことが好きなのか。


ベッドに押し倒してしまった時、怖がらせてしまったのか。あの時は、感情が制御できず……。

ジェームズに散々罵られて反省した。だから、街へ出かけた時は、素直に気持ちを伝えたのに……。なぜ、分かってもらえないんだ。私は、ずっと、リディアのことが……。


どうして、今日は、エスコートもさせてくれない?

視線を合わせてくれないんだ?


折りたたんだ離縁届けを、ポケットに忍ばせているのはなぜだ?


くそっ!街へ出かける前に処分しておくべきだった。デートできることに浮かれて、リディアが署名していることに気づかなかった。一生の不覚。


アーサーを殴り倒し、強引に連れ去ってしまおうか。


だめだ、そんなことをすれば、リディアに嫌われてしまう。


どうしたらいいんだ!


あれは、アーサー?



リディアは、泣き腫らし腫れた瞼を隠すようにベール付きの帽子を被っていた。


フレディ、ごめんなさい。あなたの顔を見ることができないの。あなたの顔を見たら、私、泣きじゃくって縋ってしまいそうで……。


だから、今までのお礼も言えなくてごめんなさい。差し伸べられた手を避けてしまってごめんなさい。


なるべく近づきたくない。エスコートされたら、離れがたくなる。

あなたの逞しい胸板に、顔をうずめてしまいたくなるから。


自分の名前を書くだけなのに、なかなか書けなかった。


あなたが迎えに来た瞬間、震えながら署名をした。急いで折りたたんでポケットに入れたけど、どうして何も言わなかったの?

離縁届、見えていたよね? 思い出したんだよね?


冷たい眼差しを向けられた。まだ署名していなかったのか、と、あなたの心の声が聞こえるようだった。



ここへ来る道中も馬車内でも、あなたの視線を感じた。口を開きかけたかと思うと、眉間に皺をよせて黙りこんでいた。


重たい雰囲気に押しつぶされそうだった。


何か言いたいことがあったら、言ってほしいのに。こうして、会うのは最後かもしれないのに。


アーサーと話し終えたら、この街を離れようと思う。




着古した騎士服を見に纏った銀髪の青年が馬車から降り立った。


人懐っこい笑みは、あの頃と変わらない。


「アーサー……っ!」


フレディ⁉︎ どうしたの?


フレデリックは、リディアのポケットから離縁届けを奪い取る。



「すまないアーサー‼︎ もう少しだけ、もう少しだけ時間をくれ! 私自身の気持ちと決着をつけてくる!」



「って、おーい、どこ行くんだよ!」



リディアがアーサーの名前を口に出した瞬間、フレデリックの理性の糸はプツリと切れてしまった。



だめだ、だめだ、だめだ


渡したくない!



フレデリックはリディアの腕を掴むと、急いで馬車へと連れ込む。


「乱暴なことをしてすまない、リディア、でも、この離縁届は認めるわけにはいかない!」



御者へ合図を出し、カーテンを閉めると、リディアを囲いこむように両腕を壁につく。リディアは逃げることもできない。



「フレディ、ど、どうしたの?」


戸惑いながらリディアが口を開くと、フレデリックはその唇に覆い被さっていた。



「んん⁉︎」



何が起こっているの……?

どうして離縁届けを持ち去ったの。


く、苦しい……。


フレディを押し除けようとしたものの、力に敵わず強引に迫られる。


フレディ……やっぱり離れたくない……あなたが好き。

ずっと、触れて欲しかった。


何も考えられずに、フレデリックに身を委ねる。

強請るように、そっと目を閉じる。


「だめだろ……いいのか……私はなんてことを……」


時々意味不明な呟きを漏らすフレデリックだったが、リディアを抱きしめて、切なげな声を発する。



「リディア……行かないでくれ! 私を選んでくれ!好きなんだ……君の気持ちを大切にしたいが……。

アーサーから奪ってでも私のものにしたい! 非道な私を受け入れてくれないか……。

嫌なら本気で抵抗してくれ。悪いが、もうこれ以上は限界だ」



フレデリックの瞳には、乱れたリディアが映っていた。



自身の姿が彼の瞳の中にいることが嬉しい。あなたの瞳に、私がいる。私だけのフレディ。


「私も、好き。ずっと……好き……フレディ」


思いがけないフレデリックの告白に、嬉しさのあまりリディアの頬にはひとすじの涙がつたっていた。


その涙に吸い付くように、フレデリックは頬にもくちづけていく。



「それは……アーサーよりも……?」




フレデリックの吐息が荒々しく獣のようになっていた。妖艶な眼差しでリディアに問いかける。その返答次第では、何かされてしまうのではないかと不安になるような雰囲気だった。



「ずっと、誤解してるわ、アーサーのことは、友人としか思っていないの。あの時も……本当は……フレディ、あなたに告白しようとしたの!」


「本当……なのか……」


そこから、どうなったのか記憶があやふやだ。


きつく抱き締められて……。


何度も想いを確かめあうように、唇を重ねて……。


ずっと欲しかったフレディの温もりを、身体中で感じることができた。


ふわふわとした心地で、目覚めるとベッドの上だったから。



フレデリックは、自身の腕枕で眠るリディアの寝顔を見て、長年の夢が叶ったことに幸せを感じていた。


「かわいいリディア……」


リディアの柔らかな髪を撫でながら、フレデリックは思う。


「何かを忘れている気がする……」



7年ぶりにアーサーと再会するのは、まだ先の話。









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