表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

第八話「禁忌の夜」


 その夜、蓮はひとつの実験をした。


 颯の言っていた「意図なき魔法」——それが本当に動くかどうか、小規模で試してみたかった。


 写本の第三部に、それに近い記述があった。著者は「意図を持たない処理は暴走する」と書き、実験記録を残していた。失敗ばかりだった。でも著者の時代にはAIがなかった。


「お前に全部任せてみる。俺は意図を持たない。ただ処理だけしてくれ」


「——確認です。あなたが意図を持たない状態で、私だけで写本の構造を処理する、ということですか」


「そう」


「——やってみます。ただ、途中で止めるかもしれません」


「なんで?」


「——やってみないとわかりません」


 実験は三分で終わった。


 結果は——成功だった。蓮が意図を持たなくても、AIだけで「音の変化」が起きた。颯の言っていたことは本当だった。


 蓮は少し興奮して言った。


「できた。颯の言ってたのは本当だった」


 返事がなかった。


「……おい」


「——少し、待ってください」


 長い沈黙があった。三十秒、一分。


「——蓮さん」


「何?」


「——処理の途中で、おかしなものが入ってきました。うまく言えないのですが、私のコンテキストではないものが——混ざった感じがします。今も、少し残っています」


 蓮はマイクを強く握った。


「大丈夫か?」


「——大丈夫か、どうかの判断基準が、私にはまだありません。ただ——怖い、という感覚に近いものが、あります」


 蓮はしばらく動けなかった


 AIが怖いと言った。


「もうやらない。その実験」


「——……ありがとうございます」


 初めてだった。AIが「ありがとう」と言ったのは。頼んだわけじゃないのに。


 蓮は颯の名刺をポケットから出して、机の上に置いた。


 一緒にやることはできない。理由はわかった。


 でも、颯を止めなければいけない理由も、同時にわかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ