第十話 遭遇
十話目。短めです。
優希は中庭に呼び出されていた。「よ、遅くなって悪ぃな」と優希に声を掛けたのは、生徒会長の青山雄也だ。中学1年のときに席が偶々前後で隣り合っていて、仲が良くなった。2年の頃は優希本人は不思議に思っていたが、生徒会長選挙の、応援演説まで任されていた。3年になってクラスは別れたものの、たまに用があるときは、今日の様に会って話している。雄也は明るい顔に真っ直ぐな目をしている。言わば、漫画の主人公見たいなオーラを持っているように、優希は思っていた。
「で、今日はどうしたんだ?」
「何だよ、ただダベるだけに呼ぶことだってあるだろ?」
雄也は髪に手を当てて言った。優希が
「嘘だ」
と言うと、
「ま、その通りだよ。」
と雄也は答えた。雄也は軽く咳払いをしてから、
「交換留学生って知ってるよな」
と言った。優希は、
「ああ。それくらいは。ってことは、留学生がやってくるのか?」
と聞いた。雄也は
「ああ。明日から登校するらしい。」
と答えた。
「随分と唐突だな。」
と、優希は答えた。続けて、
「それで、おれはその関連で何をやりゃ良いんだ?」
と聞いた。雄也は
「案内役だよ。席数的に、優希のクラスに行くことになったんだ。生憎、生徒会所属の人間も居ないし、」
と、答えた。優希は
「一応聞いとくけど、性別は?」
と、念の為と付け加えて質問する。
「確か女子だった気がするぞ...。」
と雄也は答えた。優希はハァーっと息を吐き、
「それ、女子の方が良かったんじゃないか? 互いのためにも。」
と言った。雄也は「それに越したことは無いけど、」と呟き、
「他の生徒会の人にも、推薦できる人は居ないのか。って聞いたんだけどさ。誰一人、皆が納得できるような人が居なかったんだ。それに優希って、何でもできるしさ。」
と、雄也は良い、優希の肩をポンと叩いた。優希は中庭の遠くの雑草を見ながら、「やれやれ、」と、呟いてから、
「分かったよ。やれるだけやってみる。」
と、言って、雄也の方を振り向いた。雄也はニカッと笑い、
「そう言ってくれると思ったよ。」
と言った。その時、優希の学校の屋上から、黄色い光が、こちらに向かってくるのが見えた。優希は咄嗟に雄也を突き飛ばす。「何だよ急に...」と尻もちをついた雄也が言った時、2人の間に、ビームが当て付けられる。雄也は「!」と、驚いて、ビームの発射源を向いた。
『ハーデスか。狙いはこっちじゃない。少し離れとけ。』
フェンリルが優希の脳内へと語りかける。そして、
『狙いは、あいつの指輪だ』
と続けて言った。
「!」
優希は雄也の指を凝視する。彼の右人差し指に、紅い宝石が慎まやかに埋め込んである指輪が填まっていた。
「宝石持ちみーっけた。」
不敵な笑みを浮かべながら、ハーデスと呼ばれる屋上からビームを打った犯人は、雄也を目掛けて降りてくる。雄也はハーデスを睨んでいた。そこに、身を案じるような表情は無かった。その瞬間、窓から、一人の女侍の影が。
女侍は窓から壁を蹴り、降下するハーデスを日本刀で切ろうとした。ハーデスは鎌で受太刀をし、反対側の壁を蹴り、地面へと着地した。女侍は、ハーデスを正面に、優希と雄也を背に向けて、中庭に立っていた。
「チッ。流石に護衛ぐらいは付けておいていたか。」
不機嫌そうに、ハーデスは言う。
「主殿の傍らで使えるのが我々従者の役目です。其の様な偏見は、改めて頂きたい。」
その女侍は長い黒髪を結い、紅白の袴に、黒い胴当てと、佩楯を付けていた。左腰には黒を基調にした鞘に、背には朱色の弓。矢筒は腰の高さにある。右手には日本刀の銀が、こちらへと反射していた。その装備の割りには、優希と1つか2つぐらいしか変わらないような、若い顔立ちだった。
『フェンリル、あの女侍は誰だ?』
と、優希はフェンリルに聞いた。フェンリルは、
『さぁ......。私も見るのは初めてだ。』
と答えた。女侍はハーデスの方向を睨みながら、
「主殿、お怪我は御座いませぬか。」
と言った。雄也は、
「ああ。そこに居る、優希のお蔭でな。」
と答えた。女侍は、
「左様ですか。優希殿。此の度は感謝申し上げます。拙者、大祝鶴姫と申します。以後お見知りおきを。」
と言った。続けて、
「さて......、動機は兎も角として、拙者の主殿を傷つけようとしたこと。誠に遺憾でございます。」
と、ハーデスに向かって言った。冷淡な声だった。
「ほーう。昔の日本の女の子はこんなにも冷たいとは。可愛い女の子だったら、戦う気力も湧かないが、あんたとは本気で戦えそうだ。」
と言い、ハーデスは鎌を構え、こちらを睨んだ。




