風船
二人の持ち場は
お化け屋敷コーナーの前だった
おどろおどろしいその館の脇に
簡易パラソルを立てる
横に試供品を並べ、風船を用意する
色とりどりの風船が
お化け屋敷の薄暗い洋館にはミスマッチだが
逆に遠目から見てもイベントをしていることがわかりやすい
10時半
まだ人はまばらだ
遊園地にきて真っ先にお化け屋敷に来る人は多くないように思う
あおい
「あんまり人こないうちに
風船もう少し多めに用意しておく?」
一ノ瀬
「そうですね、できるだけたくさんの子供に配りたいですし」
(一応、ここでは先輩後輩のスタンスなんだね
仕事だもんね…)
そんなことを思っているあおいに
爽やかイケメンは満面の笑みを向ける
あおいはあまり見ないようにして
あおい
「じゃあ私、風船もう少しもらってくるね」
一ノ瀬
「いや、それ僕が行きます、先輩待ってて」
多分ここで私がいくとあおいが言っても
僕がいくと一ノ瀬は言うだろう
そう思ったあおいはお任せすることにした
両手いっぱいの風船を持った一ノ瀬が戻ってきた
その頃には少しずつ人の通りが増えてきていた
一ノ瀬は早速子供達に配り始めた
一ノ瀬
「これ、どうぞ笑
何色が好き?好きなのとっていいよ」
子供はピンクを指差す
「ピンク?これ可愛いよね
じゃあ…
はい、この紐しっかり握ってね
そうそう、そんな感じ
お手手離すと飛んで行っちゃうから気をつけてね」
慣れてるーー
あおいは子供への対応があまりにも自然な一ノ瀬に
思わず感心してしまっていた
あおい
「一ノ瀬くん、慣れてるね
あの子すごい喜んでた」
一ノ瀬
「そうかな?姪っ子とよく遊ぶからかな笑
義理の兄がいてさ
あ、父親の連れ子だったんだけど
その兄の子が可愛くて笑」
あおい
「へーそうだったんだ」
一ノ瀬
「うん、もともと子供好きだし
なんかさ子供って見てて飽きないっていうか…」
「あ、ほら先輩、試供品渡さなきゃ」
あおい
「あ、そうだ…」
うっかり忘れるとこだった
あおい
「でも、ほんと一ノ瀬くんはさ
誰にでも親切で優しくてヒーローみたいな人だよね」
一ノ瀬
「そうかな…?
そんなかっこいいものでもないけど
百歩譲ってそれに近いように人からは見えてても
僕の中では誰にでもと言うわけじゃない…」
そうなんだ…
なんかごめん…
私まだ一ノ瀬くんのことちゃんと見えてないのかもしれないね
そんなことを思いながら
あおいは試供品を配った




