表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユウキ・ノ・カケラ  作者: ハキ
第1部
12/67

第11話『守れた理由』

戦場は、まだ熱を孕んでいた。


 


タケルとリカの連携が冴え、

紅眼のコンビは焦り始めていた。


 


伸びる腕。

鉄の皮膚。


 


しかし――

信頼と予測に裏打ちされた連携の前に、

その攻撃は徐々に鈍りはじめていた。


 


それでも戦いは、まだ終わらなかった。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


ユウトは、少年のバリアの内側で

息を潜めるように立っていた。


 


何もできない。

何も届かない。


 


ただ、戦いを見ているだけの自分が、悔しくてたまらなかった。


 


その時だった。


 


少年の目が、大きく見開かれた。


 


「……っ!」


 


体が震えた瞬間、

バリアが――“膨張”した。


 


まるで心が飛び出すように、

少年の意志が、空間を押し広げた。


 


バシュンッ!


 


音を立てて広がった透明なドームが、

敵2人を包み込むように、覆い尽くしていた。


 


「……え?」


 


ユウトもリカも、タケルも動きを止めた。


 


そして、少年自身が――一番驚いていた。


 


「……あ……間違えた……!」


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


けれど、

誰よりも先に動いたのは、タケルだった。


 


「っしゃあ!ナイス誤爆ッ!」


 


ニヤッと笑い、

すぐそばのゴミ袋と段ボールを掴み上げた。


 


手のひらが赤熱し、ジュゥッと蒸気が上がる。


 


バリアの外側に手を当てると――


 


バンッ!


 


バリア内部で、ゴミが燃え始めた。


 


リカの目が細まる。


 


「あー....酸素無くすのね....

……あと10秒で意識が落ちる」


 


敵2人は、酸素の薄れた空間で息を詰まらせ、

数秒後、どさりと膝をついた。


 


「――気絶、確認」


 


リカがそう言い切ったとき、

タケルはバリアの外から親指を立てて少年に言った。


 


「やっべ、助かったわ!

マジ、ラッキー!」


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


少年は、呆然としていた。


 


手が、震えている。


 


「……オレ、今……役に立てた……?」


 


誰にも問うことなく、

自分に言い聞かせるような声だった。


 


ユウトは、少年の顔を見た。


 


涙が、浮かんでいた。


 


嬉しいのか、安心したのか、

それとも、怖かったのか。


 


けれど、その涙は――


 


初めて「自分の力で、誰かを守れた」ことの証だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ