第11話『守れた理由』
戦場は、まだ熱を孕んでいた。
タケルとリカの連携が冴え、
紅眼のコンビは焦り始めていた。
伸びる腕。
鉄の皮膚。
しかし――
信頼と予測に裏打ちされた連携の前に、
その攻撃は徐々に鈍りはじめていた。
それでも戦いは、まだ終わらなかった。
◆ ◆ ◆
ユウトは、少年のバリアの内側で
息を潜めるように立っていた。
何もできない。
何も届かない。
ただ、戦いを見ているだけの自分が、悔しくてたまらなかった。
その時だった。
少年の目が、大きく見開かれた。
「……っ!」
体が震えた瞬間、
バリアが――“膨張”した。
まるで心が飛び出すように、
少年の意志が、空間を押し広げた。
バシュンッ!
音を立てて広がった透明なドームが、
敵2人を包み込むように、覆い尽くしていた。
「……え?」
ユウトもリカも、タケルも動きを止めた。
そして、少年自身が――一番驚いていた。
「……あ……間違えた……!」
◆ ◆ ◆
けれど、
誰よりも先に動いたのは、タケルだった。
「っしゃあ!ナイス誤爆ッ!」
ニヤッと笑い、
すぐそばのゴミ袋と段ボールを掴み上げた。
手のひらが赤熱し、ジュゥッと蒸気が上がる。
バリアの外側に手を当てると――
バンッ!
バリア内部で、ゴミが燃え始めた。
リカの目が細まる。
「あー....酸素無くすのね....
……あと10秒で意識が落ちる」
敵2人は、酸素の薄れた空間で息を詰まらせ、
数秒後、どさりと膝をついた。
「――気絶、確認」
リカがそう言い切ったとき、
タケルはバリアの外から親指を立てて少年に言った。
「やっべ、助かったわ!
マジ、ラッキー!」
◆ ◆ ◆
少年は、呆然としていた。
手が、震えている。
「……オレ、今……役に立てた……?」
誰にも問うことなく、
自分に言い聞かせるような声だった。
ユウトは、少年の顔を見た。
涙が、浮かんでいた。
嬉しいのか、安心したのか、
それとも、怖かったのか。
けれど、その涙は――
初めて「自分の力で、誰かを守れた」ことの証だった。