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京、友達が出来る04

お越しいただきありがとうございます。


 京は突如として己の身に起こった異変に困惑していた。

『……なに、何が起こっているの。嫌よ何だかヌルヌルして気持ち悪いわ。フーちゃん何がどうなっているのよ』


 京の足元から現れた、赤黒いゲル状の粘弾性物質が京を覆い尽くさんとしていた。

 フーちゃんこと不動明王は、燃え盛る俱利伽羅剣で何度も何度も京から追い払おうと赤黒いゲル状の物質を切り払うが、赤黒いそれは切られれば炎により焼かれ一部は消滅するが、すぐに再生してしまう。

 だがフーちゃんは諦めず、切り続ける。放っておけば侵食が進み京の意識が奪われる事を知っているからこそ、フーちゃんは切り払い続ける。


『……なぜ貴様が今頃に発芽するのだ、我がいる限り京を侵食しきれない事など知っていよう。直ぐに巣に戻るがいい』


 赤黒いそれはフーちゃんに対して、ゲルを高質化し弾丸の様に何百発も打ち込むが、フーちゃんこと不動明王の火炎光背(こうはい)により焼き払われる。

 ゲルを腕の様に変化させフーちゃんを捕まえようと伸ばすが、弾丸と同じ様にフーちゃんに届く前に焼き払われしまう。

『無駄だ。貴様の攻撃など我には届かぬ。諦めてトットと巣に戻れ』

 休む事無く切り払い続けるフーちゃんを赤黒いそれが嘲笑う。

『ぎゃははぁはははっはーーー』

『俺様の攻撃がお前に届かない様に、お前の斬撃も俺には効いていないんだよ。俺を払いたければ京、こいつ事切り払えばいい、それがお前に出来ればの話だがな。出来ないなら、こいつが侵食されるのを指を咥えて見ていればいいんだよ』


『訳が分からない事を言う暇があるなら、巣に帰れ』フーちゃんはそう言いながらも斬撃を止める事はない

『巣に帰れ、巣に帰れと五月蠅いんだよ、だいたい俺を起こしたのはお前達だろうが。こいつとお前がガキ四人を始末するしないと、楽しそうな話をするから起きちまったんだろうが。この落とし前はどうつける気だよ』

 斬撃を続けるフーちゃんは、相手をするのも面倒くさそうに言う。

『………巣に帰れ』

 

 フーちゃんの態度に激昂した赤黒いそれは『ぐぉおおーーー』と雄たけびあげ侵食を加速させ京を完全に覆いつくした。京への侵食が終わると、京の宝石の様に煌めく赤い瞳が殺意に満ちて、見る者を恐怖させる笑みを浮かべる。

『はっははは。京こいつは笑える程にあまい、何が自分より他者だ。この世に自分より大切なものなどなかろう、こいつに代わって俺がガキ四人を始末してやるよ』

 完全に侵食された京に対して斬撃を止めたフーちゃんは、軽く溜息を吐く。

『………フゥー。これは余りしたくは無かったが、致し方あるまい。羂索(けんさく)

 そう言いとフーちゃんこと不動明王が左手に持っている縄が京に向かって伸び、赤黒く変色した京を縛り上げ動きを規制し、激しい苦痛を与える。


『グぅぅ………ギャァーーーーー』始めは耐えていた侵食された京も、想像を絶する苦痛に悶え叫ぶ。羂索の縄の業火に身が焼かれては再生、焼かれては再生を繰り返し襲ってくる苦痛に叫びながら激しく悶えるが、悶えれば悶えるほど羂索はよりきつく縛り上げられ、叫び声が大きくなっていく。


『苦しかろう。解放してほしけば早々に巣に帰れ』

『ぐぅごぉがぁがぁ………だ…だ…れがぁ、解放してくれなど言うぅ…ぅ………うぎゃゃーーーぁ………だぁ…だ…が……こ……こ…いつもぉ……お…同じように……く…苦しいぃ……はず………だぁ………あ…ああぎゃゃーーー』

『ふぅ。馬鹿が、お前が京を眠らせてくれたからな。最悪でも悪夢でうなされている程度だろうな。理解したなら諦めて巣に帰れ』

 侵食された京は叫びながらも首を横に振り抵抗する。

『大したものだ。お前の精神力は認めるしかないな……だがこれで終わりにしようか。明王達よこの場に降臨せよ』

 フーちゃんこと不動明王に呼び出された、幼体化した降三世明王(ごうざんぜみょうおう)軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)大威徳明王(だいいとくみょうおう)金剛夜叉(こんごうやしゃ)明王、愛染明王(あいぜんみょうおう)孔雀明王(くじゃくみょうおう)烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)が現れ、侵食された京は八大明王に囲まれることになったが、まだ諦めきれないのか苦痛により叫びながらも抵抗する。


『ぐぅ…くぅ…く…そが。………そぉ……そんな事をすれば………こぉ…こ…こいつも………ただでは済まされないぞぉ……ぉ…お………おぎゃーーー』

『我一人の力で一方向からの攻撃で貴様を消滅させれば確かに京は今後何十年、何百年も昏睡状態に陥るかもしれないが、我ら八大明王の力を合わせれば京は一年ほどで昏睡状態から覚めるであろう、特に問題は無い。では参る』

 フーちゃんこと不動明王の号令で一斉に八大明王が真言を唱え始めると、侵食された京を中心にして炎の八芒星が現れると、中心にいる侵食された京に明王の凄まじい業火が襲い掛かる。

 八大明王の業火には耐え切れず、赤黒いゲルが焼失し徐々に再生が追い付かなくなると侵食された京の丹田辺りが鈍く光り始めると、それが合図になり八大明王が同時に剣を上段に構える。

『己の行いをあの世で悔い改めよ。いざ成敗』八大明王が息を合わせ、侵食された京に一斉に切り掛か………けれなかった。


 八大明王が動こうとした瞬間、一帯が七色に光る白銀の粒子覆われ彩凰が『『『ピィィーーーーーー』』』と鳴きながら現れ、彩凰の七色に光る粒子により八大明王の業火が鎮火された。


 彩凰はそのまま、苦痛で苦しみ悶える赤黒く変色した京の頭に止まると、まるでアトラクションを楽しむように嬉しそうに『ピィー、ピィー』と囀りながら、悶える度に飛び散る赤黒いゲルのいくつかを、素早く首を動かして見事に咀嚼すると、目を輝かせながら嬉しそうに鳴き、此処にはいない誰かと会話している様に独り言を言い始めた。

『『『ピィーーーーーーぃ。美味しいぃーー。これ全部食べていいの』』』

『…………』

『ピィー。ありがとう。いただきまーーす』


 彩凰が赤黒く変色した京の体にかぶりつき、上手に赤黒いゲルだけを食べ進めるを見ていたフーちゃんこと不動明王と、食べられ続ける赤黒い京が同時に口を開いた。

『彩凰殿待ってほしい。そのままでは京まで咀嚼しかねないではないか』

『わかったぁーー、わかったよ。俺が悪かったから、頼むからこの拘束を解いてくれ』

 一度に二人から言われ咀嚼を止めた彩凰だが、首を左右に振りながら『ピィー?ピィー?』と囀るが、小型化している彩凰の頭では処理できず『ピィー-』と嬉しそう鳴くと再び咀嚼を始めた。


 既に二割ほど咀嚼された赤黒く変色した京は、涙目になりながらも必死にフーちゃんこと不動明王に懇願する。

『『『頼む、頼むからそこのお前………いや不動明王、不動明王様。頼むからこの訳の分からない鳥を止めてくれぇーーーーーー』』』


 彩凰が現れ、今までのフーちゃんこと不動明王と赤黒いゲル状の意識体とのシリアスな戦いを台無しされたフーちゃんは複雑な思いで彩凰を後ろから抱きしめ、赤黒い京から引き離す。

 ※なぜ不動明王の俱利伽羅剣を使っても浄化しきれなかった赤黒いゲル状の意識体が、彩凰が食らい続け減らすことが出来るのかは、単純に力の差でしかない。彩凰が持つマー粒子の貯蔵量はアーヤを除けばシャーリィなどの三鬼を超える。現段階では彩凰は最強の生命体なのだ………知能はそれ程高くないが………。


 無理やり引きはがされた彩凰は怒りながら『ピィーピィー』と鳴き、離せと言わんばかりに(くちばし)でフーちゃんの手を突くが………肉体を持たないフーちゃんには無駄な攻撃でしかないが、心優しいフーちゃんはわざとらしく『いたい、いたい』と言って見せる。


『………彩凰殿……そろそろ手を突くのを止めて頂きたいのですが』

 それを聞いた彩凰はより意固地になり‘‘ガジガジ‘‘とフーちゃんの手を嚙みはじめる。彩凰が話しを聞く気がないと分かると困ったように『はっははは』と笑うが、視線を赤黒く変色した京へ移したときにはその笑みは消え睨みつける。

『………で貴様は何時巣に帰るのだ、今すぐこの場から立ち去らなければ、この手を放すが…どうするの』


 すでに拘束を解かれた赤黒く変色した京は、通説であれば、ここで『ヒャハァーーー』と騙し討ちを行い自滅する道を選ぶところだが、一度己の負けを認めた以上、潔く京から離れた赤黒いゲル状の意識体は直径約60㎝程の球体の姿で現れ、頂点部を器用に前方に垂らして謝っている様子を見せる。

『いま俺が受け入れられないの理解した。ここは俺の負けだ。おとなしく巣にかえるよ』

 そう言い踵を返し………足が存在しない赤黒いそれは向きを返し姿を消………消せなっかた。


 フーちゃんこと不動明王に抱えられていた彩凰は拘束から逃れるためマーを開放し、フーちゃんを後ろに弾き飛ばすと、猛禽類が獲物を捕えるように目を輝かせ『ヒャハァーーー』と鳴きながら、赤黒いそれに食らい付き瞬く間に半分近くを食らうが、赤黒いそれは彩凰から逃れる為に体を素早く分断し、当初の体積から三割ほどになりながらも。

『貴様ら、覚えていろよぉーーー』涙目でテンプレを言い残し姿を消した。


 この場に残された彩凰は赤黒いそれが消えた所を『ピィーピィー』と名残惜しそうに鳴きながら突いている。京は意識を失い項垂れながら立ち尽くしている。フーちゃんこと不動明王は京を目覚まそうと声をかけながら体をゆすっている。そして召喚された七人の明王は……‘‘どうするんだ‘‘とジト目でフーちゃんを見ていた。

 七人の明王から醸し出される微妙な空気を感じ取ったフーちゃんは、京から視線を外し明王達の顔を見渡す。

『………皆…多忙の中で私の召喚に応じてくらたことに感謝する。それぞれの持ち場にもっどてくれ』

『賢りました。私はこれで失礼いたします』

『私もこれにて失礼いたします』

『また何かありましたら、御呼び下さい』

『いいものを見せてもらった。ではまた』

『……いきなり召喚して見せ場なしかよ』

『仕事中に呼び出しやがって、こんど酒でもおごれよ』

『こっちも色々忙しいんだよ。詫びとして合コン設定しろよ』

 最後に姿を消そうとした降三世明王(ごうざんぜみょうおう)にフーちゃんこと不動明王が引き止める。

「そちらはどうだ」

「⋯こちらは問題ない、表に出ない者だからな。だがこれからは召喚には応じれ難くなるがな」

「ああ分かっている。よろしく頼む」

「お前に言われるまでもないがな⋯⋯またな」

と言い残し降三世明王は姿をけした。 


 礼節をもって去る者がいれば、不満を言いながら去る者がいるなか、フーちゃんは思う(これだから使いたく無かったんだよ)と小さく嘆息をもらし宙を見る。

『…近く慰安会を開くか』久しく忘れていた世知辛い中間管理職の現実を思い出したフーちゃんは、現実逃避をしたくなったが、強い意志を持つフーちゃんは自分自身に言い聞かせるように(いかん、いかん)左右に首を振り京に向き直り、声をかけながら肩を掴み体を前後に揺らす。

『京起きるのだ。早く目を覚まさないと大変な事になるぞ。早く、早く目を覚ますのだ』



 その頃、京は夢の中で魔人から、涙目になりながらも必死に逃げていた。

(イヤイヤイヤイヤイヤイヤァーーーーこないで、こないで、こないで、こないでぇーーーーーー。どこまで追いかけてくるのよぉーーーシャーリィーーーーーーィ)

 赤黒いゲル状の意識体が侵食を始めた時から今まで京は、下半身が赤黒いゲルが大蛇の様にうねり、上半身は腕が不気味な程に細長く、耳まで伸びる大きな口を開き、額に大きな二本の角を生やした、赤黒く変色したシャーリィが京に新たな習い事させる為に猛追していた。


(京さまぁ~~~~~あたらしいぃ~~習い事をはじめましょ~~~~~~~)

(今以上に習い事をふやさないでぇーーー。朝は五時か武術の訓練して、学校が終われば、ダンス、ピアノにフルート、書道にお琴にお花にお茶に日本舞踊、バイオリンにギターに発声練習、礼節の授業に帝王学………これ以上は、ぜったいにぃぃーームリ)

(京さまぁ~~~。和楽器はまだ沢山ありますよぉ~~~、洋楽器もまだまだですよぉ~~~~。茶道を極めるなら茶器も作れないとだめですよぉ~~~。墨絵にデッサン、油絵に水彩画も始めましょうぉ~~~。京さまぁ~~逃げないでぇ~~~~)

(そんなに覚えたいならシャーリィがやればいいでしょーーー)

(私は全て習得しましたからぁ~~~~京さまにもできますよぉ~~~~たのしいできますよぉ~~~~早く新たに習い事をはじめましょ~~~~~京様がひとりで行うオーケストラ、あぁあ何て素晴らしいの。早く私の夢を叶えてくださいぃ~~~~~~~~)

(ムリ、ムリ、ムリ、ムリぜったいにぃぃーームリィーーー。いやぁーーこないでぇーー)

 薄暗い世界で必死に逃げる京の前に現れた光明を、藁にも縋る思いでつかまえた京の前にフーちゃんこと不動明王の姿があった。


『京。やっと目を覚ましたね』

『………フーちゃん…フーちゃんなの。本当に、本当のフーちゃんなの』

『そうだよ。本物だよ』

 京はフーちゃんを抱きしめ、安堵したことで体の力が抜けその場に座り込むと激しく泣きじゃくった。

『フーちゃん、フーちゃん。聞いてよシャーリィがシャーリィがね、遂に本性を表して妖怪ぬめぬめババーになって、もっと習い事を増やすって言って、追いかけてきたのぉー。こわっかたよぉー』

フーちゃんは泣き止まない京を和す為に頭を優しく撫でる。

『そうなんだね。とっても怖い夢を見たんだね。僕が本性むき出しのぬめぬめババーを追い払ったから、もう大丈夫だよ』

『…そうなんだね。フーちゃんが助けてくれたんだ。ありがとぅ………』

(………安心したからかしら………何だか眠たくなってきたわ……)


『…きょう、京起きて。ここで寝落ちしたら、取り返しのつかない事になるよ。どんでもない称号がついてもいいの。京起きてよ』

 左手でフーちゃんを抱え、寝惚け眼を右差し指でこすりながら重たくなった口を開く。

『………………なんなの…取り返しのつかないことって』

『いいから早く外の世界に戻るよ』

『………うぅーん』

 と返事を返す京に、ピィーピィーと赤黒いそれが消えた所を突いて鳴く、彩凰の鳴き声が耳に入ってきて急いで振り返ると、空いていた右手で彩凰を抱きかかえる。

『サイちゃんも来てくれてたんだぁ。うれしぃ』

『ピィーピィーピィー』

『…サイちゃん、どうしたの』

『ピィーピィーピィーピィーピィー』

『………えぇ~そうなの、残念だたね。せっかく御爺様から頂いた大きいミミズさんだったのに、全部食べる前に逃げちゃたんだね。また見つかるといいわね』

 京の話を嬉しそうに『ピィーピィー』と聞く彩凰に、赤黒いゲル状の意識体をミミズと言った事が可笑しくてフーちゃんは我慢できずに笑い出す。

『………くぅ…はっはははーーー。あれがミミズとは……笑い過ぎて腹が痛いよ。流石は彩凰殿に京だね。御見それいたしました』

 京は突然フーちゃんに笑われた事が恥ずかしくなったが、赤くなった頬を膨らませ怒った素振りを見せる、彩凰は京を庇うように『ピィーピィー』とフーちゃんを激しく突く。

『いきなりレディを笑うなんて失礼よ』

『痛い、痛い彩凰殿、突くのを止めて頂きたい………いきなり笑ってしまって謝るよ。けど馬鹿にしたのではなくて関心したんだよ。彩凰殿と京の二人はSaikyouのバディだって』

 Saikyouと言われ嬉しそう『ピィーピィー』と囀る彩凰とは反対に、京は納得できない顔をする。

『えぇーー、そんなのダメだよ。フーちゃんも入らないなんて寂しいよ』

『僕の事はいいから、表の世界に戻るよ』

『ピィーーーーーー』と肯定したと彩凰は鳴くが、京は独り言を言い始めた。

『えっと。サイちゃんとフーちゃんと京で、さいふきょう(最不況。これは絶対ダメよね。なら順番を変えれば、きょうさいふ……ふきょうさい……さいきょうふ………なんか訳が分からなくなってきてるわ。なら………サイちゃんと京で‘‘さいきょう‘‘なら、フーちゃんと京なら………)これよ!』

 

 何かを閃いた京は表の世界戻っていく。




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