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京、友達が出来る01

お越しいただきありがとうございます。

 ◇皇紀2687年(西暦2027年)凰居府◇

 

 昼下がりの公園でブランコを漕ぐわけでもなく、もの寂しそうな10歳頃の子供がそれにただ腰掛けていた。毎日の下校時に車内から見ていた公園で楽しそうに遊ぶ子供達を羨んでいその子は、車に乗って欲しいと懇願する侍女達を無視して学校から此処まで歩いてきたのだ。

 

 普段なら周りに気を遣いワガママを言わない子だが、今日の出来事で普段から感じてはいたが、今まで語源化できなかった感情を理解させられてしまった。

 それは「侘しさ」だった。誤解しないで欲しい、この子は決して不幸な生いたちではない。特異な運命を背負っているが、日本一‥‥いや世界一恵まれた子供だと言える。

 問題があるとすれば晴信の怒りを買い討伐された愚者。三代将軍敏信が英国と結んだ条約のおかけで性を偽る必要があることぐらいか。

 

 子供の名は武田(きょう)。晴信(信玄)の六女として生まれ、アーヤとの間で初めて生まれた女子なのだが、性別を偽らなければならない京は、晴信にとっては16男になり、アーヤとの間では9男になる。

 容姿は、腰まである艶のある亜麻色の髪を首の付け根あたりで元結で束ね丈長で飾り(戦国時代の姫の髪型)宝石のように煌めく赤い瞳が特徴的で、アーヤに似て美しく。性格も他者を思いやれる優しい少女だ。

 

 話がそれてしまったが、京が通うエリート校である麟鳳(りんほう)学園で行われた体力測定で、京は小学四年生でありながら全てにおいて成人男性を上回る数値をたたき出し、同級生達が羨望の眼差しを向ける中。取り巻きの少女が我が事のように胸をはり言ったのだ。

「当然ですわ。京様は私たちと違い特別なお方なのだから」

 少女が言うのは当然のことなのだが、京は同級生達と同じだと思いたかった。普通の子供だと思いたかったのだ。持っていないものからしたら”ふざけるな!”と言いたいところだが、持っている者の贅沢な悩みなのだと理解してほしい。


 そんな事を考えてブランコにこしかけていたら、右側から少年達の声が聞こえてきた。楽しそうな笑い声が耳に入ると、一人の少年が京に話しかけてきた。

「そこのお前。誰に許可を得てそこに座ってるんだ。すぐにそこをどけ」

 京に対して今までこの様に言う者はおらず、自身に向けられた暴言と思わなかった京が何の反応も示さず座っていたら、突然少年が右肩を掴み怒鳴りつけた。

「「お前。無視するな」」

 驚いた京は(おび)えながら急ぎ少年へ振り返ると、少年の表情がめまぐりしく変化した。怒り顔から驚いたように目を見張ったと思えば、顔を赤らめ目を背けた。


そんな少年の姿がおかしく、失礼だと思いながらも京は笑ってしまう。口を大きく開けて笑うのではなく。右手を口元に添えて「ふふふ」と淑やかに笑う。その仕草にお転婆な頃の京の姿は無くまるで別人。そうシャーリィにより再教育された令嬢?武田京がそこにいた。

 少年の周りので「ふふふ」と笑う者は皆無であった。口元を隠すことなく口を開けて笑う者しかいないからこそ、少年は激しく戸惑う。京が振り返ったときの小動物のような愛らしさに加えて令嬢?いやアーヤから受け継いだ天使のようなの微笑みに少年の少年達の思考は奪われ、そして心も奪われかけた。

 

 心を奪われかけた少年達の中で一人だけ抗うものがいた。京に声を掛けた小学生としては大柄で小太りの子が、心を取り戻す様に口を開く。

「お、お前。可愛いな」

 少年は抗おうとしたが抗えず素直な思いを言葉にしてしまうが、京は理解できずに聞き返してしまう。

「え……なにが」


「「だから。お前が可愛いっていってるんだよ」」

 思った以上に大きな声になったことに少年は驚き口を噤むが、流石にここまで言われれば理解出来たのだろう。京は顔を赤らめて照れるように身を捩らせたと思えば、右肩を掴む少年の手に左手を重ね、優しく掴みながら立ち上がり、恥ずかしそうに微笑む。

「よく間違われるけど、京はこれでも設定男子として生きてるの」


 初めてSSS級美少女に手を握られた感動と感触を堪能したい少年の思いを踏みにじるように京が‘‘男‘‘だと言うと、手を握られた少年はもちろん、周りにいた少年達も驚愕する。

「……えっ…………マジでうそだろ」

「……俺の周りの女子て……なに」

「……人とはいったい……何なのだ」

小学生にして悟りを開こうとする子や。

「俺に性別など関係ない」

新たな扉を開かんとする子までいた。


 少年たちが驚愕するのを他所にして、京は自分のペースで話を続ける。常人であれば、相手が驚愕しているのなら、自身は僅かであれ動揺するだろうが、日々数多の強者(つわもの)と過ごす京にとっては、この程度でペースを崩すことはない。

「私の名前は京。あなた達のお名前を教えて欲しいのだけど」

と小首をかしげながら問うと、少年たちは一斉に叫んだ。

「「「「まんま、女子だろぉぉーーーー」」」」


 京は楽しそうに両手を胸の前で軽く重ねて言う。

「まぁ。所士(じょし)さんですか。珍しい氏ですけど、いいお名前ですね。皆さんは血縁者なのですか」

少年たちは、また叫んだ。

「「「「「ちがうわぁぁぁーーーーーー」」」」」

 京は気安く他人が触れてはいけない家庭の事情に触れてしまったと思い、申し訳なさそうに口を開く。

「…申し訳ありません。ご兄弟でしたか……あまり…その…にていらっしゃら…………」

少年たちは、京の言葉を最後まで聞かずにまた叫んだ。

「「「「兄弟でもないからぁぁーーー」」」」


「氏が同じでも血縁でなければ兄弟でもないなんて……」

 京は驚き目をパチクリしていると、少年たちが肩で息する中、先ほど悟りを開かんとしていた子が息を整えながら口を開く。

「京君でいいのかな」

「京て、呼んでくれたら嬉しいかな」

 恥ずかしそう、はにかみ笑いながら言う京の可憐な姿に少年は頬を赤らめ顔を僅かにそらすが、わざとらしく一度深呼吸すると京に向かい言う。

「京。君は勘違いしているけど、まず僕たちは兄弟でも親戚でもなく苗字も所士ではないから」


「まぁ。なんてこと…………」京は考えていた。血縁でもない同じ氏の者たちが、それも‘‘所士‘‘なんて珍しい氏が四人も揃い友達になる確率は一体どれだけの確立なのか…だが今、眼前に立つ少年は言い切ったのだ‘‘違うと‘‘京は騙されたと思い怒ったそぶりで言う。

「京を(もてあそ)んだの」

 「「「「ちがうわぁぁぁーーーーーー」」」」

 少年たちは心から叫んだ‘‘弄ばれているのは俺たちだ‘‘と思いながら叫んだのだ。肩で息するのを整えながら先ほどの少年が疲れた様に独り言ちる。

「初めから説明しないといけないのか…………」少年は意を決した様に口を開く。


「まず。じょしは()()だから氏ではなく性別だから」

 目を丸くしていた京は‘‘女子‘‘と聞き不思議そうに尋ねる。

「京は設定男子として生きていると言いましたよね。それなのに何故に女子になるのでしょうか」

 一度は意を決した少年だが、小学生の男子が異性?に対して可憐とは簡単に言えるはずがなく、友人に助けを求める様に視線を向けるが、彼らは無言でガッツポーズして応援していた…そう丸投げしているのだ。


 友達に託すことが出来ない事を悟った少年は逃げる事もできたが、この場に踏みとどまり頬を赤らめて口を開く。その姿は生まれて初めて好きな女子に告白するような初々しささえ感じさせた。

「そぉ…それは…………」

 天然な京でも黙って少年の次の言葉を待つことができた。それほどに少年の真剣さが京にも伝わってきたのだろう。数分とも感じた静穏の時は気負う少年の言葉ではじけ飛んだ。


「「「京が余りにも可憐で愛らしいくて男にはみえないからだ」」」

 気負い過ぎていたのだろう、自分で思たよりも大きな声が出ていたことに驚きながら京を見ると、両手を頬に添えてモジモジしながら訳の分からない事を言い出した。


「えぇ~そんな~いきなりお嫁さんにしたいなんてぇ~~~お父様やお母様には何てえばいいのかしら。ですけど京には想う方もみえますし…どうしましょうぉ~~」

 生まれて初めて年の近い者から‘‘可憐で愛らしい‘‘と言われた京は嬉しさの余り妄想の世界にいた。妄想の世界から現実世界に戻そうと必死に少年は京の肩に手を置き話かける。


「まって。まって。まって。京は男なんだよね、なのに何でお嫁さんになるの。なんで俺が求婚してるの。それに何で俺が振られたていになってるの京。頼むからもっどてきて、だいたい京は俺たちの事なにも知らないんだよ」

 妄想を堪能した京は少年の声でハァと目を覚まし両肩に置かれた少年の手を払い、何故か胸元で両腕を組み顎を僅かに上げて言う。

「その通り。僕は男だよ」京はここでやっと気づいたのだろう、気を抜いていた事に。普段通う学園ではそれらしく振舞っているが、気落ちした事もあり素で少年達に対応していた事に気づくが、突然対応を変えも滑稽にしか見えず少年達は腹を抱えて笑い出す。


「「はっはははははーーぁ」」

いきなり笑われて気を悪くした京は反抗するように言うが。

「君たちは失礼すぎないかぁ」語尾が裏返ってしまい、少年達は転がる様に笑い出した。

恥ずかしさの余り京の顔は熟したトマトの様に赤くなり、胸元で組んでいた腕も下がり腰のあたりで両手をモジモジせている。その様子に可哀想と思ったのか、大柄の少年が腹を抑えながら立ち上がり口を開く。


「ゴメン。ゴメン。笑い過ぎたな。俺の名前は西郷吉之助、東一宮小学校の四年で番長だ。でこいつが」

西郷が腰を落としていた京にいつの間にか振られた少年の手を取り、引き上げる様に起こすと彼を紹介する。

「黒田孝高(よしたか)。俺たちの最強の軍師だ」黒田は京に右手を出す京と握手をしながら再度自己紹介をする。

「俺の名前は黒田孝高。西郷の同級生だ。一つハッキリしとくけど、決して俺は京に告白したわけではないからな」

 黒田に対して京は不貞腐れたように言う。

「それぐらい京にもわかるわよ。京が誰よりも可憐で愛らしのでしょ」

 先ほどの黒田達に笑われた事もあり意趣返ししたのだが、この少年らとは素の京で付き合うと決めたようだ。

「これは俺の負けだね」と言い降参するようにわざとらしく両手を上げると、黒田を押しのける様に一人の少年が京に握手を求めながら言う。この少年は新たな扉を開かんとした子だ。

「俺の名前は沖田総司。黒田のクラスメートだ。よろしく京ちゃん」

「京ちゃんと呼んでくれて、とっても嬉しいわ。京も四年生で同学年だね、よろしくね沖田君」

 

 京ちゃんと呼ばれて、はにかむように答える京は、一人の女性を思い浮かべていた。父親である信玄の最大のライバルであり、共に現在の日本を作り上げた上杉輝虎の事を。女性でありながらも男として戦国の世を戦い抜いた彼女は、日頃から京ちゃんと可愛がり彼女の最大の理解者でもある。

 輝虎に思いを巡らせていた京だが紹介の終わっていない少年が京に握手を求めてきたことで、ハッと気づきそれにこたえる。


「俺も京ちゃんって呼ぶね。俺は斎藤一。こいつらとは幼馴染なんだ」

「ありがとう斎藤君。これからもよろしくね」

 斎藤は人懐っこく笑い言う。

「俺のことは(はじめ)でいいよ、こっちこそよろしく」

「うん一君。みんな幼馴染なんだね、何か羨ましいな」

そう言い京は斎藤から他の少年らを流し見ると西郷が口を開く。


「握手会かよ」茶化す様に言うと、沖田と斎藤の肩を組み自慢するように言ってくる。

「こいつらは凄いからな。上泉(こういずみ)道場の門下生で新陰流を習ってんだぜ、中学生にも負けないからな」

「まぁー。上泉お…………」京は‘‘上泉おじ様‘‘と、つい口が滑りそうになるの抑え言い換える。

※京は上泉信綱から直に剣術を学んでおり、年齢の問題で免許皆伝は得ていないが新陰流免許皆伝の腕前と信綱本人から称されている。


「……上泉の門下生になれるだけでも凄いのに。中学生にも負けないなんて、二人ともお強いのね」

京の言葉を聞いて気をよくした西郷の自慢が続く。

「この二人は最強の侍大将だからな。俺たちは高校生になったら上洛合戦で日本一になるからよ」


※上洛合戦とは、戦国の戦法を後世に残す為に始められた競技で、現在では野球や蹴球(しゅきゅう)(サッカー)に並ぶ人気競技であり、100人制から5人制までと規模は様々あり、武力、知略は当然として軍師間での謀略もあり、どこの軍師が裏切るかも見どころで、弓や投石も使われるが15歳未満では禁止されている。また上洛合戦から発生した城取合戦、陣取り合戦、嫁取り合戦などもある。


「すごい。京も応援するから日本一になってね」

西郷の自慢を煙たがらずに素直に応援しようと考える京に対して、黒田は推し量る表情をみせながら口を開く。

「京って、この辺では見かけない顔だけど最近この辺りに引っ越してきたのかな。それとも麟鳳の生徒なの」

「麟凰の……」京は‘‘麟凰に通ってますの‘‘と言おうとしたが、麟凰と黒田が言った瞬間に少年達から醸し出された殺気立つ空気に包まれとっさに嘘をついてしまう。


「麟凰ではないわ。引っ越してきたの。今度お父様が東一宮小学校に挨拶に行くって言っていたわ」

と京が大嘘をついた途端に公園の茂みから「「え?」」と素っ頓狂の声が聞こえると‘‘ドスン‘‘とまるで大人が木から落ちたような音が響き、驚いた少年達がその場に視線を向けると黒ずくめの男が凄い勢いで走っていった。

 




最後まで読んで頂きありがとうございます。ログイン設定は解除していますので感想を頂ければ嬉しいです。

少年の名前を歴史上の人物と同姓同名ですが別人です。こちらの世界では黒田官兵衛は表舞台では活躍していなく、維新も起こっていないので此れから活躍してくれます。

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