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社畜にもなれなかった俺が、JSに転生して経営の才能が開花した件 ~駄菓子屋からはじめて売上50億円へ~  作者: しけもくパイポ
第二章 再建

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叶の願い

 叶についていくと寮の裏側に来た。ここには葉を落とし始めた梅の木が一本植っていて、根元には小さな墓石が一つある。


 叶は墓石の前にしゃがみ込むと、両手で頬杖をつきながらふーッと息を吐いた。


「あなた、私に隠してることあるわよね」


 来たか、ついにこの時が。もう言うしかないのか。


「ごめん、……」


「ううん、無理に言わなくていい。あなたは平穏暮らしたいだけなんだものね。私、無理させてしまっていたかしら」


 とても優しい声。労わるような包み込むような声である。


(そんなことない……。俺がずるいから、ずっと黙ってて……)


「俺、」

「あなた、前世の記憶があるんでしょ」


 ……ん? 今なんと?


「聞いたことがあるわ。生まれながらにして言葉を話せたり、遠い記憶のかけらを辿ると実は織田信長の側近だったり。世界○天ニュースで観たことあるもの」


 あらぁ……。


「小学生とは思えない商才と行動力。かつては凄い経営者だったに違いないわ」


 叶の勘違いは加速していく。俺が名のある企業の創業者なんじゃないかとか、この世にまだ成していないことがあるから魂だけが残ったとか。買い被りにもほどがある。


「これね、私のおばあちゃんのお墓なの」


 正確には、叶の祖母のお墓は祖父のものと同様に遠い町の大きな霊園の中にある。しかし、叶がいつでも手を合わせられるようにと、骨を一つ貰ってきてここに埋めた。叶が中学1年生の頃の話である。


「ここに来ればみんなが居たし。おばあちゃんも賑やかなのが好きな人だったから」


 祖母は叶の最後の肉親だった。小学校に入ってすぐ両親を亡くした。これを不憫に思った祖父が、叶と同じ境遇の人を救うために縋野奨学金を設立。その祖父も叶が小学校6年生の時に他界した。そして祖父の後を追うようにして、翌年祖母が亡くなったのである。


「それから奨学生のみんなも卒業していっちゃって、最後は澄人(あいつ)だけだった。あなたみたいに器用じゃなくて、就職もなかなかできなくて。面接の日に、迷子の子を交番に送り届けて遅刻するようなお人好しでね。ほんとバカで、一番世話のやけるヤツだったな」


(黒歴史が再放送された。まああの日のことが伝わっていたならよかった)


「でも、いいヤツだった」


 叶は鼻声になりながら続ける。


「本当はね、この寮ももういいかなと思ってたの。だから抵当に入れてもいいよって言った。でも、思い出の場所だから。


あなたはここを抵当に入れないでいてくれた。目の前に大きなビジネスチャンスがあったのに。私は多分誰かに委ねたかっただけなのかもしれない。自分では何も決められないから、誰かに取り上げて欲しくて。そうしたら、また諦められるから。そうやっていじけていたのね」


 ここは俺にとっても思い出の場所で、俺の帰るべき場所だ。誰かに渡すわけがない。他でもない自分のために。


「私は縋野グループを再建したい。正直今はもう名前くらいしかなくて、まともな事業は一つもないわ。赤字続きで、次は私が住んでいるところを手放すことになると思う。


でも、もう一度縋野奨学金を設立して、いつでも澄人(あいつ)が戻って来れる場所を作りたいの。ああ見えて澄人(あいつ)は頑固だから。頑固なだけじゃ、世の中を渡るのは苦労すると思う。だから私だけは待っててあげたいの。


あなたにこんなこと背負わせるのは酷かもしれないけど、お願いできないかな」


 俺は何も言わなかった。何も言わずにただ首を縦に振った。街灯の光が作った影が、叶に伝えてくれた。


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