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22話 空間の観察

マルスは森の中を進む。


魔物を探しているのだが、スライムやゴブリン、コボルドなどの魔物ではなく大物を狙っている。

珍しい魔物の方がスキルもいい物を持っているからだ。

いざ魔物を探すとなると中々見つからない物であるが、魔物は少ない方がいい、だが今のマルスとしたら魔物が出てきてくれた方がありがたい。マルスは魔法と剣で大抵の魔物は自分一人で倒せるまでになっていたからだ。


「居ないな、こんなに居ないなんて有り得ないよなー、魔物がこの森に戻ってきたのは確認できているのに何でいないんだ。」

独り言を言いながらマルスは森の中を進んでいくと、魔物の気配を感じた。

マルスは身を屈め慎重に魔物の気配のする方に近づいていく。木の陰に隠れながら近づいたマルスは魔物のいる方を見ると不思議な光景が目に入ってくる。


何もない空間から魔物が出てきたのだ。


マルスは魔物が出てきた場所をじっと見つめた。少し空間が歪んでいるように見える、色も少し違うように見える。


マルスはその空間から出てきたオークを一撃で倒し、空間に近づいてみる。

その空間は風景に同化するように存在している。蜃気楼のようにゆらゆらと歪んで見える。

マルスはその中に手を入れようか悩んでいた。

もし手が抜けなくなったらとか考えていたが魔物が出て来れるなら大丈夫と根拠のない考えの元、空間に手を入れたのである。

空間は少し外と温度が違うようだ。マルスの右手はひんやりした感覚に覆われていた。

すぐに右手を引き抜いたマルスは右手を確認するが何ともなっていないことにホッとする。


今度はその空間に頭を突っ込む事にしたマルスは一呼吸おいてから勢いよく頭を空間に突っ込んだ。

勢いに任せて突っ込んだマルスは体の半分近くが空間の中に入ってしまった。

マルスはそのまま周りを見回すが中は真っ暗で何も見えない。

空間からすぐに元の位置に戻ったマルスは外から少し空間の様子を観察することにした。

観察を開始して1時間ぐらいたった頃に空間からオークが一匹出て来た。オークは空間から出ると森の中に消えていった。そしてまた1時間ぐらいたつと今度はコボルドが3匹出て来た。


マルスは最初これがダンジョンではないかと考えたが聞いているダンジョンは洞窟型であったり、迷宮型である。真っ暗な空間だけというダンジョンなど聞いたことがない。マルスは何か別の物と思う事にした。


魔物を生む物と考えるのが一番しっくりくる。


マルスは5時間観察した、約1時間に1体の魔物がこの空間から出てきている。弱いゴブリンやコボルドなどは3匹単位であるが他は1匹単位であった。


一度レギウスとデリックに相談するために村へ帰る事にした。



マルスは日暮れ前には村まで帰る事が出来た、みんなで夕食を取りながら今回の出来事を相談した。



「レギウスさん、どう思います。」

「村長それは別の場所と繋がっている可能性があるじゃろう。」

「別の場所と繋がっていると言う事はどういうことですか。」

「例えばこの村と王都が空間を隔てて繋がっていると思えば分かりやすいだろう。その空間を抜けると王都に着くと思えば分かりやすいじゃろう。」

「そんなことがあり得るんですか。」

「そうじゃなワシが持っていたマジック鞄の中は亜空間で作ってある。その空間を作り入出口を作れば場所と場所が繋がるんじゃな。」

「レギウスさんの時代にはそんな事が出来たんですね。」

「いやワシの時代でも一般的では無かったぞ、技術は確立されていたがそれを運用できるほどの魔力を持ったものが少なかったからじゃな。」

「そうですか、そうなるとあの空間は自然発生ですね。人が作れるような代物ではないことは分かります。人が作るならきちんと形を作りますからね。」

「そうだな、人が作る物は形があるな。」

「デリックさんもそう思いますか。」

「マルス村長の言うとおりだと思う。もし人が作るならドアなり何らかの入り口と分かる物にするだろうな。ただの空間なんかにはしないだろう。」


それからマルス、レギウス、デリッくの3人は明日からその空間の観察をすることにした。

観察をしやすくするために空間の周りがよく見えるようにする計画も進める。魔物が生まれる場所であるので、魔物を仕留める目的で見張り台や観察所を作る事になった。


翌日はマルスたちを含め15名でその空間に行く事になった。

木材や食料などを大量に持っていく。


「あそこですね。昨日はこの場所から観察をしていました。」

「そうだなこの場所なら魔物にも見つかりにくいな。」

「カモフラージュの為に木板を建てたら蔦を絡ませておくかな。」

「そうですね、それがいいかもしれませんね。」

「では私たちは作業をするからレギウス殿とマルス村長は観察をしてくれ。」

「はい分かりました。」


レギウスとマルスは作業している場所から少し離れて空間を監視する。

すると空間からオークが出てきたのだ。

レギウスは物凄く興奮している。魔物が生まれているのか又は別の場所から来ているのかは分からないが何もない場所から魔物が出てきているのである。

空間から出てきた魔物はすぐに仕留められた。マルスとレギウスは空間に近づき実験を始めたのである。あと1時間は魔物が発生しないと思われるためにその間に出来る事をやるつもりなのである。

まずはロープに石を付けて空間に投げる。投げた石をロープで引っ張ると石に変化は全くない。

次は生き物をロープと繋ぎ中に入れる事にしたのだ。ネズミを数匹もってきている。

「レギウスさん、これでいいですか。」

「そうだなこれならネズミも動けるだろう。とりあえずは5匹別々に放つぞ。」

マルスはネズミを一匹ずつ空間の中に放り投げていく。細いロープに繋がれたネズミはかけているのであろうロープが勢いよくなくなっていく。この細いロープ1本で300メートルの長さがある。力の弱いネズミが300メートルのロープを引っ張る事等普通は出来ない。距離が開くほどネズミにかかる負担が大きくなっていくのである。勢いよくなくなっていたロープが止まった。

約100メートルロープが空間の中に入っている。

ネズミがどこかに隠れてしまったのかはまだ分からない。少し様子を見る事にした。

5匹のネズミはまだ生きているようでロープがわずかに動いている。


「もう少し大きな動物にしないといけませんね。」

「そうじゃな、ネズミではロープの重さで動けなくなってしまったかもしれんな。」


マルスは一度ネズミを回収することにした。ロープを引っ張りネズミの回収をしていると、突然一匹のネズミのロープが軽くなりその先にネズミはいなかった。ロープがちぎれてしまったのだ。

他の4匹のネズミは生きたまま回収が出来た。


「レギウスさんこの空間は生き物が生きられると言う事ですね。」

「そうじゃな、村長も中に頭を突っ込んだのじゃろう。」

「あっ、そうでした。」

「あとはこの空間がどこかにつながっているのか又は空間だけなのかだな。」

「そうですね、魔物の発生を見ると空間だけのような気がします。魔物は1時間おきに外に出てきています。他の場所と繋がっていれば1時間おきという事はないでしょう。」

「そうじゃな、もっと実験観察をしてみんと分からんな。」

「もう少し大きな動物を探してきます。」

「そうじゃな、あとネズミなどを一晩中にいれておこうかのう。」

「取りあえず少し大きい動物を探しに行ってきますね。」


マルスは森の中を走っていった。マルスが狙っているのはネズミより大型の猫、犬などの4本脚の動物である。サルなどだとロープをほどく可能性があるために対象にしていない。


探すといない物だ。マルスはもう2時間も森の中を探し回っている。


「あっ、いた。」

マルスは犬でも猫でもない、動物を見つけた。名前は分からないが猫より一回りぐらい大きなリスのような動物である。マルスは逃げられないように気配を消しながら近づいていく。

捕まえようと一瞬てを伸ばそうとした時に気配を察知されたのだろう。逃げられてしまった。


殺すのは簡単だが生け捕りはかなり難しい事を理解したマルスは作戦変更をしたのであった。


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