村娘 ドラゴンを袋から出しましょう
ドドドドドッと人を掻き分け、こっちに走ってくる人影が見えた。
「急いでいるんだー。どいてくれー」
マリアンを担いだクロスだ。
ふんどし一丁だと、なかなかシュールな絵面だね。
「ま、待たせたな」
私達の前でピタリと止まったクロスは、マリアンをすぐさま降ろし、そのまま大の字で倒れた。
ぜぇぜぇと肩で息をして、なんとも苦しそうだ。
「わ、悪いな。俺の足は限界みたいだ」
試験に加えて、あの技を一日で二回はそうとう足腰に負荷がかかるようだね。それにマリアンを担いだまま、全力でここまで走ったらそうなるよ。
「ありがとうクロス」
「あぁ、ただ、少しだけ。俺は休ませて貰うぜ」
そう言ってクロスは目を閉じてしまった。
無理させてごめんね、クロス。後は私達にまかせて、ゆっくりやすんでね。
「な、何か急なんだってアリスちゃん?」
「えぇマリアン。今はあなただけが頼りなの。それで、ちょっと聞きたいんだけど、ドラゴンって癒せるかな?」
「ドラゴン?ど、ドラゴンね。んー神様が私に癒せない者はないってお告げで言ってたから、たぶん大丈夫だと思うけど、どうしたのアリスちゃん?ドラゴンは討伐したんでしょ」
マリアンは不思議そうに私を見つめていた。
どうやらクロスは走るので精一杯で、詳しい事情は話してないみたいだね。
「マリアン、今は時間がないの。今からドラゴンさんを出すから、出たと同時に魔法で癒してあげて。ドラゴンさんはかなり傷ついているから、出来るだけ強力なやつをお願い」
「よくわからないけど癒せばいいのね」
「うん」
私は布袋に手を入れた。
要領はわかってる。出したい物。ドラゴンさんをイメージして取り出すだけだ。
袋に手を伸ばし、ごそごそと腕を動かしていると硬い物に触れた。これは、ドラゴンさんの鱗のようだね。
でもこれじゃ掴めないし、体のどこの部分かわらない。
私は一旦手を戻してもう一度入れる。
今度はドラゴンさんの尻尾に触れるイメージだ。
出来る限りイメージを膨らませて…………。
「んお?」
何かが触れた。硬いけど尻尾のさきっちょのようだね。
「これなら掴めるね。ほっ。ありゃ?」
少し引っ張って見たけど、全然ビクとも動かないや。
「リーニャごめん。ちょっと私を引っ張ってくれるかな?ドラゴンさんが重くて取り出せないや」
「わかった」
マリアンは目を閉じて、その間に詠唱を始めている。
さすがに手伝ってとは言えないね。
私の腰にリーニャが手をまわした。
「いくよっ。リーニャ、せーのっ。うーんっ」
リーニャもかなり力を入れて引っ張ってくれてるけどビクともしないな。
「すまないアリス。私は戦いは得意でも力自体はそんなにないんだ」
「大丈夫。心配しないでリーニャ」
とは言ったものの、大丈夫じゃないよね。
まさか取り出せないなんて。ど、どうしよう!
そう思った時、頼れる声がした。
「俺が。やろう」
「ジョ、ジョナサン。来てくれたんだね」
「今さっき……来た。だが俺は……中身が……何かわからない。アリスを先頭に……俺が……引っ張てやる」
ジョナサンに次いでリーニャも答えた。
「微力ながら私も手伝おう」
「ありがとう」
私、ジョナサン、リーニャの順で並んだ。さっきと同じようにドラゴンさんの尻尾を掴んだ。
「いい。綱引きの要領で行くよ!」
「「あぁ」」
「いくよっ。せぇーの、うりゃーー」
ズッ。
私の握力だと滑ってドラゴンさんを出す事は出来なかったけど、袋から尻尾の先が見えた。
あと少しだね。
「アリス……これなら……俺だけで……十分」
そう言うとジョナサンは私達を下がらせた。
「では……行くぞ」
マリアンも頷いていた。
マリアンの準備は完了したようだね。
後はドラゴンさんを出すだけだ。
両手で尻尾をがっちりと掴み、ジョナサンが少しずつ後ろへと下がる。ドラゴンの尻尾の根本が出てきた。
「ふんっ」
勢いよくジョナサンが後ろへ下がって行く。
すると、大人しくドラゴンさんが出てきた。
頭も垂れ下がって弱ってる。声も出せないようだね。
「マリアン。お願い」
「神に使える聖女の加護の元、生命の雫、降りたまえ……キュアヒーリングレイン」
空から光の雨が突如としてきらきらと降り注いだ。
ドラゴンさんの頭がピクリと動いた。
光の雫に当たると、徐々にドラゴンさんの傷ついた体は塞がっていく。
マリアンありがとう。
間に合ったみたいでよかったよ。
なら私も次の行動しないと。
私は布袋に手を入れて卵を探し、転がして卵を外へ引き寄せた。
次でドラゴンは終わりかな。
ついに三万文字になりました。
ありがとうございます。
少しでも面白いと思えたら
ブクマ
↓の☆☆☆から評価して頂けたら幸いです。




