罠と生贄
◆
異星人の宇宙船の探索を初めてざっと2時間が経過した。
我々は順調に目標時点との距離を縮めている。
しかし、敵は全面的に攻撃して来るのではなくゲリラ戦法を取っていてこれがかなり厄介だった。
待ち伏せは当たり前で、奇襲を仕掛けてはすぐ離脱の繰り返しだ。
『わわわーーー、動きが早くて全然当たりません!!! 私にも武器をくださいよ』
またも体に投げ槍や斧が刺さった≪アナンシ≫が何かと文句を言ってくる。
『私以外はみんなシュン様が作った高性能のライフルを装備してるでしょう?
射撃こそが知的な私に似合いますよ』
なんかいってるが無視だ無視。
現在、あいつは≪アラクネ≫と俺の両方で行動に制限をかけてはいる。
けど元々は敵側の、リチャードとかいうやつの所有物だった。
スタンドアロンタイプなのを活かしてドローンとしてつかっているが万が一敵に乗っ取られたら大変だ。
特に強力な飛び道具を持たせた状態だと目も当てられない。
だからあいつは拳のみで武装してもらっている。
「ズーードン」
『うわっー何何?? 体に風穴が!!!??』
「ごごごごーごめんなさい、ごめんなさい」
「またか……」
今の隙に敵は既に逃走に成功。
影すら見えない。
やはり、ミルシアにも銃を渡すのは無理があったか。
またも≪アナンシ≫に当ててしまったらしい。
≪アナンシ≫を盾役、パワードスーツに乗ったキリルが後ろから攻撃と牽制、俺が後方から支援。
一応、ミルシアにも自己防衛のために武器を持たせたのだが、これは想像以上のポンコツな聖女だ。
勿論敵がこちらの弱点を利用してわざと死角とか味方を射線に巻き込むように逃げ回るからってのも
大きい。
【ゴブリン】と違って強化種の【ホブゴブリン】は厄介極まりないのだ。
待ち伏せにうんざりした俺らは跳躍で敵を一旦撒こうと試みたがそれも失敗で終わった。
何かの邪魔が入るのかここでは超時空間跳躍がまったく使えないのだ。
敵さんも状況は同じらしく、跳躍を使って突然後ろから襲い掛かって来たりはしないのは不幸中の幸いと言えようか。
結局、移動は専ら歩くしかなくなった。
「本当にわざとじゃないんです。 ああ、どうしましょう。
痛くはないですか?」
慌てふためくミルシア。
ふーむ、こいつ使えないな。
何かあったら見捨てよう。自然にそう決断してしまった。
そんな俺をキリルがちょっと不安な顔で後ろから見ている。
「どうした?」
「……………ううん、何でもないよ」
「そう?、まあ、次に大き目の部屋が出たらそこで休憩しよう
そろそろ、目標時点にも近づいたし敵も本腰をいれて攻撃してくる可能性が高い」
『えっと、後15分くらいで結構大きな空洞に出るはずです』
今は道の案内もAIの≪アナンシ≫に任せている。
「じゃあー周辺を警戒して、移動開始だ」
◆
やはりというべきか。
休憩出来る場所の直前のポイントでまたも待ち伏せにあった。
『ふん、そんな攻撃効きませんよ~~だ~』
最初こそ嫌がっていたが今はノリノリで【ホブゴブリン】に肉薄していく≪アナンシ≫
うん、こいつ絶対大きな力とか持たせちゃダメなタイプだ。
おっそろしいほどに以前の主人だったリチャード議長だったかな?、あれのような俗物っぽさがある。
今回も適当に応戦すれば引くだろうと思ってライフルで威嚇射撃をする。
しかし、
俺は甘く見過ぎていた。
またも油断してしまったのだ。
敵は精々これくらいしか出来ないと。
「ズーーードン、ズーーードン」
またもミルシアの誤射かなと思って視線を向けると
『こんな馬鹿な………』
片言を言いながら崩れる≪アナンシ≫が見えた。
正確な射撃、しかもかなりの高出力の武器なのか片足と片腕が吹き飛んでいる。
そして
盾がなくなったことに一気に高出力の光線が雨あられのごとく降りかかって来た。
まだ、狭い通路の中にいたので逃げ場はない。
「くそ、銃が撃てるのにわざと今まで槍を使って一芝居やってたってか?」
くそ!!、あまりにも≪アナンシ≫を過信した。
盾役は2~3対は出しておべきだったか。
「シュン!、伏せて」
咄嗟にキリルが前に出て俺やミルシアをカバーする。
俺が作ったパワードスーツは特別仕様でかなり頑丈だが無敵ではない。
表面がかなり損傷したキリルのスーツ。
もう一度同じ集中射撃を食らったら多分持たないだろう。
運動性能を中止したから装甲はあまりーーー
「キリルさん!!!」
「後ろから挟まれたら終わりだ。 まずはーー」
「私が打って出る」
止めるまもなく飛び出していくキリル。
ライフルを投げ捨てると同時に両腕の固定武装を展開。
長さ1メトルくらいの電磁式チェーンソー。
それが二本。
パワードスーツを自分の体以上に乗りこなすキリルが駆使するチェーンソーの舞。
それはある意味、芸術的でとても菅野的な舞だった。
【ホブゴブリン】らもここまで射撃をうまく避けながら突進してくるとは思わなかっただろう。
為す術もなく切り倒されていく。
「よかった、キリルがあんなに強いなんて~ これで、また助かったわね」
え?
また?
くそ、今回の罠は今までとは何かが違う。
こんなに簡単に終わるはずがない!!
「キリル!! 気をーー」
何かを言おうとした瞬間、床が一気に崩れるのを感じた。
この期に及んで落とし穴!?
かなり幼稚な罠だと思ったがそれは違った。
崩れた床の下には何かのエナジーフィルドが形成されていた。
多分絶対吸い込まれてはダメなやつだ。
いきなり足場がなくなって動揺する全員。
キリルはパワードスーツの能力で壁にへばりつき落下を回避したし、
俺も何とか崩れてない区域まで回避出来た。
問題はミルシアと≪アナンシ≫。
咄嗟の判断を間違えたらしく、そのまま落ちて行く。
ここからじゃ間に合わない。
そう
特に使い道もないしな。
こころのどこかでそう判断した俺はただそれを見つめていた。
しかし。
俺は馬鹿だ。
キリルはそれを見過ごさなかった。
「捕まって!!!」
近くまで移動してはパワードスーツのアームで二人を捕まえた。
後は引っ張って登ればいいが、敵も黙って見ていたりはしない。
絶好の的に攻撃が集中する。
くそ
奥の手だった周辺システム改変を使う。
急いでキリルの足場と攻撃回避のための遮蔽物を…………。
「シュン、ごめん」
形成に掛かった僅かな時間
ミルシアと≪アナンシ≫は軽い傷はあるが無事だった。
しかし
「後はお願いーーーー」
ボロボロになって体のバランスが取れなくなったキリル
ミルシアが支えようとするが出来るはずもなく
そのまま
落下し
下で待ち構えていた
エナジーフィルドに触れた瞬間。
塵も残らず消滅してしまった。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
キリルの反応が完全に消えた。
お読みいただきありがとうござい。
予想外の展開になるように努力はしておりますがいかがだったでしょうか。
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