参佰弐拾玖
楽しい気持ちのままでは締めくくれなかった遊園地を経て、4日。
そこまで日を空けている覚えはないのに、悠二くんを責めてしまってからよけいに顔を合わせづらい。
つられて珋二さんや椎名とも声を交わしづらくて、彼らから2回ほど連絡がきたけれど電話には出なかった。
捨てられないものであることに変わりはない。
ただ、大切で大事にしているつもりが壊してしまうのだ。
それも相手がどうのって話じゃあない。
自分の都合で、そうなってしまう。
後から悔いることだけは、毎回ちゃんと出来るのだからお笑いぐさだ。
もう傷つけたくないのなら、会わないのが一番なのだろう。
今ならまだ間に合う。
離れるのにちょうど良いきっかけだったと思うことにしよう。
これなら、もう両親のようなことにはならない。
一緒にいると、またわたしの考えなしの行動が、取り返しのつかない危険なことに繋がるかもしれないのだ。
そう考えがまとまっていても、やっぱり空いた時間の活用法に悩んでしまう。
珋二さんたちと会わないあいだにすることなんて、アルバイトか家の掃除。それから大学に通うことくらいで。
それは彼らと会っているときでもしていたことだ。
それにここ最近は、大学に行っても文さんと綾さんを独り占めする時間がない。
彼女たちの今後を知る他の学生たちに昼休みまで迫られて、2人とも────特に文さんは引きつった笑みを浮かべていると綾さんからメールが送られてくるのみ。
限定されたやりとりでは、ろくに相談もできない。
文さんや綾さんに人気があるのは嬉しいけれど、気持ちの一部分では戻ってきてほしいという思いがある。
けれど別に、2人はわたしだけに構ってくれる相手というわけでもない。
直接話すのは諦めよう。
そう思い直し、食堂で一人きりの昼食をとっていた。
自分を嘲るように息をこぼしていると、スマホに新しく通知音が鳴る。
メールアプリを開くと、表示された送信者は睦美さんだった。
彼女には、律さんのところに任せたあとでわたしの連絡先を伝えて欲しいと、女科さんに頼んでいたのだ。
わたしのお願いに頷いた彼女からは、受け取りはするやろうけど、どう扱うかは相手次第やで……という言葉をもらっている。
もちろんだ。
睦美さんはたぶん、わたしとは関わりたくないだろうから。
でも優しい人だとも思う。
きっと一度は連絡してくれる。そんな期待をしてしまっているところが、わたしの悪癖なのだ。
自分勝手な部分はいつまでたっても直らない。
だけど、今日。
睦美さんのことがあってから、まだ一ヶ月も経っていないこの日。
やっとだ。
グロリオサの花みたいに綺麗な彼女から連絡がきた。
律組にも遊園地で起こったことの話は届いているはずだけれど、彼女が送ってきた文章には襲ってきた相手を問うどころか、悠二くんのことすら書いていなかった。
お昼を終えてから返信すると、相手の返事は夕方を回ってから届いた。
今日は、「mild❜S」のアルバイトが休みなのだ。
臨時ではあるけれど店を閉める。
朝にマスターから、そう連絡があった。
だから、このあと会えないかしらという文字の列に少し考え、一言「はい」とだけ返した。




