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ヤーさんのお姫様  作者: 不知火 初子
五章 ひとりでだって強くはなれるよ
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参佰弐拾玖




楽しい気持ちのままでは締めくくれなかった遊園地を経て、4日。



そこまで日を空けている覚えはないのに、悠二くんを責めてしまってからよけいに顔を合わせづらい。


つられて珋二さんや椎名とも声を交わしづらくて、彼らから2回ほど連絡がきたけれど電話には出なかった。





捨てられないものであることに変わりはない。


ただ、大切で大事にしているつもりが壊してしまうのだ。



それも相手がどうのって話じゃあない。


自分の都合で、そうなってしまう。



後から悔いることだけは、毎回ちゃんと出来るのだからお笑いぐさだ。




もう傷つけたくないのなら、会わないのが一番なのだろう。


今ならまだ間に合う。


離れるのにちょうど良いきっかけだったと思うことにしよう。



これなら、もう両親のようなことにはならない。


一緒にいると、またわたしの考えなしの行動が、取り返しのつかない危険なことに繋がるかもしれないのだ。






そう考えがまとまっていても、やっぱり空いた時間の活用法に悩んでしまう。



珋二さんたちと会わないあいだにすることなんて、アルバイトか家の掃除。それから大学に通うことくらいで。


それは彼らと会っているときでもしていたことだ。




それにここ最近は、大学に行っても文さんと綾さんを独り占めする時間がない。


彼女たちの今後を知る他の学生たちに昼休みまで迫られて、2人とも────特に文さんは引きつった笑みを浮かべていると綾さんからメールが送られてくるのみ。



限定されたやりとりでは、ろくに相談もできない。


文さんや綾さんに人気があるのは嬉しいけれど、気持ちの一部分では戻ってきてほしいという思いがある。




けれど別に、2人はわたしだけに構ってくれる相手というわけでもない。


直接話すのは諦めよう。



そう思い直し、食堂で一人きりの昼食をとっていた。



自分を嘲るように息をこぼしていると、スマホに新しく通知音が鳴る。


メールアプリを開くと、表示された送信者は睦美さんだった。



彼女には、律さんのところに任せたあとでわたしの連絡先を伝えて欲しいと、女科さんに頼んでいたのだ。



わたしのお願いに頷いた彼女からは、受け取りはするやろうけど、どう扱うかは相手次第やで……という言葉をもらっている。


もちろんだ。


睦美さんはたぶん、わたしとは関わりたくないだろうから。


でも優しい人だとも思う。


きっと一度は連絡してくれる。そんな期待をしてしまっているところが、わたしの悪癖なのだ。


自分勝手な部分はいつまでたっても直らない。





だけど、今日。


睦美さんのことがあってから、まだ一ヶ月も経っていないこの日。



やっとだ。


グロリオサの花みたいに綺麗な彼女から連絡がきた。



律組にも遊園地で起こったことの話は届いているはずだけれど、彼女が送ってきた文章には襲ってきた相手を問うどころか、悠二くんのことすら書いていなかった。




お昼を終えてから返信すると、相手の返事は夕方を回ってから届いた。



今日は、「mild❜S」のアルバイトが休みなのだ。



臨時ではあるけれど店を閉める。


朝にマスターから、そう連絡があった。



だから、このあと会えないかしらという文字の列に少し考え、一言「はい」とだけ返した。





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