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ヤーさんのお姫様  作者: 不知火 初子
一章 始まり
12/643

拾弐





「ところで、どこに向かってるの?」


何か状況とか諸々含めてデジャヴ感出てるけど、目的地も知らされないまま、流されて移動させられるのは、凄く面白くない気持ちだ。



「お前んち」


「ふーん」


どうりで何か見たことある交差点だ・・・・え?




「え!?何で!?」


「うるっせえ!耳のそばでデカい声出すな!」



「ごめん」


どうやら私の心からの叫びは、相手の脳にまで浸透した模様。


りゅうじさんが、頭を抑えてる。



「いや、でも何で、私の家なの!?」


「は?帰りたいんじゃないのかよ?」


いや、言ったけども。帰りたいけども。だからって、そんな恐い顔しないで欲しい。


「何か違う!帰りたいけど、送ってくれとは言ってないじゃん!」


「どっちだって同じだろうが!」


「ぜんぜん、違う!」


むしろ、何で同じになったのか、不思議で仕方がない。いや、だから顔恐いってば。



車はもう交差点を抜けて、真っ直ぐ走っている。抗議しても、停車してくれる様子が無い。


「もう!ここで降ろしてくれたら、自分で帰るから!」


「じゃあ、勝手に降りろ」



はあ〜〜!?走ってる最中に降りたら、普通に怪我するわ!


「何?怪我させたい訳!動けなくなって、後続車に轢かれても良い訳!」


私の最後の訴えに、凛々しく整った眉が、片方だけピクリと動いた。


そして、何か言い出しそうな、細かい口の動き。


良し、勝った!と勝手に思った私は、


「・・・チッ」と小さく舌打ちが出たのを、聞き逃さなかった。


うわっ。すっごい腹が立つ!いや、でも我慢だ。私がんばれ。ちゃんと停車を指示してくれてるんだから、ここは抑えて私!!



言い争っていたら、また更に家に近付いたらしい。ここから数分歩けば、私の家に着くという距離で、車は静かに停まった。



約3日もお世話になって、不本意だけど家の近くまで送ってくれたし、一応お礼は言わなきゃな。


こんな見た目がイケメンな人と過ごせるのも、これで終わりになると思うと、少し気持ちが沈む。


「・・・ありがと」


後部座席から降りて、ドアを閉める前に一言だけ告げた。


やっぱり少し寂しいって、思ってるのかもな。自分の中で一番先に顔を出した感情に、心を寄せて相手を見た。



「あー。じゃあな」


その相手は、こちらを見ることもなく、片手間にドアを中から閉めた。


そして、そのまま車は発進し、あまりの対応に放心状態の私を置いて、やがて見えなくなっていった。





帰ってから、抱き枕にしてるクッションを、サンドバッグの様に思いっきり叩いた。


「あいつ!すっごい嫌なやつ!!嫌なやつ!!」




・・・・「へっくちょ!!」


「兄貴!大丈夫っすか!?」

「風邪ですか!?」

「いや、大丈夫だ」


日本の都会のどこかで、くしゃみをした人物がいた。







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