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プロローグ

 「アンナ・カーニエよ」と彼、妻に。「私の治世において、砂賊を撃つことは、もはやできまい。それゆえ、お前の治世の間に、砂賊を撃つのだ」


 (中略)


 「賊は、撃つ、ではなくて、討つ、ですよね?」


 (中略)


 「そう。シルニェ語において、賊は撃つではなく、討つという動詞を使う。普通ならば、ね。しかし……。この場合は、おそらく、討つではなく、結果として撃つことになるような気がするが」


      我門 隆星「熱情王デト・トネドラの生涯」255ページ


   ―― プロローグ1 ――


 帝国紀元前590年、一つの国が滅亡した。首都陥落の直前、敵の重囲を潜り抜け、まんまとその国の支配者たちは逃げ出した。略奪に曝される首都を尻目に、支配者たちは逃避行を続ける。略奪者たちの追撃を振り切った彼らは、地球を四分の一周した後、大カルデラに到着した。

 支配者たちの子孫は、カルデラ原住民を統合し(あるいは吸収され)、周辺諸民族を併呑していく。そして紀元元年、帝国を建設した。わがフロイディア帝国の建国である。

 その後は史書のとおりである。フロイディア帝国を盟主とするフロイディア連盟の提唱、諸帝国による連邦すなわち「帝国連邦」の建設、などなど。

 「支配者たちの子孫」は、言わば生殺しにされた蛇である。蛇は、自分をこんな目に合わせた者を決して忘れない。いつでも復讐する機会をうかがっている……。


   ―― プロローグ2 ――


 一方の略奪者は、すぐ国家経営に破綻した。歳入が軍備による略奪のみに依存していたならば、その経営に限界があるのは当然。内紛が生じ、史上最大規模を誇った大帝国は、記録的な速度で瓦解していった。ある者は重農主義帝国への朝貢貿易で生計を立て、またある者は砂漠に点在する泉を巡ってガラクタを売り付けて生き延びようとした。

 略奪者の子孫たちは皆それぞれ、祖先の栄光を復活させようと考える。「支配者」を半殺しにしたときの利益は莫大で、そのときの金・銀・麻薬の生産量は、全世界の9割を占めていたのである!

 一度手にした贅沢品は、なかなか手放せない。彼らもまた、「過去の栄光」という贅沢品を手放せないでいた。周辺部族と抗争を繰り返している間に、世界の機動力や軍備は、彼らを遥かに追い抜いていった。彼らが気づいたときには、砂漠に出没し金品を奪う賊 ルドルフエヴアイオイ、すなわち「砂賊」になりさがっていた。

 彼らは、過去の栄光を取り戻すべく、「支配者の子孫」に取り入り、今度こそ敵対者を滅亡させようとする。すなわち、略奪者は再び団結し、支配者に悪夢をもたらそうとしていたのである。



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