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40話

 宝箱に入ってたのは鳥かご…………だけではなく、硬貨や短剣とかも入ってたけど、一番に目についたのが異彩を放つその鳥かごだった。

 見た目的には何の変哲もない漆黒の鳥かごだし、中には何も入ってないけど…………だからこそ余計に目立つ。


「アリス?なにかあったか?…………うお!?めちゃくちゃ大漁じゃないか!!」


 宝箱の中を覗き込んだアウルさんが大声を出す。何が大漁なんだろう?と思っていると、アウルさんは不思議そうな表情を浮かべていた私を見て話を続ける。


「そこに入ってる籠と短剣、多分マジックアイテムだぞ」

「あ、そうなんですか?」

「あぁ、ダンジョンの宝箱から出てきた物だしな。等級までは分からないけど…………アリスは鑑定魔法は使えないのか?」

「………」


 私が視線でルナに訊くと、彼女は無言で頷く。いけるみたい…………あれ、どういうイメージだろう?うーん…………?


「別に形式は拘らなくて良いわよ………でもそうね。ウィンドウに情報を纏めて見えるようなイメージの方が分かりやすいんじゃないかしら」

「なるほど…………えっと………『鑑定』」

「出来るのかよ」


 アウルさんの呆れたような声を聞きながら、私は鳥かごの方に杖を向けて鑑定を始める。

 すると、私の前に何かの画面のようなものが現れて、情報が書き記されていった。まるでゲームみたい…………なんて思いながら、数秒で情報が全て書き出されたのを見て、私はそれを読み始めた。





―――――――――――――

『幽玄の火籠』

魔道具・A等級

「死に最も近い世界で鍛えられた幽玄鋼で出来た籠。籠の中で灯された火は、等級の低い魂には見ることが出来ない」


1.魔力を供給する事で、風と水の影響を受けない幽玄の火を籠の中に灯す。


2.幽玄の火は光源として扱える他、籠の中から放つことで攻撃することが出来る。


3.幽玄の火はDランク以下のモンスターに認識されない。

――――――――――――――





「…………うーん?」

「あら。もしかして、くじ運はかなり良い方だったかしら?」

「いや、別に…………?」

「そう?これ、宝くじなら一等レベルよ?」

「ふぇっ!?!?」

「うおっ、びっくりした…………」


 突然の私の大声に驚いたアウルさんが一歩後ろに下がる。

 あ、ごめんなさい…………私が謝ろうと慌てて振り向いたとき、先に声を掛けてきたのはアウルさんだった。


「そんなに驚くなんて、相当なお宝か?」

「あ、えっと…………そう、みたいです?」

「へぇ………どんなのだったか聞いても良いのか

?」

「い、良いですけど…………進みながら話しませんか?少し時間使っちゃってますし…………」

「………それもそうだな」


 私は取り敢えず宝箱に入っていた物を全部収納して立ち上がる。短剣の方はまた今度で良いや。

 私達は部屋を出て、通路の続きを歩きながらさっきの鑑定で見た情報をアウルさんに話した。


「――――っていうマジックアイテムだったみたいです」

「みたいです、じゃないが!?それ王都で行われる魔道具オークションでもとんでもない値が付くぞ!?」

「ぇ、そ、そんなに…………?」

「これも知らないのか…………良いか?まず幽玄鋼で出来たアイテムはダンジョンでしか手に入らない上に、入手率も低いんだ。特に明かりなんかどこにあっても困るものじゃないし、武器にもなるんなら…………」


 言わなくても分かるだろ?と言う視線を向けてくるアウルさん。実はあんまりピンと来てないけど、厚に負けた私は頷いてしまう。

 すると、ルナが少し付け足すように説明を続けてくれる。


「幽玄鋼は別名ゴーストメタルとも呼ばれていて、幽玄鋼で出来たアイテムは幽玄鋼で出来たアイテムでしか破壊出来ない特性を持つのよ。彼の言う通り、人の手で作り出すのは不可能だから、ダンジョンで入手出来るアイテムの中でも特に価値がある部類よ」

「な、なるほど…………」


 これ、もう今回の依頼の報酬分は十分なんじゃ?っていうか、寧ろお釣りが出るレベルなんじゃ…………


「アリス、契約は契約よ。確かに収穫で言えば想像以上だったけど、それとこれとは関係ないわ。まだ契約が続いている以上、このダンジョン攻略での戦利品の入手権はあなたにあるの。そのことを忘れてはダメよ?」

「…………分かった」


 ルナの言葉に頷く。契約の上では確かに私が全ての戦利品を得ることになってるし、それを無碍にしたら契約の意味が無くなってしまう。

 でも…………と考えていたところで、アウルさんが声を掛けてきた。


「なぁ、アリス。折角だしそれ使ってみないか?」

「え?あっ、そうですね………こう言う場所でこそ役に立つでしょうし」

「だな」


 私はさっきの籠を取り出して…………あれ、魔力ってどうやって流したら良いの?


「マジックアイテムの使用には特に特別なことは必要ないわ。手に持って使うと念じれば、その分の魔力は勝手に使用者からマジックアイテムに補給されるから」


 そうなんだ。便利なんだね…………なんて思っていると、隣にいたアウルさんが持っていたカンテラの火を消す。

 そうして周囲が完全な暗闇に包まれて…………


「わっ…………!?」

「おぉ…………!」

「あら、綺麗じゃない」


 籠の中に蒼白い火の玉が幾つかふわふわと浮かぶ。そして周りが普通の火より少しだけ明るい蒼白い光に照らされ、さっきより周囲の様子が分かりやすくなった。

 籠の中に揺らめく蒼白い炎はどこか不気味なようで、何故か目を奪われるような美しさがあった。


「…………凄いなこりゃ。美術品としても価値が付くんじゃないか?」

「………これ、旅をする中でも普通に便利ですよね」

「旅に限らず、どんな時でも手軽に使える明かりなんて便利だと思うぞ。基本的に使い捨てなのが殆どだし、Dランクまでとは言えモンスターに気付かれにくくなるんだし」

「ですよね…………」


 売ろうかとも一瞬悩んだけど、これだけ便利な物を手放すのは惜しい気がする。特に私は暗いところは嫌いだし。

 取り敢えず、今はこのダンジョン攻略に使えるマジックアイテムの入手に喜ぼう…………それにしても。


「アリス、階段があったぞ。この道は正解だったらしいな…………よし。次の階層からは親父がいる可能性が高いと思う。これからはくまなく探そう」

「はい、分かりました」

「…………待ってろよ、親父。絶対に助けるからな」

「…………」


 アウルさんが一番色々と困ってる立場なのは話を聞いたから分かってる。この戦利品も、本当に欲しいのはアウルさんのはずなのに。

 彼からはそんな欲に濁った視線は一切感じなかったし、今もただ真剣にお父上を助けることだけに目を向けてる。

 私とあんまり変わらない歳なのに凄いなぁ、なんて思いつつ。その対比としてか、あの日絡んできた3人組の姿が頭を過ったのだった。


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