表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/63

21話

 アリアさん達と別れて、看板などを頼りに何とかギルドに辿り着いた。何度か迷いかけたと言うか、ルナがいなかったら間違いなく迷子になってたと思う。

 せっかくアリアさんに綺麗なお別れを言えたのに、凄く締まらないと言うか、なんか釈然としないと言うか。全部私の方向音痴のせいだけど。


「口下手もそうだけど、その方向音痴も改善した方がいいわよ?私がいるから何とかなってるけど」

「が、頑張る………」


 と言っても、具体的に方向音痴を直すってどうすればいいんだろう?こういうのって感覚的なものだと思うんだけどなぁ………なんか、口下手を直すより難しい気がしてきた。


「ほら。変なことで悩んでないで、早く冒険者カードの登録を済ましてきなさい」

「はぁい………」


 ルナに促され、私はギルドカウンターへと向かう。時間的にピークは既に過ぎていたから並んでいる人もおらず、私に気付いた受付の女性が人当たりの良い笑顔を浮かべて会釈する。


「こんにちは!ようこそ冒険者ギルドへ!今日はどのようなご用件でしょうか!」

「えっと………冒険者カードの登録をお願いします」

「かしこまりました!では、冒険者カードをお借りしますが、よろしいですか?」

「お願いします」


 私はカードを取り出して受付さんに渡す。それを受け取った受付さんは、エルリンのギルドにもあったマジックアイテムにカードを読み込ませる。

 なんだかレジみたいだなぁって心の中では思ったけど、あれでカードを読み取ってその冒険者が討伐したモンスターとか、登録してからの活動が事細かく閲覧出来るらしい。それだけ聞いたらハイテクも良いところだよね。


「魔法使い………登録が約2ヶ月前で、Dランクへのランクアップが1ヶ月前………?」


 少し待っていると、受付さんが何かぶつぶつと言っているのが聞こえた。…………あれ、まさか何かあった?悪いことをした覚えはないけど………そんな不安に駆られたとき、受付さんはこちらを見て申し訳なさそうに頭を下げる。


「すみません!少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」

「えっ!?………あ、あの………な、なにか問題でも………」

「あ、いえいえ!そう言うわけではないんです。こちらの事情ですので、ご安心ください」

「わ、分かりました………それじゃあ、待っていますね」

「ありがとうございます」


 そう言って、受付さんはカウンターの奥の方へと行ってしまう。その後ろ姿を見届けて、私はルナに声を掛ける。


「なんだろう……?」

「さぁ?でも、悪いことがあったという訳ではないんじゃないかしら。彼女の言葉を信じるならだけど」

「そっか………」


 もしかして、マジックアイテムの故障?………だったら先に別のカウンターへ案内されそうだからないかな。それどころか、空いているカウンターの受付さん達も何かあったのかとこちらをチラチラ見ているし。

 少しの居心地の悪さを感じながら待っていると、不意に背後から声を掛けられた。


「君、大丈夫かい?」

「ふぇ!?あ、その………えっと」

「立ちっぱなしはきついんじゃない?これに座って待ってなよ」


 そう言って私にどこからか椅子を持ってきてくれたのは、私よりは少し歳上くらいに見える白い髪をした青年だった。ここにいるってことは間違いなく冒険者なんだろうし、大きな剣を背負った分かりやすく前衛って感じの装備だった。

 年齢的にはルインさんとあまり変わらなそうだけど、雰囲気は全くの真逆。声は穏やかそうで、凄くフレンドリーだ。


「あ、えと………ありがとうございます。で、でもこの椅子は………」

「あぁ、あそこに並べてあるやつだよ。カウンターで待ち時間が出来る時は自由に使って良いんだ。あの様子じゃ、暫くかかりそうだしね」

「そ、そうなんですね………」


 あまり私と歳は変わらなそうだけど、ずっと先輩みたいだった。私は彼の言葉に甘えて持ってきてもらった椅子に腰かけると、それを見た彼はカウンターに寄りかかって更に話を続ける。


「僕はダインって言うんだ。君は?」

「あ、アリスです………よろしくお願いします」

「よろしく。オルムに来たのは初めてだろ?」

「そう、ですけど」


 用が終わったらすぐにどこかへ行くのかと思ってたから、更に話が続くとは思わなくて驚いていた。もしかしたら、待っている間の退屈しのぎに付き合ってくれているのかもしれない。

 椅子の事といい、気が利く人なんだなぁ………人と話す事も得意みたいだし、羨ましい。


「もしかしてだけど、登録してから短期間でランクアップしたりしてる?」

「えっ………え、っと………は、早い方だとは言われてたりしますけど………どうして分かるんですか?」

「あの受付の態度は、オルムに見どころがある冒険者が来た時のなんだ。今この街ではオルムの樹木を巡って、モンスターと激しい争いが何度も起こってるんだけどね。そのために、見込みのある冒険者にはそっちの支援に個別に依頼を出したりするんだよ」

「な、なるほど………」

「君は………あー、なんていうかな。気を悪くしないでほしいんだけど、熟練の冒険者って感じはしないからさ。高ランク冒険者か、期待の新人か。そのどちらかで考えたら、後者だと思っただけだよ」


 どこか申し訳なさそうに言うけど、私は寧ろ納得だった。自分で言うのもなんだけど、流石に自分の態度は幾つもの死線を乗り越えた冒険者のそれとは思えないと思う。


「………」


 そんなことを考えていると肩に乗っているルナが呆れたような目で私を見て来たけれど、敢えて気付いてないふりをする。こんな思考すらルナには読まれているから無駄だと分かってるけど、私にできる精一杯の抵抗だった。


「その黒猫は君の使い魔?」

「あっ、は、はい。ルナって言います」

「にゃー」

「へぇ。使い魔を連れている魔法使いは初めて見た。確かに、他の魔法使いとは違うみたいだ」

「いえいえ、そんな………え、えっと。ダインさんってランクはどれくらいなんですか?」

「ん?僕はBだよ」

「B!?」


 まだ20歳になるかならないかの若さでBランクって、私よりもずっと期待の星なんじゃ………と考えたところでダインさんは苦笑しながら首を横に振った。


「あぁいやいや。Bランクに上がったのはつい最近なんだ。確かにこの歳でのBランクはかなり早い方だけど、歴から考えると特別早いわけでもなくてね」

「し、失礼かもしれないんですけど、おいくつから冒険者を………?」

「あー………幾つだったかな。11か12くらいだと思うけど」

「じゅうい………」


 まだ子供だ。私も年齢だけで考えれば子供ではあるけど、それとはまた別枠になるくらい………幼いという言葉が似合う子供。

 今が恐らく18歳前後のように見えるから、その歳から7年近く活動していたことになる。いったいどれほど壮絶な人生だったのだろう。


「えっと………」

「すみません!お待たせいたしました!………あら?ダインさんもご一緒でしたか」


 なんて言えばいいか分からなくて言葉に詰まったとき、丁度受付さんが戻ってくる。

 そして、受付さんは私の隣にいたダインさんを見て声を掛けていた。


「やぁフェリさん。こんにちは」

「こんにちは。ダメですよ、女の子を誑かしちゃ」

「いや違うって」


 二人の会話は気さくで、お互いよく知っている相手みたい。ダインさんの返答に肩をすくめつつ、フェリさんと呼ばれた受付さんは私に視線を戻す。


「確認が取れました。アリスさんはとても優秀な魔法使いで、その実力もエルリンのギルドで高く評価されていたとのことでした」

「えっ…………えっと………ありがとうございます?」

「そこで、アリスさんにはギルドから特別な依頼をお願いしたいのですが………」


 あ、本当にダインさんが言ってた通りだ。フェリさんは一枚の紙をカウンターに置いて説明を始める。


「アリスさんには、樵の仕事場を度々襲撃してくるモンスターの群れを殲滅する部隊の一員として加わって頂きたいのです」

「せ、殲滅………?」

「はい。現在、モンスターの襲撃に対しては防衛戦を行ってなんとかしていますが、領主様からは根本的な解決を望まれていまして。そこで、ギルドとしては大規模な殲滅作戦を行う予定なんです」


 殲滅作戦ってことは………こっちからモンスターの住処に乗り込んで、そこにいるモンスターを全て駆除してしまうってこと?

 いくら襲撃に困らされているといっても、それは流石に惨いんじゃ………


「………ん?」


 そこで、私はなにかが引っ掛かった。初めてこの街の話を聞いたとき、群れを束ねるモンスターの存在について私は気になった。

 種族も違うモンスターの群れを纏める。そんなことが出来る、恐らく相当な力を持つリーダーが今まで一度も姿を現していない。そもそもリーダーとなるモンスターがいない、と言う可能性がないわけではないけど、もしも存在するとしたら………


「その………」


 言うべきだろうか。けれど、私はこの街に来たばかり。確証があるわけじゃないし、そもそも細かい事情だって知らない。

 色々なことを考えて、私は…………


「ごめんなさい………お断りさせて頂きます」

「そうですか………残念ですが、無理強いは出来ませんね。殲滅ではなく仕事場の護衛依頼も常に募集されていますので、もしよろしければそちらだけでもお願いします」

「はい、分かりました」

「登録は終わりましたので、カードはお返ししますね。それでは、またのお越しをお待ちしています!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ