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6話:国王との対談

「――スティーブン国王陛下。これから、私は自分の能力(スキル)について話をします。ですが、能力(スキル)については他言無用でお願いできますか?」


 目の前の少年――ルーカス様に向けていた視線を奥にいる国王へと移し、俺は少し強めの口調で話を始める。


 ここまでの会話で国王の為人は把握出来たし、このくらいの口調は気に留めることもなく話を進めてくれるだろう。


「それは、ルーカスとのパーティを組んでくれるということか?」


「いえ、それを決めるのはルーカス様自身ですので。しかし、少なくとも私はルーカス様の能力(スキル)を聞いてパーティを組ませて頂きたいと思いました」


「うむ、そうか。それではその点も含め、其方には色々と話をしてもらおう。ルーカスも、それで良いか?」


「は、はい!」


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


 あれから数分後、俺と国王とルーカス様は別室に移動し、三人だけの会談が始まった。


「先ず本題に入らせて頂く前に、幾つかお尋ねしたいことがあります。一つ目は、ルーカス様ご自身に私とパーティを組みたいという意思があるかどうか。この時点でそのお気持ちがないのであれば、この先の話には進めません」


「うむ、道理だな。――ルーカスよ。お前はこれからパーティを組むつもりはあるか?」


 やはり、少し会話の主導権を握ったくらいではこの国王は気に留めない。これが独裁者のような王なら、俺はこの時点で爪弾きにされているだろう。


「い、いえ! こんな僕と組んでくれる人なんていないですし、アルフェイル……さん? はとっても強くて良い人です! 断るなんて――!」


「――だ、そうだ。これで第一の問題は解決だな」


 ルーカス様の少し食い気味な答えを受け、先ずは本題に入る条件が整った。しかし、それでも「じゃあコンビを組みましょう」とはならない。相手は国王のご子息であり、冒険者という職業は命を落とす可能性も高い。周りよりは強いと言えGランクの俺には、もっと詰めなければいけないものがある。


「それでは、お約束通り私の能力(スキル)についてお話します。ですが先程も申し上げました通り、ご内密にお願いします」


「分かった。其方にも事情があるのだろうし、それで其方が困ると言うのであれば私からは他言には必要も無い。その約束は王の名に於いてしっかりと守らせてもらおう」


 流石は国王陛下。この手の話にも即座に対応し、これほどまでの信頼が出来る人はそういるものでは無い。勿論俺が肩書きに流されていることもあるのだろうが、それもそれでこの人ならではだ。そもそも国王になれたのも、この真っ直ぐな性格あってこそだろう。

 しかし、問題はその後だ。神託(オラクル)まで話すべきか、だとしたら神の使徒ということまでも話さなければいけないのか。

 しかし、それでは変に立場がおかしくなってしまうこともある。神と自由に対談出来るなど誰もが求めるものだろうし、それが出来たならこの世界を自由に変えることも出来得る。

 そんな人間を野放しにしておくなど、俺が国王なら絶対に出来ないな。


「それでは、お話させて頂きます。先ず、私の授かった能力(スキル)は二つ。普通能力(ノーマルスキル)懐柔(テイム)(超級)と、固有能力(ユニークスキル)努力結実(エフォート)(戦闘)。その二つです。因みに努力結実(エフォート)(戦闘)は、当人の努力に見合った成果を必ず与えられるもの。まぁ、戦闘事だけに限られますが」


「超級と、ユニーク……これはまた、面白い能力(スキル)の授かり方をしたのだな。ルーカスの話を聞いて大剣操作と懐柔(テイム)、火炎適性があるのかと思っていたが……予想が当たった懐柔(テイム)は上限無しの超級。それに加え、其方は一切の戦闘能力(コンバットスキル)を必要としないユニーク持ちであったか」


 やはり、超級とユニークを持ち合わせるのは珍しいのだろう。その点、ルーカス様はさぞ驚かれたのだろうな。あの能力(スキル)には、俺でも少し驚いた。


「――だが、其方は本当にルーカスと組んで良いのか? 其方の今の実力なら、これから先もっと腕を磨きランクを上げれば名のある有名パーティのメンバーにもなれるだろう」


「確かにそうかもしれません。ですが、私はあまりこの能力(スキル)を口外したくないのです。その点、国王陛下ならば確実に信用出来ますし、今のところ戦闘力では困っていません。それに、陛下が仰られた錬金術と鑑定の組み合わせには魅力を感じます」


「――なるほど。その歳でも其方は色々と考えられるようだな。それに国王である私にもしっかりと自分の意見を述べてくれる。これは私と大人として、他人行儀な態度は改めるとしようか」


 まぁ、これでも生前と合わせれば三十過ぎの……オッサンじゃねぇか! は!? え!? 俺ってオッサンだったのか!?

 嘘だろ。精神年齢的にはもう三十歳になるのかよ……ちょっとショックだな。

 もうこれからは自分の精神年齢を数えるのは止めよう。これは本当に辛くなってくる。

 と、そんなことはさておき。他人行儀? いやまぁ確かに国王という役職があるからには、それなりの態度をとっているというのも頷けるが……


「では改めて――コホン。アルフェイルくん、うちのルーカスを頼んだぞ! 君には期待している!」


 そう言うと、国王はガハハハハと大口を開けて笑う。そんな国王の陽気な態度を見て、俺が思ったことは一つ。


 そっちのタイプだったのかぁ……!


 もう今回ばかりはそれに尽きる。

 国王などのお偉いさんのタイプは大きくわけて二つ。厳格か陽気か。グレイス王国の国王は、どうやら陽気なタイプだったようだな。

 まぁ、そっちの方が俺としてはやりやすいからいいが。


「それは、私に気を許してくれたということですか? 少なからず認めてくれたと、そう受けとっても?」


「がっはっはっはっはっ! 認めるも何も、ルーカスを助けてくれた時から感謝と敬意しか無いわ! GランクかFランク冒険者しか集まらないあの森に、まさかDランクの魔物を倒せるものがいたとはな!」


 実に陽気な国王だな。ルーカス様も苦笑いじゃないか。可愛い顔が引きつってるよ……

 まぁでも、確かにあの日あの森に俺がいたのは僥倖と言わざるを得ない。低ランク冒険者しか来ないあの森では、オークが一番高ランクらしいしな。


「真面目な話、君がいなければ今頃こんな陽気な私はいない。君がルーカスを救ってくれたことは、本当に心の底から感謝している。その証に、私は出来る限りの謝礼を贈ろう」


 一国の王である前に、本当に子ども想いの良い父親だ。国王が出来る限りの謝礼などと言ったら、それこそこの世の誰よりも壮大なことが出来るだろう。まぁ、ティフォには叶わないんだろうけど……

 でもまぁ、ティフォをこの世界に干渉させ過ぎるのはあまり面白くない。今欲しいものは、こっちで国王に頼んでみよう。


「単刀直入に訊こう。この国のトップである私に、君は何を望む? 金銭面での援助も出来るし、冒険者ランクの引き上げも掛け合える。どうだ?」


「今のところ金銭面には困っていませんし、冒険者としては一からルーカス様と歩み始めたいと思っていますので、その二つは遠慮しておきます」


「――ほう、なるほど。確かに冒険者ランクを引き上げたところで、高ランクのクエストにはルーカスが行けないな。まさかこの私よりもルーカスの事を配慮しているとは。財も地位も望まぬとしたら、他に何を望む?」


 まぁ、本音を言えば最初のうちはルーカス様とまったりしてたいからなんだけど……

 ここでそんなこと言って俺の性癖とかでパーティ取り消されたら嫌だし、黙っておこう。まぁ知られても知られなくても、俺には国王の子どもに手を出す勇気なんてないけど。


 と言うか、まったり普通に冒険者生活をしたい俺にとってはあんまり望むこともないんだよな。でもここで何も無いなんて言ったらそれはそれで勿体ないし、と言うか国王様のご厚意を無下にも出来ない。


「では、(ツテ)をお願いしてもよろしいですか?」


「――伝、とな?」


「はい。こっちの王都へは最近来たばかりで、知り合いなど一人もいません。ですが私も高位の冒険者を目指すと父と約束して来たので、そこに至るに必要な武器や防具などのことで思い悩む節があります」


 まぁ、簡単に言うと良い鍛冶屋を紹介してくれと言うことだ。国王ともなれば腕利きの職人との関わりもあるだろうし、これからは店にある物を買うのではなく自分に合う物を作ってもらいたい。


「なるほど。己が高みを目指すために、先ずは地盤を作ろうと。分かった。私が贔屓にしている国一番の鍛冶師を紹介しよう。鍛冶屋以外にも、私が贔屓にしている店には紹介状を用意しよう。必要になった時にそれを持って行くが良い」


「本当ですか! ありがとうございます、国王陛下」


「いやいや、息子の命と比べれば安いものだ。これからも、何か困ったことがあれば私を頼ると良い。出来る限り力になろう」


 そんな寛大な国王との交渉を経て、俺は地盤の確保に成功した。


 ルーカス様との出会いのことも兼ねて、後で本当にティフォと話をしに行こう。

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