トワ
――― 中居りりかSIDE ―――
巨大な湖に、黒っぽいローブを着た金髪の美少年と、弱ってうずくまっているネッシーが相対する。
「…………メルサヴィア」
ネッシーにそっと手を当てると、主従契約、つまりはカード化の呪文を、その子は小さく呟いた。
パアアッ………とネッシーはほのかな光に包まれ、光が収まる頃にはそこにネッシーの姿はなく。
ひらりと、一枚のカードが宙を舞い、スッと湖の水面に着水した。
「『Loch Monster』 ………湖の怪物、ってところかな?」
いいのが手に入ったな、とまるで子供のように無邪気に笑いながら、その子はカードを拾うと、ポケットに閉まった。
「「「………………」」」
私、めーちゃん、理緒の3人は、驚きでずーっと固まっていた。
………だけど。
「………あ」
何気なく自分の身体を見て、気づいた。
私に抱きかかえられていためーちゃんも気づいたらしく、ぼっと顔を赤くさせる。
そうだ……私、ハダカだった!!
「「きゃ、きゃあああああ!!!」」
「へ………?」
少年はぽかんとしていたが、ぶっちゃけそれどころじゃない!!
私たちは自分の身体をかき抱くと、ざぶんと湖の中に入った。
「痴漢馬鹿エッチあっちいけ――――!!!」
「あ、ああー…………」
ようやく合点がいったみたいで、少年はぽりぽり自分の頬を掻くと、恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「ぐ…………」
そ、そんなかわいい顔してもダメなんだからね!!
そりゃあ、あのネッシーから助けてくれたのは感謝してるけど!!
それでも私たちの裸を見たことには変わりない!!
……ちくしょー。子供とはいえ異性に裸を見られるのがこんなに恥ずかしいとは。
驚きだよもう。
見よ! めーちゃんなんて羞恥で顔真っ赤! 何も言えなくなってるよ!
「り、りりちゃん! めーちゃん!」
「あ、理緒――!」
1人あのネッシーの攻撃で飛ばされた時に、幸運にも荷物に1番近いところにいた理緒が、私たちの服を持って岸辺で手を振っている。
私たちはこれ幸いと湖に体を沈めたまま、ゆっくりと服のある岸辺に行った。
そして。
「………………ふぅ」
あー、どうにかこうにか制服は着れた。
律儀にさっきいた湖の所から離れていない謎の美少年を確認すると、
「こらそこのボクー! ちょっとこっちに来なさい!!」
「………………」
私の声に、渋々こちらに来た。
そして今度は私とめーちゃん、理緒の3人が、この美少年と相対する。
「ボク、名前は?」
腕を組んでいた理緒がまず口火を切る。
「……トワだけど」
「そう、トワくんね」
「ごめん。見るつもりはなかったんだ」
私たちが何か言う前に、トワくんはそう言って謝った。
「そうだ……! お詫びと言ってはなんだけど……これあげるよ」
そう笑いながら、ポケットからカードの束を取り出すと、そこから3枚のカードを取りだし、私たちに渡した。
「え………」
なんだろう? 少し呆然としながら私たちは素直にカードをもらった。
私は自分のカードを見ると、そこにはモンスターとかではなく、よくわからない模様が書いてあった。
「カードの実体化の方法は知ってる?」
「え………うん」
「ならいいね」
ソルパ、だっけ。実体化の呪文。
「え……と………何、これ?」
めーちゃんが首を傾げながら聞いた。
「『ソーサラー・アミュレット』」
「「「………?」」」
よくわからない横文字に、そろって首を傾げる私たち。
「魔法使いのお守り、と言った方が分かりやすいかな?」
……あー、なるほど。ニュアンスはわかった。
「珍しいから手に入れたんだけど、よくよく考えたら僕には使えないからね。あげる。だけど、とても役に立つ物だと思うよ?」
「何に?」
今度は私が聞いたが、少年はその時ふと月を見上げて「おっと……!」と焦ったような声をだした。
「もうこんな時間か………ごめん、いかなくちゃ」
「へ………ちょま………」
「じゃあね!」
「あ………」
止める暇もなく、少年は音も立てず、夜闇にすっと消えて行った。
……どんどん出てくるニューキャラクター!
けど、トワは今は覚える必要ありませんから!