寒い………
――― 筆記者 西村桃子教師 ―――
『第1班、A組陣地近くの森で野営開始
第2〜6班、城へ一時帰還
第7班、城を警護
第8班、未だ城の地下倉庫を探索中
………以上、4月30日夕刻時点までの、各班の動向』
――― 筆記者 異世界『サラマディウム』、管理塔責任者、松岡 ―――
4月30日正午より、荒田学園の生徒たちが擬似的な篭城戦を開始する。
A、B組(両戦術科)、小規模戦闘。及びA組陣地間際でB組の小規模グループが野営開始
C組(魔術科)、自陣地モンスターとの大規模戦闘、及び自軍本拠地の守備を強化
D組(魔術科)、C,E組陣地で、D組の小規模グループが野営開始
E組(補助科)、各クラスの陣地へ諜報部員を送る
………以上、4月30日夕刻時点までの、各クラスの動向
***
「ぶえっくしゅ!! …………あー寒い」
「なんでこんなに寒いんっスかぁ?」
洋太が特大のくしゃみをし、龍二が荷物を抱えて少しでも暖を取ろうと、ひたすら丸まっている。
「………知るか」
俺は周囲を警戒しながら、そう生返事をした。
無駄に広大で真っ暗な地下倉庫だったが、夜になったのが原因だろうか?
今は唯一周囲を照らしていたホタルのような光も消え、本当に真っ暗になっている。
結果、1歩も動けなくなった俺たちは、しょうがないからということで野営を開始することにしたのだが………
「寒い………寒いよぉ〜!」
とっちゃ〜、ばっちゃ〜、と何やらテンパった時の洋太みたいな声を出す中居りりか。
………お前ら、精神レベルが同じなんじゃないか?
「てかお前ら、口を動かす暇があったら身体を動かせ」
そしたら多少は温くなるぞ?
俺と沼田は、こいつらがブルブル震えている内に、せっせと薪を拾い、食えそうな物(俺調べのキノコとか果物)を集めていた。
「「「寒いから嫌!!」」」
「………あっそ」
まぁいい。どうせいてもあんまり役に立たないだろうから。
………そして、約10分後。
「よっしゃ完了」
俺はキャンプファイヤーの用に、沼田が拾ってきた木々を組み上げた。
「洋太」
「………了解」
ひたすら手をこすり合わせながらも、洋太は木々の所までちょこちょこと移動し、『ヴィガムディセルミア〜……』とフレアを唱えた。
ぼっ………
……………………
「………あれ?」
拾ってきた木の葉と木に一定時間、ガスバーナーぐらいの大きさの火を当てたのだが。
………なぜかさっぱり火がつかなかった。
「なんで?」
「………さぁ?」
洋太の呟きに、龍二も頭をかしげる。
「しけってるのかな?」
服の上にタオルを巻いた中居が、ちょこちょこ移動しながら集めてきた木に触る。
「……それにしても、ウンともスンともいわなかったぞ?」
洋太が困惑気味にそう言った。
「…………あ〜」
俺は頭に手を当てると、ふと子供の頃のことを思い出した。
……そうだそうだ。そうだった。
「なんだ?」
「異世界の動植物は魔力を多量に含んでいて、俺たちの世界の物より数段頑丈なことがある」
「「「え………」」」
洋太たちの声が重なる。
「つまり」
ぴっと拾ってきた木々を指差した。
「これじゃ火をつけるには不向きってことだ」
「「うあ〜!」」
洋太と中居は、本日何度目かわからないうめき声と共に、がしがしと頭をかきむしった。
「………ということは、他の木々で火がつくかどうか、試さなくちゃだめってことか?」
「そういうことだな」
……こりゃ、火にありつけるのは相当時間かかるぞ。
「………それと、なんかおかしくないっスか?」
龍二が震えて縮こまりながら、ぽつりと言った。
「夜になると途端に寒くなるっていうのは、まぁ砂漠とかもそうですからぎりぎり納得できるっス。
けど桃ちゃん言ってなかったっスか?
『防御魔法かけてるから熱いとか寒いとかあんまり感じませんよ〜』とかなんとか」
「ああ………」
そういや言ってたな、そんなことも。
「………今、思いっきり寒いんスけど?」
「………」
龍二のその言葉が、みなに嫌な予想をさせる。
………もしかして。
俺たちに防御魔法がかかってない、もしくは弱まってるのか?
「「「「「………………」」」」」
全員無言になる。
その間、どこから吹いてきたのか、さ〜っと冷たい風が通り過ぎた。
「………………」
何やら、想定外のマズイ事態になったのは間違いなかった。
うふふふふ……私の睡眠時間もここの所マズイです。言うなれば締め切り間際の漫画家みたいな?
……いや、比べたら漫画家の人に失礼ですね。とにかく今、この話の執筆以外にも、ちょっと頑張ってます。