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パニカル!  作者: タナカ
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諦めモード!



――― 今井麻衣SIDE ―――


「くっ!!」


 ドガン! と後ろから襲いかかってくる丸太をぎりぎりで避けながら、私は苦虫を噛み潰していた。


「あっはっは! さ〜あまだまだこれから! 罠はいっぱいあるからねネズミちゃ〜ん!」

「ひぃっ、ひぃっ!」


 隣には土田さんと鈴木さんの(=文芸部かしまし娘たち−中居さん)が、息も絶え絶えに走っていた。


「おわあっ!!」


 ずぼっ!


 べしゃっ!


 いきなり足元に落とし穴があったので、転んで地面に顔をつけた。


「………………」


 顔を泥だらけにしたまま、ぷるぷる震える。


「どんだけ罠しかけてんのよあのクソ女〜!!」


 こういう時何がしかの対策を立ててくれるマッキーはいない。いつのまにかはぐれていたからだ。


「あ〜も〜! どうしろっていうのよ!!」


 どうにもならないとわかっていながらも、私は叫ばずにはいられなかった。

 敵の場所がわからない上にどんどん罠が出てくるのだ。


「ヴィガムディセルミア!」


 適当にフレアを唱えるが、人型大の大きさの火球がボゥン!と音を立てて消えただけだった。


「ほんと、もうどうしろって………!!」

「後ろ!!」

「……!?」


 バッ!! 


 突然聞こえた声に、私はとっさに後ろを振り向く。

 そこには特大の岩石がこちらに向かって………!!


「げ……!」


 ま、まずい………

 そう思って咄嗟に目を瞑った瞬間。


「はぁっ!!」


 ドガア!!!


 鼓膜が破けそうなほどの音とともに、目の前まで迫っていた岩石が粉々になった。


「ふぅ………大丈夫?」


 い………委員長!?

 身体を光らせホタルみたいになっている委員長を見て、私はあんぐりと口を開けた。







***







 地下の薄暗い森の中。


『……………』


 歩き疲れ、全員言葉少なになっていた時のことだった。


「うぁ〜! 疲れた〜!!」


 真っ先に中居りりかが地べたに座りこんだ。


「我慢してもう少し歩け」

「い〜や〜! 疲れた〜!!」


 ちっ、だだっ子め。


「ねぇ〜、本当にここに武器があるのかな?」


 ぐで〜んと座りながら、中居が情けない声を出した。


「そんなものはない!」

「「ええっ!!」」

「……というのは冗談だが」

「「冗談かい!!」」

「言ってみたかっただけっスね」


 そうだよ悪いか。

 と、龍二や洋太たちとぺちゃくちゃしゃべっていた時。


 こつん………


「ん………?」


 俺の足元に何か固いものが当たった気がした。

 かがんで拾ってみる。

 お…………これは


「………剣だ」

「なにぃっ!!」


 俺の声に先頭をずんずん歩いていた洋太がぐるりと振り向いた。

 よほど暇だったのだろう。すっ飛んできた。


「ほら」


 薄暗いのでよくわからないが、金の装飾がついた少し重い剣だ。

 それを洋太にぽいっと放る。


「っと投げんなよ! ………おおっ! こりゃすげー!」

「え、なになに!?」


 後ろから中居がひょいっと顔を出す。


「へぇ〜、綺麗な模様がかいてある〜」


 薄暗い中でぼんやりと、火のような形の紋章が見えた。

 そこそこ由来のありそうないい剣に見える………が。


「………だが」


 影で盗み見ていた沼田が、ぼそっと言った。


「これ……結構ぼろい」

「「………へ?」」


 洋太と中居がそろって間抜けな声をあげた。


「あ……確かにそうっスね」


 龍二が剣の刃の部分に指をそえながら言った。


「刃がボロボロで使い物にならないみたいっス。これじゃ切れないっスよ」

「うそぉ?」


 洋太が試しに近くの木に向かって剣を刺そうとしてみるが………


 ガリッ!


「………………」


 およそ剣とは思えないような、ノコギリで切りつけたかのような音が聞こえた。


「ぼろっ!!」


 洋太がおがぁ〜! と情けない声をあげた。


「これじゃ使えねぇじゃねーかあー!!」


 ………骨折り損のくたびれもうけだな。


「………イラネ」


 ぽいっと洋太が剣をそこら辺に放る。


「あ、んじゃ、俺が持っとくぞ」


 委員長にあげてから剣なしだしな。

 ないよりマシだろう。 


「………………それより、かなり歩いたのは事実だ」


 委員長がいなくなってすっかり無口になってしまった田沼が言った。


「……歩き出してからほぼ1時間が経過している。距離的に、下手したら他の組の領地に入っていてもおかしくない」

「………とにかく、今いる場所がわからないってのはネックっスよねぇ?」

『………………』


 田沼と龍二の言葉に、全員、沈黙。


「引き返すか」

「「「「異議な〜し」」」」


 ……と、全員に諦めモードが漂うのだった。


緊迫した雰囲気より、やっぱりまた〜りと行かなければ。

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