ジュラ●ックパーク?
………さて。
怪しい人間Aは縛ったし。
なんか今井の叫び声が聞こえた気がするが、まぁ死にゃしないだろう、ということで無視してよろし。
てなわけで、とりあえず桃ちゃん捜しを再開するか。
………再会するよ?
………………再会、したいなぁ。
「グルルルル………」
「……………………」
………ここはいつからジュラ●ックパークになった?
俺が行こうとしていた図書館の方から、俺と同じぐらいの身長で二足歩行の肉食恐竜がいた。
●●サウルスとか名前がついてそうなヤツ。
その恐竜はこちらを認識すると、威嚇するようにうなり声をあげた。
「………おーい、恐竜ちゃーん。俺はうまくないよ〜?」
とか言っても、恐竜に言葉が通じるわけがないのだが。
ルミナスの剣を使えばある程度抵抗できそうだが、普通に怪我はしそうだ。それはヤだ。
………あ、そうだ。
「ほらほら、これなんかどう? 丸々してて美味しそうだろ?」
俺は縛っていた怪しい人間Aを躊躇なく差しだそうとしたところで………
「なんでやねん!」
パリィンッ!
「うおっ!」
いきなり窓が割れ、そこから湊がハイキックを繰り出してきた。
俺はバックステップしてそれを避ける。
「いくら悪者相手でも、恐竜の餌にしちゃあかんやろ!!」
危なげなく着地した湊が、恐竜みたいにガオー、と俺に向かって吠える。
「……てか、なんでここにいる、湊」
しかもここ、3階だぞ?
なにゆえ3階の窓から飛んでくる。
……まあ、ウィンド使って飛んできたんだろうけど。
「ふっ、ウチのつっこみセンサーをなめたらあかんで! ウチは半径3km以内のボケに反応できるんや!」
「………んで、ほんとのところは?」
「忘れ物取りに来たんやけど……」
お前もかい。
「なんや、大変なことになっとるみたいやなぁ」
「ガアアアアアア!」
あ。
湊とぐだぐだやってるウチに、恐竜がしびれ切らして襲いかかってきた。
「おっと!」
湊は背中からスキュアの杖を取り出した。
「ヴィガム、ディセルミア!」
ゴオッ!
バレーボールぐらいの大きさの炎が放たれる。
「ギャインッ!」
恐竜は犬みたいな声を出しながら、火に包まれた。
「悪いけど、眠ってえな」
湊は恐竜に杖を向けると、
「クロワシリエ、モンティコル」
恐竜を囲むようにして、結界を作った。
………10秒もかからなかった。
ほぼ一瞬で、恐竜は牢獄の中で火だるまになった。
「ギイヤアアアアア!」
逃げ場を失った恐竜は、そのまま断末魔の叫びをあげる。
真っ暗な廊下の中で、ただ苦しむ恐竜の姿だけが火でライトアップされた。
「………当然やけど、あんまりええ眺めやないな」
「やらなきゃやられるんだから、しゃーないだろ」
俺は火に包まれ絶命していく恐竜を、冷めた目で見下ろした。
「………あかん」
湊は杖を出すと、それを無造作に横に降る。
すると自らが出した結界と炎が、かき消えた。
「………キ………ィ………」
ほぼ力のなくなった恐竜が、その場に残った。
「アホだな。敵に情けなんかかけるなよ」
「………うん。わかっとる。わかっとるんやけど」
湊は恐竜を諦めたような目で見下ろす。
「………どうしようもないねん。それだけは」
「………………あっそ」
甘いヤツだ。
だが………正直、この結果は予想できていた。
湊はなぜか知らないが、誰かが死ぬのを極端に嫌う性格だからだ。
「んで、一体何なん? この事態」
「知らん」
「………まーやんもわからんの?」
仕方なかろう。校舎入ったらいきなりこのバカにつけられたんだぞ。
………あ、そうだ。
「………こいつに聞くか」
俺はにやりと笑いながら、隅の方で縛られて気絶している怪しい人間Aを見た。
「あー………あんまりひどいこと、せんといてやりーな」
「へいへい」
俺は湊のその言葉に、生返事を返した。
「………なるほど? 学校襲撃ね」
およそ5分後。
「ひっ、ひいいいいい!」
そこには怯える怪しい人間Aと、
「………どこぞのヤクザかいな、まーやんは」
俺の拷問の様子を見て、呆れ眼の湊がいた。
「こうでもしなきゃ、はかないだろ?」
「………ノーコメント」
何をしたかは、ご想像にお任せする。
下手したら年齢制限つきそうだからな。
「狙いはこの学園のメインコンピューターかいな。まったく、んなとこ狙うて何するつもりかいな」
この怪しい人間Aはどうやら雇われの暗殺者らしく、詳しい事情は知らなかった。
「………とにかく、そうなると1番危険なのは図書室じゃなくて……」
「管理室やな」
「……ああ。そうと決まれば、さっさと行くぞ」
ゴスッ!
「うっ!」
俺はまた怪しい人間Aを気絶させると、管理室に向かって走り出した。
そろそろ、パニカル連載2ヶ月記念日です。
早いものですね。
………ホワイトデー? なんですかそれは。www