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パニカル!  作者: タナカ
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桃ちゃん流、侵入者撃退方





――― 西村桃子 SIDE ―――



 パァンッ!


「………くっ」


 激しい音と共に、私の小刀の1つ「いっちゃん」が天に舞い上がった。

 あの男に向かって剣を振り上げた瞬間、 私が炎を出すより速く、剣を跳ね上げられたのだ。


「くくく………どうした? その程度か?」

「まだまだ」


 私は努めて動揺を悟られないように笑いながらも、心では苦虫をかみつぶしていた。

 ……………失敗。この人、意外に強い。

 剣を跳ね上げられた瞬間が、情けないことにわからなかったのだ。

 ………速さだけなら、私より数段上だ。

 私はじんじんする自分の手を押さえた。

 それに………


「桃ちゃん!」

「大丈夫ですよ〜!」


 ………宮松さんを守りながら戦う、さらにこの部屋をなるたけ壊さないように戦う、というハンデがこちらにはある。

 ………明らかに、ハンデありすぎですね。

 

「………痛いですねぇ」 


 ………決めた。

 私は覚悟を決めると、腰からもう1本の愛刀を取り出した。

 無詠唱で雷を出してくれる宝剣、「ぬっちゃん」だ。


「ハッ!」

 

 侵入者が裂帛(れっぱく)の気合いと共に襲いかかってくる。


「くっ!」


 ギィン!


 私はそれをどうにか剣で受け止める。

 そして、にやりと笑った。 


「………いいこと教えてあげましょう」

 

 ビリィッ!

 

「………!」


 私が力を込め、同時に剣から放電すると、侵入者も後ろに飛ぶ。


「私はですねぇ」


 その瞬間、バッとぬっちゃんを頭上に掲げた。


「まともに戦うのは大嫌いなのですよ!」

「……!」


 侵入者が再びこちらに攻撃してくるよりも数瞬早く。

 私は頭上に雷を放出させた。













 突然、ドゴオオオオンッ! という雷のような音が聞こえた。


「ひゃっ!」


 と耳を押さえながら湊がその場にうずくまった。


「どうした? 怖いのか腰抜けめ」

「少しはウチを慰めようとか思えんのかまーやんは!」


 湊がしゃがんだ状態から怒鳴り立ててくる。


「何でそんな一銭にもならんようなことをせにゃならん?」

「……そやな。まーやんはそうやった」

 

 何か諦めたっぽい表情でぶつぶつ呟く湊。

 ………てかそれより、だ。


「桃ちゃん?」 


 音のした方は南校舎、つまりは管理室のある方からだった。

 桃ちゃんに何かあったのか………そう思ったときに。


 ブーッ! ブーッ! ブーッ!


「「……………は?」」 


 突然、警報音が鳴り響く。

 不意を突かれた俺たちは、そろって間抜けた声を出した。

 その間にも、暗闇の廊下でひたすら警報音が鳴る。


「………急ぐか」

「ちょ、まーやん!?」


 湊の制止も聞かずに、俺は一足飛びで階段を駆け下りる、というか飛び降りる。

 そして1階につく直前。


「っと! そこどけ!」

「はいっ!」


 なぜか下に人がいたので、必死で叫ぶが………


「むぎゅ!」


 ……結局、踏みつぶしてしまった。

 ………しまった。


「えーと。ドンマイ?」

「何がドンマイかぁっ!」 


 ルミナスの剣で身体強化でもしていたのか、割と元気な声が俺の下から這い出た。


「って? 魔ー!?」

「お。今井か」


 そうして顔を見合わせているとき、ばたばたと騒がしい足音と共に、2階の方から大声が聞こえた。


「ちょっとちょっと! 一体何が………って、あ! まいまい!」


 湊は嬉しそうに叫ぶと、そのまま渡り廊下に向かって飛び降りた。

 そして喜色満面で今井に駆け寄る。


「よかったー! 無事やったかー! そっちはアラレが言ったから大丈夫や思っとったんやけど! 無事でなによりや!」

「アラレ?」


 俺が聞き返すと、廊下の角からひょっこりと(ひょう)が出てきた。


「湊………そのあだ名は止めてと言ってるのに」

「アラレって雹のことかい!」


 俺のつっこみが思いっきり入った。


「てかなんでアラレだ!?」

「え………だって雹やし」 


 ………(あられ)と雹は別物だぞおい。

 相変わらず、よくわからんセンスだ。


「ソレヨリ………ゴ主人?」


 いつぞやのガーゴイルが雹の肩に止まった。


「………なぜお前がここにいる?」

「ケケケ、ゴ主人ハ優シイカラナ。コウシテ度々外ニ出シテモラッテンノサ。………ソレヨリ」


 甲高い声でそういうと、ガーゴイルは雷の音のした方を見た。

 あ………危ない危ない。うっかり桃ちゃんのこと忘れてた。

 急がなければ。


「………そうだったね。急ごう」


 雹がそう言った直後、俺たちは桃ちゃんのいる管理室へと走った。













 ………が、心配すべきは桃ちゃんではなかった。


「うおい! 桃ちゃ〜ん!」


 焦げ臭い匂いの漂う管理室。

 そこで監視員の宮松が泣きそうな声を出していた。


「警報機を作動させるために、何も部屋で雷撃使うことねーじゃねーですかあああああ!」

 

 宮松は魂の叫びをあげた。

 ………あーあ。部屋こげこげ。


「う〜ん………敵さんを追っ払うためのちょっとした脅しのつもりだったんですが………やりすぎちゃったみたいですね」


 てへ、と軽く舌を出す桃ちゃん。


「まあいいじゃないですか。メインコンピューターは無事ですし、結果的に侵入者さんはびびって逃げちゃいましたし」

「これ直すのどれだけの金と時間がかかると思ってるんだよおおお〜!」  


 涙と鼻水垂れ流す40歳後半の中年オヤジ。


「ふぁいとですよ〜!」

「うおおお〜ん!」


 桃ちゃんの声援を受け、宮松が泣き叫ぶ。

 ………なんていうか、突っ込みにくい状況だった。





くくく………………まだまだ。魔ーたちの不幸は続く。

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