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パニカル!  作者: タナカ
25/98

図書館






 荒田学園の図書室は、普通の図書室ではない。

 一般の書物などほとんど存在せず、魔法に関する書物だけが山ほどある。

 しかもすぐ近くにある荒田大学の大学図書館も兼ねているため、規模もでかい。

 その外見は、ぱっと見、1階建ての普通の公共施設みたいにみえる。

 だが中に入ってみると、まず真ん中にある地下3階まで続く巨大な吹きぬけに驚く。

 そしてミミズみたいな文字が書いてあるボロボロの本から最新の本まで、魔法に関する本の蔵書数の多さに度肝を抜かれる。


 まぁ、そんな感じの大きな図書館であるので、普段なら荒田学園の生徒だけでなく一般の人たちも多数ここに足を運ぶ。

 ゆえにいつもそこそこ人がいる場所なのだが………

 午前9時。

 本来なら開館の時間であるにもかかわらず、この図書館には誰も、司書の人ですら見当たらなかった。


「わあっ!」


 湊がふざけて大声をあげる。

 するとわあっ、わあっ、わあっ………とこだまが寂しく聞こえてきた。


「………不気味ね」


 どうやら俺たちと同じく、くじの結果ここにいるらしい八巻枝理がそう声をもらした。


「ほ、本当に誰もいないみたいだよ!」


 周囲をせわしなく歩き回っていた坊主委員長がそう言った。

 ちなみにこの図書館にいるのは、俺を含めたこの4人で全員らしい。


「ははは! すっごい! 軽く独裁者の気分だよ―――!」


 1人はしゃぎながら危ないことを言う湊。

 俺も周囲の気配を探ってみるが、本当に人の気配がなかった。

 唯一外からざわめきが聞こえてくるが、あれは恐らくB組かD組の生徒のどちらかだろう。

 ガガッ

 突然スピーカーからノイズが聞こえる。

 ピンポンパンポーン!

 ほぼ無人の図書館にチャイムの音が響いた。


「やってきました異世界空間!」


 いきなり桃ちゃんの声が大音量で響いた。

 ………異世界空間?


「みなさんこんにちは〜! B組担任の西村桃子と!」

「D組担任、伊達健児です」


 桃ちゃんの元気な声と、D組担任、若干ナルシストが入ってる男性教師、伊達健児の声が聞こえた。


「みなさんくじを引いて、書かれた場所に行きましたか〜?」


 外からB組連中の「は〜い!」とノリのいい声が聞こえる。


「は〜い!」


 湊まで返事した。ぶっちゃけうるさい。


「よろしい! では! みなさんにこの状況を説明します!

 最初に説明しましたが、ここは異世界空間です!

 この前は中世の闘技場でしたが、今回は普段の学校を模した空間です!

 言うなれば異世界学園!

 B組、及びD組の生徒のみなさんのみ、玄関に入った瞬間に、この空間に移動するようにしておきました!

 ゆえに、今この異世界学園にいるのはあなたたちと、私と、伊達先生のみです!」


 委員長や八巻は目を白黒させている。

 湊だけは「すげー!」と妙にハイテンションだったが。

 ………へー。ここが異世界ね。

 ああ。今朝下駄箱で感じた違和感の正体は、コレか。


「それでは、皆さんにこれから始まる授業の内容をお知らせしましょう」

 桃ちゃんの声からハスキーな伊達教師の声に代わった。

 ………ちっ。


「今一緒の場にいる人が、1グループだと思ってください。

 そして恐らく皆さんは魔術科D組の生徒と、戦術科B組の生徒と混合でいることでしょう。

 まずは今から2時間。午前11時になるまでに、違う科の人たちと情報交換のようなことをしてください」


 情報交換?

 なんの?


「互いに今まで学んできたことはまるで違います。

 ですから互いの知識を交換し合い、そうすることで互いを高めあうのです。

 それこそが青春! それこそが美!」


 なんかトリップしだした伊達教師。


「ああ………青春って美しい………!」


 ………だめだこりゃ。


「えー、伊達先生が陶酔モードに入っちゃったので、説明を引き継ぎますと〜!」


 再び桃ちゃんの声が聞こえる

 よっしゃ!


「まぁ伊達先生が言ったように、11時までは一緒にいる人と自由に訓練をしてください。

 そして11時から休憩を1時間挟んで12時より………

 皆さんに戦争をしてもらいます!」


 …………………何そのバトルロワイヤル?


「後であなた方にはフラグのようなものを渡します。

 それがあなた方の大将のようなものだと思ってください。

 1時までにより多くの大将を破壊し、自分の大将を守りきった人を優勝者とします!

 そして優勝者の方には………もれなく!」


 言葉に力が入る桃ちゃん。


「図書券3千円分と!」

『微妙にいらね―――!』


 外の生徒たちとそばの湊から聞こえるいらねーコール。


「この前先生が偶然当てちゃった、学食1年間食べ放題チケットをプレゼント!」

『なにいいいいいい!』


 ………なんだつまらん。

 俺はいつも弁当を寮の管理人、野原さんに作ってもらっているため、学食は利用したことがない。

 それは八巻も同じらしく、肩透かしをくらったようにつまらなそうな顔をしていた。

 ………が、湊や委員長など学食を利用している生徒たちにはたまらないものらしい。

 特に委員長などは「食べ放題………食費が浮く!」と珍しく目の色を変えていた。

 ………委員長。結構家計が苦しいらしいからな。


「なお! ここは魔法空間なので何をやったり壊したりしてもいいのですが!

 戦争の時間まではなるべくおとなしくして! 今いるところから出ないようにしてくださいねー!

 先生からは以上です! 

 では!」


 ひときわ大きな桃ちゃんの声が響き渡った。


「頑張ってくださいね〜!」


 そしてぴんぽんばんぽーん、と気の抜けたチャイムで終わるのだった。

  





………迷走してる気がしなくもないです。

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