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当時、421号線は工事中だったらしい(2004年くらい?)

 これは橋に続く道だ、とすぐにわかった。そして赤い橋が見えて心底安堵した。老人と子供がまだいる。戻ってきたコチラを見てどんなふうに思っているのだろうなと気まずいままに素通りする。

 ……今更になってふと気になった。ライトで照らし出されてようやく二人が立っていることに気づいた記憶なのだけれど、懐中電灯とは言わずともライトくらい持っていたよな……? そもそもそんなところに長いこと立ち尽くしている目的は何なのだろうとは思うが、虫でも採取していたのだろうか。そう思うことにする、そうしよう。

 来る時はなんだかんだ一本道だったはずが、戻るとなると結構な数の合流や分岐があって、あの集落に辿り着ける気がしなかった。だから、オレンジ色の街灯が規則的に並んでいるのが遠くに見えたので、そちらに舵を切る。とにかく明るいところに向かいたいという一心だった。ところがなかなか近づけない。もしかすると川を挟んでいるのかもと疑ったが、なんだかんだと煌々と灯る街灯ははっきりと見えつつあるし、赤と白の防護柵が並んでいる様もわかるようになっていたので、車をとにかく進ませる。

 進めど進めど合流できない道には明かりの一つもない。にもかかわらず、そこでも何組目かの散歩中の現地民を見かけた。男性二人と、距離を置いて老夫婦。立ち止まってこちらに向けてくるのはこれまですれ違った全員に共通する胡散臭げな表情だ。いっそ素直に負けを認めて道を尋ねたら良かっただろうか、などと振り返る今は思うが、当時はそんな余裕なんてなかったはず。

 仮囲いだろうフェンスと誘導灯に導かれるように突き進んで、明らかに道じゃあなかったのだろう場所からようやく、オレンジ色の明るい光に覆われた道に到着する。歩道らしいものは無く、整備手前といった体の砂利敷の広い道路だった。

 車が通行するような気配がなかったから一旦停車。カーナビの電源を入れるとやはり、位置を測定してくれない。真っ先にやることは音量操作だと画面をいじるが、目盛は6で普通だった。なんだったんだあの大音量は。そして携帯は未だ圏外。

 タバコが吸いたい、と車を降りようとしたその瞬間ラジオが復活。車内に響く陽気な会話と笑い声にマジビビりする。いきなり意志持つ声が聞こえて驚かない人はいないと信じたい。咄嗟に消そうと指を伸ばすが、思い直してそのままにした。陽気な声に和みながら、見ればカーナビの位置表示画面が等高線のある山のど真ん中を示している。もしかして、と携帯を再確認するとそちらはまだ圏外だった。

 時刻は深夜の三時。なんだかんだと二時間くらいしか彷徨っていないのだなと、深々とため息を漏らし、さて、画面が正しいと信じて拡大操作、今更ダム方面に抜ける進路など選択できるわけもないから、八日市に戻る方向に見当をつける。この明るい道を突き進むのもありかなと悩みはしたが、だいたいにしてこんな工事中の道など通っていないのだから、遠回りでも元の道を探そうと決意。車に乗り込み暗がりに見えた二車線の道にハンドルを切った。

 一時間くらいは迷う覚悟ではあったのだけれど、あっさりと見覚えのある道にでた。この場合の「見覚え」とは、通勤に普段使っていた光景だ。あれに見えるはマッ◯スバ◯ュー八日市店ではないか。だったらすぐ先が高速道路の侵入口だ。もう懲り懲りだ。とっとと帰ろう。カーナビ設定は……もういいや。


 と、言った流れのうち、カーナビに従うままに車を走らせていたらあり得ない道に誘導されて、これ以上進めない場所に到達したから戻ろうとしたら大音量で「五キロ以上、道なりです」宣言がバグりながら連呼された。とどこかの感想欄に記載したのがその直後。書き起こしてみるとカーナビ指示をほとんど無視して自分で経路を選択しているな……さておき。

 これ以降しばらく「五キロ以上、道なりです」との言葉に手足が冷え切り体が震え始めるように成り果てていたから、カーナビは地図表示くらいにしか使えなくなった。車も二台変わりカーナビも「しばらく、道なりです」と言ってくれるようになってようやく使えるようになったくらいだ。当時を知る妻も「良かったね」と言ってくれていたから自分で思うより相当なトラウマと反応を見せていたのだろうなきっと。

 そんで近年、その妻から「……なんかアンタの話、都市伝説化してるよ」と教えられてマジか、と。例によって「死ねば良かったのに」のオチになっているようだけれど、正直、覗きに向かう気分にならず未だ確認できていない。なんだかんだとストレス障害残っているんだなと自覚できたものだから今回、思い立って書き連ねてみた次第。

 これで禊になれば良いのだけれど。

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