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稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています  作者: 水谷繭
11.過去

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11-1

「あなたは、グレース・シュルマン様ですよね……? 生きてらっしゃったのですね……!!」


 馬車の中に入るなり、ヴィンセントは感極まった顔で尋ねてきた。その目には涙が浮かんでいる。



「……グレースは処刑場で首を落とされたと、ご存知ありません?」


「存じております。けれど、私があなたを見間違うはずがありません。あなたは紛れもなくグレース様です」


 ヴィンセントは私の目を真っ直ぐ見つめて、ひどく真剣な声で言う。敬語で話しかけられるのが妙に落ち着かない。


 それに前からずっと疑問に思っていたけれど、ヴィンセントのグレースに対する態度は一体何なのだろうか。


 処刑で曖昧になっていた記憶がはっきりしてからも、ヴィンセントと会った記憶は全く思い出せない。


 一体、彼はなぜ私を気にするのだろう。



「私、あなたとどこかで会ったことがありましたっけ?」


「……あなたは覚えていないと思います。でも、私はあなたの言葉にとても救われました」


 ヴィンセントは真面目な顔でそう言った。


 彼に何か言葉をかけたことがあっただろうかと記憶を辿るが、全く思い出せなかった。


「一体いつの話……」


 尋ねようとしたところで、ぐらりと視界が揺れる。また眩暈が襲ってきたようだ。私は口元を押さえて、吐き気に耐える。


「だ、大丈夫ですか? 体調が悪かったのでしょうか? 無理に呼び止めてしまって申し訳ありません」


 ヴィンセントはおろおろしながら、口を押さえて下を向く私を見る。


 戸惑い顔をする彼に向かって、「本当よね、呼び止めないで欲しかったわ」と言ってやりたくなったが、眩暈がひどくて口を開くことすら億劫だった。



「グレース様、よろしければうちの屋敷に来ませんか? その状態で歩くのは大変でしょう。うちの屋敷でしたらそれほど遠くない場所にありますから」


 ヴィンセントはうつむく私に向かって、心配そうな声で言う。


「結構です。少し馬車の中で休ませてもらえれば治りますから」


「けれど顔が真っ青ですよ。無理をするのはよくありません」


「大丈夫ですってば。私に構わないでください。一人で帰れますので」


「しかし、一人で外を歩くのは危険なのではないでしょうか。さっきは随分人目を気にしているように見えましたが……」


 ヴィンセントに尋ねられ、言葉に詰まった。


 確かに私は極力外を歩きたくない。けれど、この姿のままでヴィンセントの屋敷に行くのは憚られる。


 ヴィンセントは私の無言を肯定と受け取ったようだ。

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