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「ありがとうございます、ヴィンセント様! 今日は一緒に寝ていいですか?」
「ああ、もちろん。一緒に寝よう」
私が頼むと、ヴィンセントは途端に表情を緩める。ここはもう少し甘えてご機嫌を取っておこうと、ヴィンセントの腕にしがみついてお願いする。
「ヴィンセント様、寝る前に本を読んで欲しいです!」
「本? いいよ。何の本がいいかな」
ヴィンセントはそう言いながら私を抱え上げて、本棚の前に連れて行った。本棚には子供向けの絵本がずらりと並んでいる。
「絵本がたくさんありますね」
「シャーリーのために用意しておいたんだ。王都にいる間暇をしないように」
ヴィンセントはそう言って胸を張る。それから本棚から一冊の本を抜き出した。
「これなんてどうかな? この絵本の主人公、なんだかシャーリーに似ているんだ。外見だけじゃなく、色んな属性の魔法を使えるところも」
「これ……」
絵本の表紙を見た瞬間、途端になつかしさに襲われた。
はちみつ色の長い髪に、新緑色の目をした幼い少女。グレースだった時、ほんの小さな頃に読んだことのある絵本だ。
なつかしさと同時に息苦しさに襲われる。
「……別の本がいいです」
「これはいやか? それならこっちはどうかな」
私が首を横に振ると、ヴィンセントはほかにもいくつかの本を取り出した。私はその中から適当な本を選び、ベッドの上でヴィンセントに読み聞かせてもらう。けれど、ずっと心が落ち着かなかった。
幼い頃、あの絵本の少女は私の憧れだった。強くて、自由で、幸せそうで。
グレースの灰色の髪や血のように赤い目と違い、きらきら光るはちみつ色の髪と明るい黄緑色の目をしているあの絵本の中の少女が、うらやましくてたまらなかった。
……絵本の中の少女だけじゃなくて、お母様の膝の上であの本を読んでもらえるお姉様たちのことも。
「シャーリー、どうしたんだ? 眠くなっちゃったか?」
つい考え込みすぎたせいで、ヴィンセントにそう尋ねられてしまった。
「ちょっと眠くなっちゃいました」
「そうか。じゃあ続きは今度にして、今日はもう寝ようか」
ヴィンセントは優しくそう言うと、絵本をしまって私に布団をかけた。
ヴィンセントに布団をとんとん叩かれながらうとうとしていると、息苦しさが少しだけ和らいだ。




