焦燥
いつも遅くて申し訳ありません。よろしくお願いします
「カルロス殿下、準備が整いましてございます」
髭を生やしたドルミカの軍服を着た部下が跪いて恭しく報告する。ここまで沿岸の街で補給をしながら、駐留してあった軍船を伴い、隊を整えてきた。総勢100隻の船隊である。
よし、ここまで準備は万全だ。
海軍の編成も終了した。船をこぐ奴隷も前回の戦いでさらに増えている。
「うむ」
頷いた後、後ろにいるルークに声をかける。
「そなたはここで分かれるのだな。」
「はい、殿下、私はもともと船にはなれておりません。足手まといになるのはわかっております。沿岸の波の小さいところでは大丈夫ですが、アクアを横断となると。この後、陸路にてローヌ国境までまいります。
そこから、国境を越えて内部からローヌを混乱させてまいります。」
ルークが深くお辞儀をする。
「ふふ、陸と海からの攻撃だ。今はローヌの戦意もかなり低くなっているはずだ。そなたの働き、楽しみにしているぞ」
カルロスは満足そうに頷き声をかける。
「御意。ご武運を」
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冬の灰色の厚い雲が覆いかぶさるように日を遮り、そうでなくても暗い雰囲気の町並みをさらに暗くしている。
ルークは今ローヌ王国の中、国境からはかなり離れた街ブリアノンの中を馬車で走っている。
海岸線でドルミカとの戦争が始まったらしいという噂からこの町も戦場になるのかもしれないという恐怖が街の空気を重くしているようである。
ルークは街を見ながら思いにふける。
もう二度とローヌの地を踏むことはない、いや、戻ってくるときには支配者として戻ってくるだろうと思っていた。今回部下からの連絡があり、シャーロットは誘拐したのだが、やはりどうしても騎士団の取り締まりが強くなかなか彼女を連れてドルミカへの国境を越えるのが難しい、他国経由でのルートを考えたいとの提案にどうしてもそんなには待てないという気持ちが強くなってしまった。
自分がシャーロットに会うためにローヌに入国するという普段の自分なら考えないことをする気になってしまった、我ながら愚かだ、10代の時の自分のようだと自虐的にふっと笑ってしまう。
カルロス殿下が出兵され自分では船に酔ってしまうため付き添う事もできない。
今の自分には時間がある上に、殿下が海からローヌを攻撃されている間に内陸を視察しつつ場合によってはかき回すことも可能だ、そうルークは考えたのだった。
ルークはカルロス殿下の出兵を見届けた後、急ぎ馬でローヌへと兵とともに向かった。国境の少し手前の街で服装を商人のものに変え、馬車も商人用の簡素な馬車と荷馬車を連ねたものに変更し、偽造したエクアの身分証で入国できた。すでに、幾つものグループに分けて他国の商人として入国して今まで捕らえられたという報告は聞いていない。ドルミカに対しては非常に警戒されているが、全ての商人を取り締まるのは自分たちの生命線を断つに等しい。
ローヌに潜伏させていた部下からはシャーロットを連れてブリアノンまでやってきていることが報告されている。
予定よりやや遅れたがまあ仕方あるまい。侯爵令嬢を誘拐したのだ。醜聞を考えれば大っぴらには捜索できないが、ローヌ王国の騎士団は血眼で探しているはずだ。ただ、同時に戦争が海岸線で始まりそんなに人手は割けなくなると考えた通りだ。追跡を逃れてここまでうまく到着できただけでも上々と考えた方が良いだろう。
ようやくシャーロットに会える、我がものにすることができる、そうして、殿下とともにこの国を分断してドルミカのものにするのだ。
街のはずれに一軒の宿屋に馬車が止まる。ここは、長い時間をかけて買収し今や自分の配下のものたちの拠点としている宿である。外から見れば普通の宿と酒場にしか見えない。
ドアを開けると食堂であり何人かの平民の男たちが食事を取っている。
「いらっしゃい」
いかにも酒場の親父といった、腰に白いエプロンをつけた太めの男がこちらにやってくる。
「・・・」
商人の姿をしたルークは違和感に気がつく。おかしい、本来であればここの拠点には他の男を配置してあったはずだ。人を雇ったというのか。もしや・・・
ハッと気づいたルークは叫ぶ
「外へ出ろ!急げ!」
大声で部下へ声をかけつつ後ろを振り向く。
「残念だったな、気がつくのが遅かったぜ。ルーク、いやジェイド」
ドアの外には、第4騎士団のアスコットが騎士団とともに立っていた。
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