第35部
ステラとジョイが足を引き摺って時空の狭間の門の前に集まって来た。
200キロ近い巨体のハミルが向こうの方に倒れているが、四人には、ハミルを抱えて連れてくる体力はもう無い。
黒々とした時空の狭間の大扉が眼前に在った。
「この黒いのが問題なのさ」
ステラが扉に触れようとしたが「触れるんじゃないっ!」とグリシュが鋭く言う。
「この時空の狭間の扉は瘴気によって黒く汚されていて、触れる事すらできない。もし人間がこれに触れたら、たちどころに悪魔と化してしまうだろう」
グリシュは話す
「この扉にその呪いの妖剣ダイモスを触れさせて、その力を解放して欲しい」
「妖剣ダイモスの『力の解放』ってどうやりゃいいんだ?」
「俺が知るか!」とグリシュ
「使い手はお前だろうが?」
取り敢えず、クリスタルは妖剣 戦慄の剣先をその黒い扉に触れさせてみた。
「ずーん」という何か感覚があった。
今なら、この剣の力の解放というのが出来そうな気がするーーーーなんとなくだがーーーー
クリスタルは「妖剣ダイモスよ、その力を解放せよ!」と叫んでみた。
呪いの妖剣 戦慄が微光を発した
紫色の光が輝きだし、妖剣ダイモスが……時空の狭間の大扉に封じられてたおどろおどろしい瘴気を、黒い霧状にして……すごい勢いで吸収し始めた。
時空の狭間の大扉は、真っ白な白大理石の扉になった。
もう扉から妖剣に瘴気らしいものは流れなかった。
「清浄になったか」とグリシュ
ジョイが「僕が触れてみましょう」と言った。
「頼む」とグリシュ。
人狼のジョイが扉に手を振れた。「大丈夫ですね」「そうか、よかった」
四人で力いっぱいその重い石でできた大扉を押した。
扉が「ギギギギギギギ」と不気味な音を立てて開いた。
扉の中は、銀色の微かな光に満ちた空間で、他にいくつかの扉があった。
その中に、小さな女の子が座ってあくびをしていた。
「あら、お客様かしら?」とこちらを見て、素っ頓狂な声を上げた。
「女教皇猊下、ようやくお迎えに上がれました」とグリシュは、女の子の前に進み出ると、跪き、騎士として礼儀正しく挨拶をした。
「グリシュちゃん、ありがとう」と女の子もうやうやしく両方の手を広げて腰を落として貴婦人としての挨拶をした。
リユが走って来て、女の子の前に立った。
「あらら、この子、あたしにソックリね」と女の子が言った。
「初めまして、わたくしはルチアナよ」と女教皇ルチアナが可愛く微笑んだ。
「あらあら、みなさん、ボロボロね」と四人を見て、驚いた。
「ああ、向こうに倒れてる殿方も、お連れ願えるかしら」と扉の向こうに倒れているハミルを指さした。
クリスタルとジョイが行って、ハミルの巨体を引き摺って来た。
「じゃあ、いくわね♪」と女教皇ルチアナは可愛い声を上げると
呪文の詠唱を始めた。
「日の出より明るきもの 命の流れより生きる力を あらゆる者をはぐくみ成長させる 偉大なる神の御名において すべての生き物が喜んで集うここで光に誓う 我らが進みしその前途に すべての畏きものに 神が力により等しく栄える喜びを与えると」
「全回復」と女教皇ルティアナは唱えた。
五人はたちまち全回復した。
「あれ?! 俺 死んだんじゃねーの?」とハミルが寝ぼけた声をあげて目覚めた。
「じゃあ、お外へ出ましょう」とニコニコ顔のルティアナは、時空の扉から外へ出た。
「グリシュちゃん、お願いします」
「心得ました」
「移動!」
リユを含めた七人はピラミッドの前に戻っていた。
リペナの町は今日は空が晴れ渡りそよ風が吹いている。
「みなさんには直ぐお礼を差し上げたいので、このリペナ町の宿屋でしばらくお待ちください」と女教皇ルティアナは可愛い声で言うと、教会の奥へ入ってしまった。




