第34部
グリシュが金属鳥を召喚して数千匹のゴブリンを一匹残らず殺しつくした。
五人は、それから一休みするために、また寝ずの番の順番を決める話し合いを始めた。
その時、辺りに地の底より地鳴りの様な響きがあった。
「なにごとだ?」とクリスタルは辺りを見回して剣を構えた。
床が崩れ、空洞がさらに崩れて大きくなり、五人は天井も見えない地下の広大な空間に放り出されていた。
どこから来るのか分からないが僅かな光があった。
五人の目の前に、黒い石でできた荘厳な大扉があった。
「時の狭間の扉だガウ」と一度、ここに来たというジョイが叫んだ。
その扉の近くに朽ち果てた捨てられた墓石が一つあった。
「なんだ? この墓は? 前着た時こんな墓ここにあったガウ?!」とジョイ
「敵が来るぞ!!」とグリシュとクリスタルが揃って叫んだ。
グリシュは呪文の詠唱を始めた。
クリスタルが剣を構えた
ステラは、良く状況が分からなかったが、戦いを煽る踊りを踊った。
グリシュの魔力、ジョイ、ハミル、クリスタル、ステラ自身の攻撃力があがった。
ジョイは神聖防御呪文を唱えた。
あらゆるダメージが5%少なくなった。
ハミルは力を貯めた。
ジョイが「ライトニング!」と唱えた。
ジョイの身体から光が飛び、光の玉が高い位置で輝き辺りを照らした。
そこには見たことも無い20メートルはある金の王冠を被った巨大な腐り果てたゾンビが左右に巨大な禍々しい剣を持ち、五人を、腐ったゾンビの眼で見つめていた。
ゾンビ王は白く輝く息を吐いた。
五人は後ろに飛び退った。
ジョイが息を浴びてしまった。しびれて動けない。
クリスタルがジョイを抱えて、後退し、後方にジョイの身体を横たえた。
ステラが薬草を使い、ジョイの身体は、動けるようになった。
「グゴーア」とゾンビは叫ぶと、グリシュに二つの剣を振り下ろした。
それは疲れ果てている五人には悲惨な戦いであった。
ゾンビ王の巨大な剣の一撃は、戦う場所の床石が吹き飛び岩盤まで削れて大穴が開く。
クリスタルが妖剣ダイモスで一撃食らわせ、大きく損傷を与えたが、その傷はみるみる腐った肉が再生していく。
ゾンビ王はいくらダメージを与えても、すごい速さで再生して、ダメージにならない。
グリシュは「業火!」と最強の炎呪文をぶつけた。ゾンビ王の腐った肉が焼き切られて大きくえぐれたが、瞬く間に再生し、ダメージにならない。
グリシュは「業火!果てしなく!」
グリシュの身体から、際限なく業火!の呪文がゾンビ王に向かって発される。
ゾンビ王はグリシュの激しい炎呪文攻撃にさらされて、身体にどんどん最強炎呪文をうけ腐った身体に大きい損傷をうけている。
しかし、グリシュのそのすさまじい攻撃すらも、すさまじい速さで直ぐ再生してダメージにならない。
ハミルは斧を両手に持って渾身の力で攻撃したがダメージを全く与えられない。
雷の槍でついたが、全くダメージを与えられない。眼の前にゾンビ王の剣の凄まじい一撃をくらい、
「こりゃ、足手まといだわ」と叫んで僧侶のジョイのいる後ろに引っ込んでしまった。
ステラは、ゾンビ王の攻撃をひょいひょい交し「大弓」と叫ぶと、大きな弓が左手に現れた。
その弓を持って、「光の矢により! 皮の手袋よ、ゾンビ王の素早さを盗め!」と叫んだ。
ステラが光の矢を撃つごと、ゾンビ王は動きが遅くなっていった。
「器用だな、おまえ」とグリシュ
グリシュがクリスタルに指示した。
「おれが範囲焼殺炎呪文をかけるから、お前は、ゾンビ王を細かくぶつ切りにしろ!」
グリシュが呪文の詠唱を始めた。
クリスタルは、呪文を詠唱する魔法使いのグリシュを守る。
グリシュが右手で呪文詠唱を終えた合図をだした。
「よし」とクリスタルはジャンプして、大剣で、20メートルはあるゾンビ王を剣をハヤブサの様に素早く見えない速さで振り回し、ぶつ切りに切り刻んだ。
「全範囲焼殺! 焼き尽くせ!」
「全範囲焼殺! 焼き尽くせ!」
普通の魔法使いが一発と萎えたら魔力が0になるクラスの呪文を二発連続で、グリシュは唱えた。
ゾンビ王はまさに、地獄の業火に包まれて、火だるまになり、クリスタルがぶつ切りにした断片はかけらも残さず見る間に燃え尽きたーーーーように見えた。
ところが、左右のゾンビ王の足だけが残っていた。そしてゾンビ王の両足は、たちどころにゾンビ王を元の姿に戻して再生してしまった。
二人は、あんぐりを口を開けたーーこいつ、どうやったら倒せるんだ?!
戦いが長引く中で、直ぐににジョイとステラの魔法力は底を尽いてしまった。
「もってた薬も尽きてしまったワ」とステラが叫んだ。
ゾンビ王がステラとジョイを狙い巨大な剣を力任せに振り下ろした時、
ハミルがとっさにステラとジョイをかばった。
重傷を負い、その場に倒れたハミル。
すでに生きているのか死んでいるのかすら分からなかった。
グリシュはステラとジョイに
「自分が死なないことを最優先に、身を交せ。こちらのことはいい」
と指示した。
クリスタルとグリシュの悲惨な戦いは、まるまる一昼夜ぶっ通しで 続けられ、無限に再生するゾンビ王に比べ生身の人間である二人はじり貧になりボロボロになっていった。
クリスタルもグリシュももう肩で息していて、虫の息だった、が、気力だけで戦っていた。
クリスタルの皮のバッグから、ひょこんとリユが顔を出した。
「あれー冬眠モードで寝てたのに、まだ片付いてないの?」とあくびしながら、
ぴょんと飛び出てひょこひょこ歩き出した。
ゾンビ王の攻撃も、ヒョイヒョイと交すーーーーパピヨンゴブリンは弱い生き物だが天性の回避率だけは超ずばぬけている
リユは、時空の狭間の扉の横にある、うち捨てられた墓石の横に
ちょこんと座り、墓石に書かれている文字に気がついた。
「……英雄アキレス王の墓?……だれ?それ……」
クリスタルとグリシュは、そのリユの言葉を聞いて……顔を見合わせた。
「それかぁー!!」
ボロボロになったクリスタルにボロボロのグリシュが、
「俺は右行く、おまえは左頼む」「おーけー」
クリスタルは、ゾンビ王の左のアキレス腱に、妖剣ダイモスで、グサリと一撃食らわせた。
グリシュは、黄金の百合の魔具を一振りした。氷の剣がその飛跡から現れ、真っ直ぐに飛んでいき、ゾンビ王の右足のアキレス腱に氷の剣はグサリと刺さった。
「ぐわーおおーおお!!」とゾンビ王は苦し気に喚くと、たちどころに身体がボロボロに崩れて、砂になってしまった。
「やった!」
リユを胴上げした満身創痍のクリスタルとグリシュが、どや顔をした。
時空の狭間の扉に到達したのだった。




