15話 みぃちゃんと犬とツバメ
みぃちゃんが犬を追いかけている。僕はランドセルを急いで肩から外して、植え込みの中へ放り投げた。そして、みぃちゃんの後を追った。
五分間だった。みぃちゃんが犬を追って、僕がみぃちゃんを追いかけて五分経ったのだった。
ばっさっー。みぃちゃんがこけた。公園のクローバー広場で。僕は近づいて、息を激しく吐きながら、みぃちゃんの顔を覗きこんだ。
「ふへへ」
みぃちゃんはそう言って笑った。中学二年生の女の子とは思えないやんちゃぶりだ。ひきこもりとは思えないマラソン選手だ。ひきこもりなのに犬を追いかけて走り回るなんて。僕はぼっーと意味のないことを考えていた。
「あの犬、めっちゃ速いね。絶対追いつけないよ。」
「犬は速いんだよ。四本足だもん。」
「そっか。そうだよね。二倍だもんね。足。」
「ビュンッ」
と音がした。みぃちゃんの後頭部をかすめてツバメが滑空して行く。ツバメはさっきの犬の所まで飛んで行ったかと思うと、犬の頭にタッチして、再び上昇していった。
「すごい。今の見た。ツバメの方が速いんだね。二倍じゃないのに。」
「翼があるもん。二倍じゃないけど、改良型だよ。」
僕がそう言うと、みぃちゃんは感心したように、
「そっか、改良型か。技術革新だね。すごいね。発明家だね。」
「発明家って、ツバメが?」
「うーん。違うよ。神様かな。」
「神様か。そうかもね。」
そう言って、僕はみぃちゃんを見た。神様はなぜみぃちゃんをこんなにおもしろくさせたのだろう。僕はみぃちゃんが神様のお気に入りのような気がして、見えない何かに嫉妬したのだった。
「ハル君、どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ。」
僕は遠くの方へ走っていくあの犬を見ていた。
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