10話 みぃちゃんと雨とカエル
僕はあれから、雨の中をピョンピョン跳び跳ねるみぃちゃんを二階の窓から見ていた。三十分は経っただろうか。みぃちゃんはびしょ濡れになっても、ずっとカエルの真似をしている。僕はだんだん悲しくなって、涙が止まらなくなった。
やっぱりみぃちゃんを一人にはできないっ。僕はあわてて部屋を飛び出した。
「みぃちゃん!僕もカエルになるよ。」
僕は四つん這いになって、必死でけろけろ鳴いたのだ。
「けろけろけろ、けろけろけろけろ、ゲロゲログエッ。」
って感じで。
「けろけろけろ、勇者ハルよ、お主も自分の運命に目覚めたのだな。カエル王になるのだな。」
「か、カエル王?」
みぃちゃんがまた、おかしな妄想を始めた。なんだ、なんなんだカエル王って。僕はそのとき、二階から降りてきたことを激しく後悔したのだった。
僕はみぃちゃんの言葉を無視してけろけろ鳴き続けた。すると、
「カエル王になれないな。生まれてこなけりゃよかったな。悲しい悲しい人生だ。悲しい悲しいカエル王人生。毎日けろけろ鳴くだけさ。悲しい悲しいひきこも人生。悲しいな。悲しいな。」
みぃちゃんが歌っている。カエル王って、運命に目覚めてから成るわりには、悲しそうなんだな。僕はみぃちゃんと一緒にカエル王に成れなくて、それでもみぃちゃんともっと一緒に居たくて、けろけろ泣いた。
「ねぇ、みぃちゃん、カエル王は雨の中、外でけろけろ鳴いてるんだから、ひきこも人生ではないんだよ。」
僕はなんとはなしに、みぃちゃんに言ってみた。
「そうよね、でも。カエル王は雨の中にひきこもるの。雨だけが私を包んでくれるの。雨だけが私を受け止めてくれるのっ。」
大きく両手を広げたみぃちゃんは空に向かってそう叫んだ。
そしてそれからも、雨はずっと降り続けたのだった。




