第1話 秘密のイベント
『百八煩悩の会』と言うイベントが大晦日の夜にあると聞いたのは
数日前。
場所は都内某所。時間は夜半
もう12月の半ばになり、街はクリスマスムード一色の頃。
主催元は、『王様の耳』と言う。
王様の耳はロバの耳?なんとイージーな・・と木村留美子は思う。
(しかし、大晦日の夜、密かに集い会う人達って、どんな人種なのだろう?)
ふとソンな興味を持ってしまい、ネットで参加の申し込みをした。
その時点で留美子は101番目の申込者と言う。
あと残り7人で申し込みも締め切られる。
(何とも、盛況なのね。)
しかし、参加の但し書きに目がとまる。
『秘密を一つ、持参して下さい。大晦日の夜に、吐き出して楽になりましょう!』
年越しに、普段口に出来ない秘密を吐き出して、すっきりってか???
結局カウントダウンのイベントなのか?
何やら怪しげ・・・大丈夫か?とちょっと不安になる留美子。
少々心配ではあるが、常は凡々とした日常を送る独身女子である自分。
ちょっといつもと違う年の瀬を過ごすのもよいではないか
と自分に言い聞かせるのだった。
(しかし、ちょっと待てよ・・私に秘密ってあったっけ???)
会に参加するからには、他人が驚くような【秘密】を仕入れねば・・
たとえ人に聞いた話でも、自分の秘密にして公開するってのも有りよね?と
思ってしまった。
それから、【秘密】をあら探しし、ちょっとした友人の話を仕入れることに
成功した。
(これで、いよいよ大手を振って参加できるウ~)
秘密を提供してくれたのは、同僚の山本真由。
普段の彼女からは想像も出来ない秘密だった。
『留美子に聞いてもらって、すっきりした・・』
真由の晴れ晴れとした顔、しかし留美子はちょっと気分が重くなる。
秘密を受け取るって大変・・・まだ単純にそう思っていた。
そして当日、大晦日。
留美子は今年は帰省する事もしない、一人で正月を迎える決意をする。
どうせ帰っても、兄夫婦が幅を利かせ、居場所のない実家。
(今年の大晦日は面白いかも・・)と気楽に思っていた。
指定された場所は、閉店したと思われるインターネットカフェ。
入口で、黒服姿の男性にお面を渡される。
女性はオカメ、男性はひょっとこのよう。
暗めの店内には、もう数名の参加者がいた。アリの巣のように区分けされた
部屋に番号順に座る。
温かい部屋、静かなBGM,夜食と思われるおにぎり、パンも完備。
トイレ、珈琲、お茶も入用のときは、スタッフを呼べとある。
そして集合完了の時刻、午後10時になる。
一斉に、机上のパソコン画面が明るくなった。
『秘密の暴露ショー、いよいよ開幕!!』
留美子は期待に胸が高鳴るのだった。