狂人と廻る運命1
「うむ、死んだか」
アスタロトは心臓の鼓動を確かめ死んだことを確認する。
「うぬのカードは貰っていくぞ!」
そうしてわたしからデッキを弄って取る。
「さて・・・」
アスタロトはカードを取り終わるやいなや、衝撃波によって吹き飛ばされた札花に向かっていく。
アスタロトは札花を傷付けようとするが傷付けようとした途端、体の制御が効かなくなる。
「っ!この後に及んでまだ妾に抵抗するとは!木間伊月を殺すだけではダメだな」
アスタロトはまた札音の記憶を辿る。そしてニヤリと笑った。
「今度はどちらを殺そうかな?盤城龍太郎?それとも、読札霊太?」
その言葉にアスタロトの中の札音が暴れる。
「そう暴れるでない!じきに二人を木間伊月と同じところに送ってやる。そして最後に東山札花もだ」
アスタロトはニタニタと笑うが実は本人はそんなに余裕がない。
(予想以上の宿主の抵抗。これは少し休まなければいけないか)
そしてアスタロトは思い出す。
「そういえば、わたしを信仰している集団がいたのだった。とりあえずはそやつらに襲わせるとしよう」
そうして札花に触れられなかったアスタロトは自身を信奉する者たちの元へ向かうのだった。
・・・
アスタロトが去っていって少しあと
『九死一生』
わたしは復活した。わたしは札花が近くにいるので違和感がないように蘇生する。今はステータスで言うとほぼ瀕死状態と言ったところか。わたしは普段死者蘇生は使わないから、ここで生き残っても違和感を感じない且つ生き返れる魔法をついさっき作った。
「くふっ!」
札花に気づいてもらうために声を出す。札花はどうやら気づいたようだな。
「もしかして・・・」
札花はわたしを確認して鼓動を感じる。
「まだ息がある!」
そうして札花はわたしを病院に連れて行くのだった。
・・・
わたしは今病院にいる。ここにいると言うことは作戦が成功したということだ。
もともと相手の攻撃では傷つかないが自分自身に弱体化の魔法をかけ、わざわざ攻撃を通して死に事前に用意していた蘇生魔法で回復する。どうやらうまくはまったようだな。
わたしは一旦切り替える。さて、だがこれで役者は全て揃った。これからは魔素をセーブする必要性は減ったな。まあ、魔素は物質を破壊する力を素で持ってるからこの世界で気軽に使っていいものでもないが・・・。
わたしは今まで貯めてきた魔素を消費する。
『アカシック・レコード リミテッド』
この魔法はこの世界でもアカシック・レコードが使えないかと画策してできた魔法だ。アカシック・レコードよりは万能ではないが特定の範囲で特定の情報に絞って情報を探るなら問題はない。まあ、その特定の範囲とやらは結構狭いのだが。しかしその範囲内であればアカシック・レコードに近い情報探査能力はある。
「わたしが探すのは人だ」
そうして展開していると、札花を見つける。病院内だ。どうやら黒い液体を飲んだ影響は本人が思ったより大きかったようだ。わたしは札花について、調べてみる。ほう、年齢は17歳、両親は札音が幼い頃に亡くなっていると札音に言っているが、実は両親は生きていて、借金の身代わりにされたようだ。両親は碌な奴では無かったようだな。
わたしは色々と見ていると、龍太郎と霊太がこちらに来ていた。どうやらわたしのお見舞いに来たそうだ。しかしこいつらがいるとなると・・・
そしてわたしは予想通り見つける。
「やはり!組織の構成員が近くにいる!」
わたしはそいつを調べていく。
「なるほど、審問官と言う組織がアスタロトを呼び起こそうとしているのか」
その審問官の構成員の女から、組織の構成、場所、計画に至るまでありとあらゆる情報を抜き取る。そしてそれを魔法で紙に転写した。
しばらくすると龍太郎と霊太がやってくる。
「師匠!大丈夫ですか!」
二人は心配そうに声をかけてくる。
「ああ。わたしは大丈夫だ。だが札音が・・・」
わたしは札音について二人に説明する。
「そんなことが」
「くっ!どうして」
二人は違う反応を見せる。そしてわたしはアカシック・レコード リミテッドで調べた情報を教えていく。アスタロトについて、審問官について。
「審問官!」
その言葉を聞いた途端霊太は拳を強く握り締める。そして足で地面を叩くと悪態を吐く。そこには札音以外にも審問官と言う組織に対しての明らかな恨みがあった。
「クソが!」
わたしは霊太を落ち着かせる。
・・・
「すみません。おれ少しおかしくなってました」
「いや、いいんだ!こんな状況だ。おかしくもなる」
「そうだぜ俺だって怒りの炎が燃え上がっているからな」
わたしたちは霊太をフォローすると、霊太はまた喋り出す。
「いえ、おれは、実はこの件以外でも審問官とは因縁があるんです。奴らは、おれの家族を・・・くそっ」
霊太は嫌なことを思い出したのかさらに取り乱したが少し経つと落ち着く。そして、霊太は過去の出来事について話し始めた。
「これはおれの昔の話です」
そして回想が始まった。
・・・
それは、おれが四歳の出来事
おれは昔、母と兄の三人で暮らしていた。
「霊太〜、冥斗〜ご飯よ〜」
「はーい」
「わかった」
おれたちは仲良く暮らしていた。
テーブルには唐揚げがある。おれたち家族はテーブルの唐揚げを食べ合っていた。
「兄ちゃん、これ最後食っていい?」
「いいぞ」
「やったー!」
おれの家族は本当に幸せだった。あるときまでは、
おれが五歳になる誕生日の頃、おれの親父 読札黎明が現れた。
おれの母さんは父親とは離婚して遠くに逃げるようにしてきたらしい。しかし、親父はおれらを追ってきた。
「どうして・・・」
お母さんは玄関の扉の先にいた男を見て動悸が止まらない。
「母さん!」
おれは母さんに駆け寄り、兄ちゃんは男の前に立ち塞がった。親父であるその男は言い放つ。
「ああ、せっかく研究のために子供を拵えたのに連れてかれるとは、飼い犬に手を噛まれるとはこのことか。いや、そもそもお前は飼い犬ですらないか」
その男はおれら兄弟を子供として見ていなかった。その目は冷酷でただただ研究のモルモットがどうなるかを観察するような目だ。
「確かに逃げ切れたはずなのに・・・」
その母の言葉に親父は冷酷に返答する。
「ひどいな。これがせっかくの感動の再会を果たした者の言うセリフか?」
その言葉に母さんは反応する。
「お前に父親をなる資格はない!」
お母さんは強い口調で言う。そして父親は今回きた目的を話し始めた。
「今回はある新薬の被験者を探しててね。これが成功すれば審問官はさらなる成長を遂げられる。光栄に思えよ、我が子供たち。お前らは選ばれた」
その言葉に母さんはまた反応する。
「素直に、子供たちを渡すとでも?」
母さんはデッキを構える。こう見えても母さんは凄腕なのだ。しかし、親父の動きが一足早かった。
「別に連れて行くわけじゃないよ。あいにく、ここでもできる実験でね。少しちくっとするだけなんだ」
そう言って発射型の注射針をバックから取り出した。それを目の前の兄ちゃんに向けて発射する。母さんが動いたが遅かった。注射器は兄ちゃんに刺さる。
「ぐっ!」
兄ちゃんは苦しみ出す。母さんが背中をさすりながら兄の名を呼びかけていると、兄ちゃんから黒い液体の触手のようなものが出てきた。それは母さんに向けて振るわれようとしていた。
「危ない!母さん!」
「っ!」
自分の目の前まで血が迫る。
「母さん?」
「霊・・・・・太」
そこには腹から真っ二つになった、母さんがいた。
「母さん・・・嘘だよな。ねえ!母さん!母さん!」
「霊・・・・太」
母さんの上半身からだんだんと体温が抜けて行く。
「母さんが死んじゃう。死んじゃやだよ。母さん!」
しかし時間は待ってくれない。
「うがああああああああああ」
兄ちゃんがおかしくなっている。きっとあの薬のせいだ。その様子を見て親父は感嘆する。
「おお、これだよ!実験は成功だ。ただ、コントロールができてないな。その器ではないと言うことか・・・」
親父は色々と考え込む。その様子を見て、おれは何かが切れる音がした。
「クソやろぉぉぉぉぉ!兄ちゃんと母さんが返せぇぇぇぇ!」
しかし目の前にはおかしくなった兄ちゃんがいる。親父には届かない。それをいいことに親父は淡々と告げる。
「ちょうどいい!性能テストだ。おいモルモット!そこのモルモットを処分しろ。ギャーギャー騒いで不快だ」
そうして親父は命令した後去っていく。
「待てぇぇぇぇぇ!お前の相手はおれだぁぁぁぁ!」
しかしその言葉も響かない。そしておかしくなった兄ちゃんはおれの方に向かってくる。すると突然母さんが最後の力を振り絞りおれの手を握った。母さんの手には何かが一緒に握られていた。
「霊・・・・・太・・・・・・冥・・・・斗・・・・・・あ・・・・・して・・・・」
これが母さんの最期の言葉だった。母さんがおれの手を握ったところには母さんが生前使ったデッキが置かれていた。
おかしくなった兄さんは悲しむ暇も与えてくれないかの如く、近づいてくる。
「ぐああああああああああああああああああ」
おれは涙を拭き、母さんのデッキでバトルを開始するのだった。
カード図鑑⑥
事象カード
名前 研究所防衛プロトコルΩ
このカードは4ターン目終わりまでの間使用できる。召喚コスト3以上のクリーチャーを全て破壊する。このカードの効果は他のカードの効果を無視する。相手の破壊したクリーチャーの中から一体を選びそのクリーチャーの召喚コスト分山札からストックにカードを置く。
木間伊月のデッキの中に入っているカード。グレートオールドワンズにおける1ターンとはドローからターンエンドまでで1ターンである。ターンはパニックカードのターンも1ターンと加算される。強力なカードだが、先行の2回目の終わりまでしか使えない。作中では登場していないが、序盤に強力なカードを消すカードは、多くのデッキで採用されている。その理由としては、相手の最初の手札次第では1ターンで勝利が決まってしまうことがあるからだ。作中でも木間伊月と東山札花が対戦したときは木間伊月が最初のターンにライフをゴリゴリと削っていた。そんなときに活躍するのが今紹介しているカードだ。序盤に手札がいいからって調子をこいているとえらいめに合うぞ。




