狂人は負けイベントをやり過ごしたい1
〈ラスボスが現れました〉
バトルを開始するときそんな言葉が脳内に響く。
「・・・・・・え?」
わたしはその通知に驚愕した。ラスボスが現れるなんて・・・。
そしてわたしは問題に気づいてしまった。
「確かわたしがラスボスを倒すと負けになるんだよな」
そう、わたしはゲームのルールによりラスボスを倒してはいけないのだ。
(倒すとこれまでの努力が水の泡か)
それだけは阻止したい。できれば戦わずここから離脱できればいいのだが。
わたしはアスタロトの方をじっとみる。うん。この状況では逃げられないな。やつはわたしと戦うまで諦めないだろう。
(ならばどうすればいい?負けるか?)
いや。確かにわたしは素の身体スペックが高いから、負けても闇のバトルの攻撃を余裕で耐えられるだろう。しかしだ。はたして闇のバトルで負けたのに生きていたわたしをアスタロトは放っておくだろうか。そんなことは無いだろう。だとすればこの場を切り抜ける上での最適の案はズバリ・・・
(この場で自身の死を演出し、この場をやり過ごすこと)
わたしは方針が決まるとラスボスとの一世一代の八百長を始めるのだった。
・・・
アスタロトとのバトルが始まった。
「先行を行く!ドロー」
わたしはカードを引いたあとカードを出す。
「事象カード世紀の大実験を発動!」
事象カード
名前 世紀の大実験
自分の山札の上から三枚を見て、クリーチャーカードが出た枚数山札から手札に加える。そのあと山札から取り出した三枚のカードを山札に戻し、山札をシャッフルする。
山札から三枚を見る。ビッグスライム、失敗作G、エリートクローン兵士か。全てクリーチャーカードだ。わたしはカードを三枚引き、山札をシャッフルする。さらにわたしは展開する。
「カードを一枚伏せ、クローン兵士を召喚!」
クリーチャーカード
名前 クローン兵士
種族 ラボモンスター
攻撃 700
防御 100
召喚コスト0
このクリーチャーがフィールドに出たとき、次の自分のターンはじめまでこのクリーチャーはフィールドに残り続ける。
「防御状態でターンエンド」
そこにアスタロトは突っかかってくる。
「あれ?攻撃はしないのかな?先生?妾の宿主のこと気にしてる?あはははははは!嬉しいな。僕、痛いの嫌だから傷付けられなくて良かったよー。なんてね。はははははははは」
アスタロトはめちゃくちゃに言っている。
「別にそう言うわけでは無い」
(勝ったらダメだからな)
「いや、強がらなくてもいいよ。うぬは妾の宿主が心配で攻撃出来ないのだろう?安心せい。妾が宿主の体を有効に使ってやる。じきに、この体も妾に完全に染まる」
どうやら、わたしが攻撃を躊躇っていると思っているようだな。まあ、躊躇っているのだが、わたしには一応は札音とアスタロトを分離することはできる。だから分離して倒すって言うことはできなくは無いのだが、やはりそれをするということはラスボスを倒してしまうというわけであってわたしには出来ないのだ。
わたしはアスタロトの言葉に黙った。
「・・・」
そしてアスタロトは自身のターンに入る。
「ドロー!あははははは!妾の最初を飾れ!来い!グラシャ=ラボラスを召喚」
クリーチャーカード
名前 グラシャ=ラボラス
種族 悪魔
攻撃 1500
防御 1000
召喚コスト 0
このクリーチャーの攻撃は防御されない。
その姿は鳥の翼を生やした犬のようであった。
「妾の期待に応えよ。グラシャ=ラボラス」
その掛け声と共にわたしのライフへ攻撃される。グラシャ=ラボラスの効果で防御は出来ない。
木間伊月 ライフ 7→6
アスタロトはフィールドに新たにカードをセットしてターンエンドを宣言する。そしてパニックカードのターンになる。ここであるカードが引かれる。
パニックカード (クリーチャーカード)
名前 サルガタナス
種族 悪魔
攻撃 9000
防御 7500
このカードはプレイヤーが使うことはできない。
このクリーチャーがフィールドに召喚されたとき、先行と後行の順番を入れ替える。このクリーチャーは先行のプレイヤーから交互にプレイヤーのストックを攻撃する。このクリーチャーはブロックされない。
「特大のハズレが来てしまった」
パニックカードには色々な効果のカードが出てくる。まあ、大抵は勝負したプレイヤーの個性が反映されているカードが多いんだけど、たまにやばい効果のものも混じっていたりするのだ。
「先行と後行の順番入れ替えに中途半端に高い数値、非常に厄介だ」
わたしがそう言うとアスタロトは煽る。
「あはははははは、実に滑稽!惨めなものだな!運命にもみはなされるとは!」
そんなことを言っているとパニックカードの攻撃が始まる。サルガタナスの効果により防御は出来ない。
木間伊月 ライフ 6→5
「そしてサルガタナスの効果により先行と後行の位置が入れ替えられたことで妾のターンになる!」
「擬似エクストラターン!ドロー!妾は裏返ししていた契約に縛られたメロディーガールを召喚!」
「これは!札音のカード!」
クリーチャーカード
名前 契約に縛られたメロディーガール
種族 せ◾️◾️のつねのむとやは
攻撃 100
防御 700
召喚コスト 1
たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて イタイ イタイ イタイ イタイ くるしい くるしい くるしい くるしい・・・
それは札音が使っていたカードだった。しかし名前も様子も違う。札音が使っていたのはメロディーガールだし、普段の格好はボロボロになり、首から鉄の首輪をつけられてそこから出る四本の鎖は自在に空を舞っている。しかも目からは血の涙を流している。それに・・・
「なんだこのテキストは」
テキストには効果も何も書いていなく、悲痛な叫びだけがあった。それを見てアスタロトは笑う。
「あはははははははは。いいね!いいね!このリアクション!うぬが苦しむと思って、わざわざコストも相性も割に合わないこのカードを入れたのだ!だがしかし、どうやらこれを入れて正解だったようだな!妾は契約に縛られたメロディーガールを防御に置く。どうだ?妾はうぬが攻撃したら、こやつで防御してやろう。どうだ?最高に楽しかろう」
わたしは反論をしようとするとある声が響き渡る。
「札音!正気に戻って!」
そこには札音の姉、札花が目を覚ましてアスタロトの目の前に立っていた。
カード図鑑④
クリーチャーカード
名前 契約に縛られたメロディーガール
種族 せ◾️◾️のつねのむとやは
攻撃 100
防御 700
召喚コスト 1
たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて たすけて イタイ イタイ イタイ イタイ くるしい くるしい くるしい くるしい・・・
このカードのテキストはよく目を凝らすと本来の効果が見えてくる。
クリーチャーカード
名前 契約に縛られたメロディーガール
種族 妖精
攻撃 100
防御 700
召喚コスト 1
このクリーチャーがフィールドにいる限り、相手の種族妖精または植物の召喚コストを1増やし、このカード以外のフィールドにある自身のカードの種族妖精または植物の防御力を500する。
デッキが種族が妖精中心の場合だったら強いがアスタロトは種族悪魔を使うデッキのため、本当に無駄である。黒い液体を飲んだ札音が使っていたカード。格好はボロボロであり、首から鉄の首輪をつけられてそこから出る四本の鎖は自在に空を舞っている。しかも目からは血の涙を流している。このカードの絵の背景には壊れて廃棄された楽器の大地があり、その上に絶望した面持ちで契約に縛られたメロディーガールが膝を崩している。ここで本来のメロディーガールを見てみよう。
クリーチャーカード
名前 メロディーガール
攻撃 700
防御 1500
種族 妖精
召喚コスト 1
このクリーチャーがフィールドにいる限り、このカード以外の自身のクリーチャーの攻撃力と防御力を900増やす。
このカードは札音がアスタロトになる前の札音のデッキに入っていた契約に縛られたメロディーガールの元となったカードである。格好は音楽隊のような格好をしていて持っている指揮棒からは旋律が宙に出ている。このカードの絵では楽器たちと仲良く歌っている様子が確認できる。契約に縛られたメロディーガールの絵を見る限り何かがあったということが伺える。




