狂信信者は布教したい7
しばらくするとフォルトゥナが目を覚ました。
「お姉ちゃん!」
フォルトゥナはわたしに抱きつくと胸の中で泣いていた。
「よしよし、怖かったね。もう大丈夫だから」
わたしはフォルトゥナを慰める。まだ子供なんだから、いっぱい甘えてもいいのだ。
そんなことをしているとジョン王と護衛がここに来た。ジョン王は扉の前の兵士の亡骸に狼狽えるそぶりをしたあと中に入ってきた。
「テュポーンの討伐。我が国を代表してお礼を言う」
わたしはお礼を受け取ったあとあることを聞いた。
「そして残念ながら脅威はまだ終わってはいない。先ほど風竜の棲家の方向から100体ほど竜が接近しているとの情報が入った」
「百体!」
わたしは絶望する。一体ではなく百体、それほどまでの風竜がここに向かってきていると言うのか。
「ここに到着するまであと15分だ。どうか巫女殿はこの王都を逃げてくれ、すでに手遅れだが、巫女が死んだとあれば、他国が黙ってないだろう。わたしたちが時間を稼ぐ。たとえ王都が潰えたとしても、この国は守らなければ」
15分と言う時間に驚愕する。それではろくに時間がない。ジョン王はそう言うがこちらにはアナシスのように重傷で動けないものもいるのだ。それに・・・
「わたしは困っている人を見捨てて逃げるほど落ちぶれておりません」
わたしはキマ教の巫女なのだ。常に清くあれ!わたしがここで逃げたらそれは果たして清き行為と言えるのだろうか。答えは否、そうじゃない。清貧なるこころを秘め、わたしは竜を迎えうつ準備をするのだった。
・・・
わたしはフォルトゥナを連れて防壁に来ていた。今回は風竜百体の群れだ。百体も来たらどっちみちどこも街は危険地帯になるだろう。だからもしものとき守れるように連れてきた。わたしはジョン王と話す。
「ここを切り抜けたら。祝勝会でもあげましょう」
「そうだな。貴殿も健闘を祈る」
そう言葉を交わし合った。もうそろそろ姿が見えてきた頃、突如として異変が現れる。
「空が・・・割れた?」
突如として空に亀裂が走ると穴が開く。
「なんなんだあれ!」
「この世の終わりだ!」
兵士たちはパニックだ。
飛んでいた風竜も驚いたようで止まったが、何も起こらないのでまた近づき始めた。そして目でくっきり見えるくらいまで近づいたときそれは現れた。
突然音がぴたりと止む。空気は揺らぎ張り詰めた空気が漂う。鳥たちは囀りをやめ、息を殺す。それは魔獣であれ人であれ同じだった。
(木々が・・・恐怖している?)
異常であった。こんな重圧、生きている中で感じたことなどなかった。そして空に開いた穴から何かが現れた。
「っ!」
全身に汗が滴る。荒れ狂うオーラに気を失ってしまいそうになる。しかし、わたしは裂け目から出たものの正体をいや御姿を見た。
「白髪に黒髪か少しまじり、黒いローブ。そしてこの圧!あなた、いえ、貴方様は・・・」
この場にいる全員が本能的に自覚した。今わたしたちは神を見ていると。
神はさらに手を挙げると魔法、いや、あれを魔法と言うのもおこがましい。神の魅技を放った。
『天罰』
それは一筋の雷だった。その威力は全てのものを消し去りその周囲にいたものも消し去る。しまいには、大気中の魔素さえもこの威力に耐えきれず消滅していた。それにより風竜は一体も残らず跡形もなく消し飛ぶ。
「あなたさまが・・・我らが神・・・」
わたしは感動した。神はわたしたちを救ってくれた。神はわたしが想像したよりも、幻想的で、かっこよく、慈悲深く、何よりもわたしたちを助けてくださる。
(お慕いしています。キマ様)
わたしは感動して祈りを捧げる。そして風竜を倒してからすぐに空に開いた穴に帰っていってしまった。
わたしは他の人の制止を振り切り、後を追うように森に向かう。
わたしは空が裂けた真下まできた。
(もう塞がってしまった・・・)
わたしはがっかりするが。あるものを発見する。
「金色のきのみ?」
キマ様が現れた真下にはわたしがこれまでに見たことのない木があった。わたしはドライアドなので樹木の声を聞くことができる。わたしはその明らかに特殊な樹木に問いかけた。
(君はどこからきたの?)
わたしはその木に聞いてみる。すると先ほどここに来たと言った。やっぱり。
「これは神の木なのか?」
わたしはそう推測する。それに金色の果実明らかに普通の木じゃない。するとその木は提案してきた。
「えっ?自分は世界を回りたいからどうか木にやどってくれ?」
確かにわたしたちドライアドは宿る木を変えることができる。でもそれは大幅な弱体化を代償とするものであり安易に行うものではなかった。しかしわたしはすぐ決断する。
「やるわ」
わたしは今の木から乗り換える。
(さようなら)
わたしは長く愛用した木におさらばして神の木に乗り換える。するとすぐに変化があった。
『不老長樹木に宿りました。新たに『不老』を獲得します』
そうしてもともと長生きだったが、わたしは不老になった。
・・・
後日
「お姉ちゃん、ご飯無くなっちゃうよ」
今、わたしたちは祝勝会を開催していた。わたしたちは無事に帰り無事王都を守り切ったのだ。
「なあ、お前はあれを見たか?」
みんながあのことについて話している。わたしたちが信仰している神、キマ様。そのお力を間近で見たのだ。そうなっても仕方がないだろう。ああ、キマ様。わたしは貴方様にわたしの全てを捧げたい。
わたしはキマ様の御姿を何度も想像するのだった。
・・・
それから、一ヶ月、この国では、キマ教がさらに広まった。その原因はもちろんあの出来事のおかげだ。なんとこの国の王様ジョン王もキマ教の信者となったのだ。
わたしたちはアナシスの療養もあってまだいたがそろそろ動けるようにはなった。
「これくらい回復したらヒールを使えば・・・治った!」
「申し訳ございません。マルタ様。迷惑をかけて」
アナシスは申し訳なさそうにする。
「いいの。これはお互い様なんだから。あの状態で生きていただけで偉いよ!」
わたしはフォローを入れる。帰りにはフォルトゥナも一緒だ。フォルトゥナの心臓の魔石は現在動いているが、それは一時的な話だ。本来ならもう機能していないところをわたしの付与で強制的に動かしている。しかし付与は次第に薄れていくので定期的に再付与が必要なのだ。しかしその付与が魔石について知っていたわたししか現状できないのでわたしが必要不可欠なのだ。
「さて、出発しますか」
わたしたちは馬車に乗るとルドル国民から盛大に見送られる。
「巫女様ー」
「マルタ様」
「ありがとう」
わたしたちはそんなルドル国民を見ていると突然辺りが光に包まれる。
『『神聖魔法』を入手しました』
わたしは不意に新たに魔法を手にする。そして変化はそれだけではなかった。
『受胎告知』
わたしのお腹が膨らむ。
「生命が宿ってる」
わたしに渡された神聖魔法、そして直後のこれだ。もしかして、これは
わたしはこれを瞬時に理解した。
「神の子」
きっと神はわたしの働きに祝福をくれたのだ。わたしはそう受けとると腹を愛おしそうに撫でた。
なお、この後はしっかりと騒ぎになった。




