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第11話・春の山菜天盛り合わせ定食と日替わりお子様ランチ(後編)

ナレーション「反政府勢力のミハラたちが何故クロスレンチを所持しているのか、理由を問いただすメガネ。ミハラが開口したと思いきや、間の悪いことに、注文した料理が運ばれてきてしまう。そんなカフェレストランの一幕の続きである」


ミハラ「話は遠慮せずに食べながら聞いてちょーだいね。パンケーキはあったかいうちに食べた方がうまいからね」


メガネ「ええ、いただきます」


ミハラ「【グビッ】代わりに私もコーヒー飲みながら話させてもらうから、ね。【グビッ】で、単刀直入に言うと、私らがクロスレンチを持ってる理由は正規軍と対等に戦うためなんだ。【グビッ】裏ルートで横流しされたクロスレンチを改造して使ってるの」


メガネ「改造……ですか」


ミハラ「【グビッ】連合軍結成以前は各地の反乱勢力が各々で武器を調達していて、そのほとんどが戦前に作られた中古の銃なんだけど、最近になってコウノトリ側でも対策が進んで、銃火器や手榴弾なんかの戦前の兵器がどんどん通用しなくなってきてるのよ。【グビッ】……なあセミちゃん、全然食べてないじゃん。【グビッ】冷めないうちに食べてよ~」


メガネ「あ、はい。【モグモグ】」


ショウ「うわっ……なにこれ……まずい」


ハン「ふきのとうっスか?」


ショウ「苦いし青臭いし最悪なんだけど」


ハン「そんなもんでしょ。ふきのとうなんだから」


ショウ「……」


ハン「ん?……ああ。……あー、ふきのとうの味、オイラ気になるなー。フライドポテトと交換してくれないかなー」


ショウ「え?しょうがないなー!そんなに言うなら交換したげるよー!」


ミハラ「【グビッ】で、さっき君らが山でクロスレンチと交戦した時も、ミッちゃんが発砲する前に正確に銃を狙撃されたろ?【グビッ】あれも『加護』の力で、クロスレンチに周囲の兵器を検知させる技術らしいのよ。【グビッ】君らがクロスレンチの射程圏内に入った時点でどんな武器を持っているかは相手にバレてたし、攻撃体勢に入った瞬間に先手を取られて、銃を排除されたってわけ。【グビッ】こんな感じで、今後、戦前の銃は通用しなくなると見て間違いないし、戦後はそもそもクロスレンチ系以外の武器の製造と所持が禁止されて、表のルートでの流通もないから、なんとか対抗手段を得るために、リスク承知で秘密裏にクロスレンチを手に入れて、足がつかないように改造して使ってるってわけ。【グビッ】要するに、今、古い銃を使うのは竹槍で戦闘機と戦うようなもんだから、せめて私らも戦闘機に乗って対等に戦えるようにあれこれ工夫してる……みたいな話ね。【グビッ】オッケー?」


メガネ「オ、オッケーです」


ショウ「妹、タラの芽あげる」


ハン「ん、どーも【モグモグ】」


ショウ「……」


ハン「……ミニハンバーグ食べます?」


ショウ「うーん。別にそこまで食べたいわけじゃないけどぉー、妹の善意を断るのも教育上良くないよねぇー。もし断ったらぁー、ショックで妹グレちゃうかもしれないよねぇー。というわけで食べます」


ミハラ「【グビッ】当然、裏ルートで武器を横流ししてもらってる以上、内通してくれる人が必要なんだけど、実はここの施設の人たちも内通の協力者なんだ。【グビッ】武器の一時的な保管場所を提供してもらったり、あとは今日みたいに、銭湯やらレストランやらを貸切にしてもらうこともたまにあるのよ。【グビッ】コウノトリと戦うためには、コウノトリの下で暮らしてる人々の協力も必要だと私は思うわけ。【グビッ】連合軍としても、あくまでコウノトリ政権と対立してるのであって、一般市民とは対立していないし、むしろ理解してもらって、協力してもらうことが不可欠なの。【グビッ】これは絶対に忘れないでね」


メガネ「なるほど……覚えておきます」


ミハラ「【グビッ】店員さーん、コーヒーのおかわりお願いしまーす。ごめん、ちょっとおしっこ行ってくる」


ナレーション「席を立つミハラ」


ショウ「その目玉焼き、すっごくうまそうだね!」


ハン「タケノコと交換します?」


ネクラ「……」


メガネ「……なあ、5日も缶詰と水くらいしか口にしとらんし、少しでも腹に何か入れとった方がええで。……ほら、一口やるから、な?食べとき」


ネクラ「……ん」


ナレーション「パンケーキを切り分けて、ネクラに食べさせるメガネ。そしてトイレから戻ってくるミハラ」


ミハラ「やー、ただいま。……ところで、君ら、片っぽが静かだともう片っぽが元気だよね。なんていうか、持ちつ持たれつのいいコンビだよね」


メガネ「ええ、まあ。……いつか共倒れしそうで怖いですけどね」


ミハラ「いやいや、君らみたいなのは案外共倒れしないもんだよ。1人がダメなときにもう1人が滅茶苦茶に頑張れるタイプとでも言うのかな?そういう関係は強いし……こんな戦いの中だからこそ……寄り添って……持ちつ持たれつの関係を築ける相手がいるってのは……とっても大切だよ……」


ネクラ・メガネ「……」


ハン「あ、姉上、メンチカツどうスか?海老天と交換しません?」


ショウ「欲しがりません、カツまでは」


店員2「お待たせしました、コーヒーのおかわりです」


ミハラ「ああ、どうも……。【グビッ】……それはそうと、君らの話を聞かせてほしいな!勝手にあだ名つけておいて今更だけど、お2人さん、名前はなんていうの?」


メガネ「メガネウラです。『メガネ』って呼んでください」


ネクラ「……ネクラです」


ショウ「ショウ=ライスです」


ハン「ハン=ライスです」


ショウ・ハン「2人揃って『一人前シスターズ』です。よろしくお願いしまーす」


ミハラ「えっと、『根暗』ちゃんと『眼鏡』ちゃん?……いやー、さっきみたいにクロスレンチに果敢に挑むあたり、『根暗』というよりむしろ『熱血』じゃない?」


ネクラ「……そう言われましても、親の苗字が『ネクラ』なので……はい」


ミハラ「……」


メガネ「……」


ナレーション「メガネの顔をまじまじと見るミハラ」


ミハラ「……裸眼……だよね?」


メガネ「……!いや~、前は眼鏡かけてて名実ともに『メガネ』だったんですけどね~」


ミハラ「あ、もしかしてコンタクトにしたの?」


メガネ「いえ、レーシック手術受けたんですよ」


ミハラ「へぇ~。好きだな、そーゆーギャグ。あ、そうそう、私、実は一人っ子なんだけど……いや、この話はつまんないからやめておこう」


メガネ「え、なんですか?聞かせてくださいよ~」


ナレーション「組織の内部事情やメガネの持ちネタが明らかになる中、窓の外では日が沈み、夜の闇と山火事の炎のコントラストが浮かび上がっていた。次回、『コウノトリの野望』第12話に続く!」


***


ミハラ「ごちそうさん。店長とオーナーによろしく」


店員1・店員2「ありがとうございましたー」


店員1「……こんな感じでたまにミハラさんが連合軍の人を連れて食事にくることがあるから、可能な限り顔と名前は覚えておいてね」


店員2「それにしても、白スーツのお姉さんイケメンでしたね!顔はいいし背も高いし、元々モデルとか女優やってたんですかね~?」


店員1「ん?白スーツって何?」


店員2「お子様ランチ頼んでた人ですよ。めちゃめちゃ大人っぽいのにお子様ランチっていうギャップもたまんないですよね!」


店員1「え、誰の話してるの?」


店員2「ほら、黒いジャージの子の隣に座って天ぷらとフライドポテト交換してた人ですよ」


店員1「……そんな人いなかった……よ?」


店員2「え?え?ほら、伝票だって確かに……あれっ!?」

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