25話
生徒達はキャンプファイヤーを囲み楽しんでいる1,2年生、それを少し離れて遠目に見ている三年生といった具合に別れていた
明はキャンプファイヤー周りを、俺と園花は3年生の中を探す事にした
「3年生を両端から2人で探せば時間もかからないだろうね
キャンプファイヤーは1人で2周くらいできそうだろうし、15分も探せば十分かな?」
明の提案に俺たちは頷いて答えた
「できれば私、三年生の方でもいいですか?
キャンプファイヤー周りだとおそらく友達に捕まって帰れなくなるので」
園花は苦笑いで答える
人気者は辛いところだ
「じゃあ僕がキャンプファイヤー周りを探そう
充に三年生は頼めるかい?」
俺は頷いて答えた
「じゃあまたここに」
それを合図に俺たちは3手に別れた
賑わう周囲とは裏腹に、俺は1人で新谷を探しながらゆっくり歩いた
探す手前、たくさんの生徒の顔を見るが、どの人もその顔には笑顔が浮かんでいた。
それを見るとやはりこの文化祭は大成功だったのだと感じた。
なんとなく俺はゆっくり歩き、この暖かな空気を感じていた。
そういえば
なんとなく自由だなとは感じていたが、それはそうだ。
この文化祭で1人で動く事は初めてに近い。
ほぼ明と行動を共にしていたし、今日なんてほとんど3人の監視下に置かれていた。
トイレだって警戒されながらだ。
そう感じるのも無理はない。
帰りだって初日は隣には雪がいたし、昨日なんて校長に家まで送り届けてもらうと言う普通の生徒では体験できないことまで起きた
思い返せば返すほど長い3日間だった。
本当に慌ただしかった。
その反動からかこの自由とのんびりした時間は心地よく感じた。
俺はそんな感情に浸りながら新谷を探した
たまに友達を見つけるが、大概は部活の仲間とつるんでいるので少し声をかける程度
のんびりと回ることができたので、見落としはないだろう。
ちょうど半分まできたところで意外と早く園花と落ち合い、一応を含め、そのままの方向で2人とも一周することにした
しかし園花が探して見つからなかったという事はこの先には新谷はいない事だろう。
気楽な頭でのんびりと歩いた。
しかしその頭の中でぐるぐると巡っているのはやはり首なし干支事件だった
しかし、考えれば考えるほどドツボにハマっていくとはこの事で
一向にこれだと言う答えに辿り着けずにいた
正直、新谷が答えを導き出したと聞いて安堵して自分がいる。
しかし悔しいと感じる自分がいる事に嘘はつけなかった。
どうせなら自分で答えを見つけたい
俺は新谷探しもそこそこに、ゆっくりと考えた
色々考えても見失うだけ
考える事は一つにした。
それは芸術部で見つかった無傷の羊。
この3日間、頭の隅にはこの事がずっといた。
自分が在籍した部活でそれが見つかれば尚更のこと。
しかも明が気づいたように、この暗号は干支と部活名をリンクして文字が浮かび上がる仕組みだ。
しかし、いくら考えてもI kill future の最後につく文字を見つけられなかった。
芸術を英語にしたところで「art」でしかない。少し捻って「beautiful」や「paint」なんて文字を当てはめてみたがそれらしき物が見当たらない。
…いや、待てよ?
羊は無傷だったんだ。
それなら、逆に考えれば…
テロン
ポケットのスマホが小さく震え、俺にメッセージが届いたことを教えた
画面を見るともう50分近く。
まずい、考え込んで約束の時間を過ぎてしまった。
案の定送り主は明で、メッセージにはこう書かれていた
『園花ちゃんとは落ち合ったよ
さっきの所は運動部系の人に取られちゃったから昇降口に集合でいいかい?』
との事だった
『遅れて悪い。すぐに行く』
と送った。
あと一歩で答えに辿り着きそうなんだが
まぁ、それは3人で話し合えばすぐ答えは出るだろう。
昇降口なんて1分もあれば着く距離だ。
さっさと集まって今考えた話を2人にもしよう
人混みを抜け、昇降口に向かうタイル張りのコンコースをぬける。
昇降口の前には二つの人影があった。
言わずもがな、明と園花だ。
「遅いぜ充」
明は笑みを浮かべながら言う
「悪い悪い、考え事をしててな
ついつい遅くなった」
俺は素直に詫びた
「考え事?事件のことですか?」
園花が尋ねる
「あぁ、羊の細工について考えていたんだよ」
「なんだい。まだ自分で解く気だったの?」
明は呆れたように言う。
当の本人だって諦めてないくせにだ
「まぁ聞けよ、少し考え方を変えたんだ
羊以外の細工は首がなかっただろ?」
そう言うと明は頭を縦に振る
「あぁ、だから頭文字を取るって発想になった」
「そう、だからこそ羊の細工も頭文字を取るのではと考えていた。
けどそれは間違いなんじゃないか?」
「間違い…ですか?」
「そう、だって羊は頭を取られてないじゃないか」
「つまりどう言う事ですか?」
園花は首を傾げる
「逆に考えるんだよ、無傷の細工からは文字を取らない。
なら文脈から連想すればいいんじゃないか?」
「文章から連想?どう言う事だ?」
そこまで言って俺は得意げに歩き出す。
2人は俺についてくる
行き先はいつもの渡り廊下、歩いて数秒のところだ。
「文章の最後。英文字が入るなら無理せず該当の部活に投げ込むべきだ。
つまりそこには「文字」は入らない。
なら入る文字は予想できるだろ」
話しながら俺は美術準備室を見た
暗闇では分かりにくい。
さらに遠目では何も見えない。そう思っていたのに俺はすぐそこを見つけた
何故か
美術準備室だけ電気がついており、昼間なびいていたカーテンは動きを止めているが、そこには人影が一つ映し出されていた
人にしては頭でっかち。そう、かぼちゃをかぶっているような…
その瞬間俺の背筋に電流が走り、全てのピースが繋がった。
しかし同時に脳裏に浮かぶのは最悪のシナリオ
犯人の計画通りにことが進んでしまう
咄嗟に体が動き、昇降口に走り出す
「おい、充‼︎どうしたんだよ‼︎」
突然の俺の行動に驚いたのか、後ろから明の声が聞こえた
「先輩!?」
遅れて園花の声
俺は振り返ることができなかった
「明、園花‼︎向かいながら説明するからとにかく美術準備室に来てくれ‼︎」
俺は無我夢中で昇降口の重い扉を開け、靴も脱がずに校舎を走った
昇降口の時計は7:55分を指していた




