裏門の逃亡者(進)
これはこれは驚いた。校長サマだ。
「おとなしーく、校長室にいればよかったのに。」
「ふん。誰かと思えば、精霊の裏切り者じゃないか。」
その呼ばれかたは不本意だが、こいつにはそんなの通じない。
「なぜ、こんなことをした?おとなしくしてれば殺さないという話だったろうに。」
私が気になったことだ。
「所詮あんなもの口約束。信じる方がバカだ。そうだな……お前もバカだな。私の能力知らない訳じゃないよなぁ?」
「当たり前だ。」
知らないわけがない。
「お前のせいで多くの仲間が死んだ。精霊界でも本来なら処刑されてるぞ。」
「だから、処刑しなかったのがバカなんだよ。今や私は人間界はおろか精霊界すらも脅かす存在だと分からないのか?」
「知ってるさ……。」
「ならなぜ、今さら関わる?もはやお前じゃ勝てんぞ。この私に。」
……ちっ、腹の立つやつ。
「ふん。でも校長さんはウチの部活の生徒に手を出した。それは部長として許せないんだよねぇ。」
「なにが部活だ。群れることでしか身を守れない奴の考えることは分からんな。グループとか、派閥とか、そんなもの裏切られたら終わりだ。仲間もそうだ。だから私は裏切られる前に、殺した。でも、能力は残る。これじゃ人間にしかメリットがないなぁ!」
校長は笑って続ける。
「デメリットがないのに殺さない手はない。殺してつぎの契約を結び、また殺す。これで、能力を無限入手できるんだ。精霊界が人間界に干渉しようとした結果生じたバグだよなぁ?現実じゃあパッチはない。報告がなければ気づかないガバガバな世の中なんだよ、現実世界なんてな。」
本当にクズだ。だが、精霊界から許可が出ていない以上、私はこいつを殺せない。あくまで私は。
「じゃあな、裏切り精霊。」
校長は去る。私は追いかけることができなかった。
私のチカラではどうしようもなかった。