気持ちいいお風呂だった。(ユウ)
「ふぃ~ぇ。」
おもわず変な声が漏れた。
浴槽に張られたお湯の温度は熱すぎず、冷たすぎず。
まさに「丁度いい」温度と言えた。
「キモチーねェ、ユウくん。」
そう言ってきたタルトの顔は、仮面越しだったけれど柔らかくなっているように思えた。
ボクはうなずいた後、天井を見上げた。
特に何か考えがあったわけじゃないけどね。
ふと、明日学校に集まる約束があったのを思い出した。
自分の部屋のカレンダーに書いておいたから、どうせ後からでも思い出しただろうけど。
もう一度タルトの顔に視点を戻して、僕は小さくため息をついた。
「……タルト。」
「ン?ナニ?」
「明日学校行くんだけどさ、着いてくる?」
別に精霊を置いていこう、みたいな話は上がっていなかったはずだし、誘っても問題はない……はず。
「……イイノ?」
「うん。明日家にコウお姉ちゃんしかいないと思うし、だったらまだこっちにいた方がいいかなって思ってさ。」
「ワカッタ。アシタはボクもイッショだね!」
「うん……ふふっ。」
なぜだか思わず笑みがこぼれてしまった。
からだも温まってきたので、会話もそこそこに僕達はお風呂場から出た。
体についた水滴をタオルで拭き取り、あらかじめ準備しておいたパジャマに着替える。
着替え終わらせてリビングに向かう。
「ふぁあ……」
タルトが小さくあくびをした。
「眠いの?」
「ン……イイニオイ……」
タルトが袖に顔を押し当ててそう言った。
「におい?」
「ユウくんのニオイ……」
「なっ……!?臭かった!?毎日お風呂入ってるのに……」
「チガウっ!イイニオイだヨ!」
どうしたらいいか僕が迷っていると、キッチンから声が聞こえてきた。
「お2人さーん。ご飯食べる?」
「お姉ちゃん?」
「私以外誰がいんのよ。」
「そうだけど……お仕事ないの?」
「あー……明日来るように連絡来たから。今夜はいいってさ。」
「ふーん……。」
「で、ご飯食べるの?タルトちゃん姿見えてるし、なんかすごく眠そうだけど。」
そう言われて左腕に重みを感じて、目をやるとタルトがもたれ掛かっていた。
「とりあえずタルト寝かせてくるね。」
「いってらっしゃ~い。襲っちゃダ・メ・だ・ぞっ。」
お姉ちゃんの言った「襲う」の意味が分からず首をかしげた後、タルトを抱えあげた。
「……ピュアね。」
というお姉ちゃんの呟きを聞き流しながら、僕は廊下の先にある自分の部屋に向かった。




