後輩コンビの帰り道(芽妹)
「にしてもさ、誰が先輩達のこと襲ったのかな。」
帰り道、突然梨乃が喋りだした。
「さあな。」
俺はテキトーに返す。
「梨乃、許せないなー。先輩達を傷付けるなんて。」
それは俺も同じだ、許せないよな。
「そうだなー。」
でも、テキトーに返す。
俺はあまり梨乃の方は向かないようにして、あまり言葉も発さないようにして……
「……ねぇ、芽妹聞いてる?」
「聞いてるよ。許せないに決まってんだろ。」
「じゃあなんで返事してくんないの……?」
梨乃は俺の前に回り込み、首をかしげながらこちらの顔を見てくる。俺は足を止める。
俺は、梨乃が男と知っていながら、ひとつひとつの挙動にあどけなさを感じる。
「なんでもいいだろっ。」
俺は歩きだす。このままでは意識しちまう。
別に梨乃と付き合いたいとかいう願望はないんだけどな。
「むー……。芽妹はクールすぎるよぉ……。」
そう、梨乃はいわゆる『男の娘』だ。
梨乃は小学校のときに転校してきた(その時から格好は女の子)。
先生も女の子として接していたし、クラスの皆も女の子だと思っていた。
俺は小学生の時に、放課後に男子トイレで着替えてる梨乃を見た。そんときに誰にも言わないでって言われ、二人の秘密……になった。
梨乃がチュニ部に入ったのは男女で分けられてる部活は嫌だという本人の意志から、一緒にゆるそうな部活に入ることにした。
先輩達みんな優しくて、梨乃はすぐ打ち解けた。自分は男だって、さらっと暴露してたし。
梨乃のことを男だと知っているのは、俺を含めたチュニ部のメンバーだけ……のはず。
「ねぇ!そろそろ別れるとこだよ。ここの交差点でお別れでしょ。」
「あ、あぁ。じゃあな、梨乃。」
「バイバイ、芽妹。」
「はぁ、今日1日で色々起こりすぎだよな。マジで。」
俺は一人で呟く。
学校、いつから始まんだろ。
なんてことを考えながら俺も家の方向に歩き出した。




