闇纏う2人―1(路野江)
「……で、我に何の用だ。」
「あなただって訊きたいことあるっていってたでしょ。」
我だって、ユウが図書室に行くなら行きたかったぞ……
いや、今はこんなこと考えてちゃダメだな。
「話っていうのはね、ま、いくつかあるんだけど。」
路野江先生は一呼吸置く。
「まず、あなた闇を上手く扱えないのに無理に使おうとしたでしょ?」
なんだと?
「我は闇なんて使っていない!!確かに、我の闇は暴走するが……先生のいうような闇じゃない!!」
「じゃ、妄想だと思ってるの?」
っ……言葉が出てこない。なぜだ、我は、我は……
「どうなの?闇を持っているの?持ってないの?」
「わ、我は……我は…………」
柄闇さんは顔を下に向けてしゃべらない。だが、本物の闇を持つものとして、中二病ですませる訳にはいかない。
私にもあんな過去がある手前、そんなこと言える立場じゃないかもだけど。それでも……
その時、柄闇さんが頭を上げる。でも眼帯が外れており、その左目は黄色く光っていた。そして、
「あーあ、そんなに露季のことイジメないであげてよ。」
と言った。私はどういうことなのか分からなかった。
ただ、私はただひとつ、「この子は柄闇さんじゃない。」と感じた。なんの根拠もない、直感だ。すると、
「驚いてるね?まず、私は露季じゃないよ。」
ふふっ、と笑みを浮かべたその子は確かに柄闇さんではなかった。
「あー、なんていうのかな、私は露季の裏の人格……っていうのかな。ま、ツユって呼んでよ。正規の名前はないし、露季からはツユって呼ばれてるし。」
ツユ……そのままね……なんて気にしなくていいか。
「そういうことだから、色々教えてくれない?あなたのことも分からないから。」
そうね、分からないわよね。
「私は路野江よ、それ以上でもそれ以下でもない。それと、こちらからも質問があるのだけど。」
ツユは首をかしげる。私は続けた。
「よく何かの拍子に人格が入れ替わる……みたいなのを見かけるんだけど、あなたはどんなスイッチなの?」
ツユは少しこちらを見つめ、
「私は、基本的に露季が精神的、肉体的にピンチだと感じると、私が出てくる。自動的にね。」
と答えた。
ふーむ、自動的に入れ替わるのか……ということは、さっきの私の質問で柄闇さんは危険を感じたのか。なんというか……悪いことをしたかな。
「それでね、体が眠りについてるときに意識が……というか、2人の人格が会話できるのね。だから、その日の夜に状況を確認しあえるの。さっき寝てたときも話してたよ。」
へぇ……そんな感じなのか。
「それでそれで、路野江のチカラはどんなチカラなの?」
あ、ああ。教えないとね。
「私のチカラは主に他人の闇を吸収して使うような感じ。限度はあるけどさ。」
そう言ったとき、ツユの顔がひきつったように見えた。気のせいだろうか?
「そうなのか、吸収できるなんて……スゴいな!」
……あれ?私って名乗った気がしないんだけど……
さっき「路野江」って呼んでた……よね?偶然はないよね……。
「ねぇ、あなた本当は誰なの?」
私はそう言ってツユに近づくと、ツユが身構えた。
怪しい。
「隠せると思ってたのに……」
どういうこと?私は困惑を隠せなかった。
「そうだね。私は露季の裏の人格なんかじゃないさ。でも、別に敵じゃないよ、今のところはね。」
「あなた……何なの……?」
私は思わず声に出した。
ふぅ、と『自らをツユと呼ぶ何か』は息を吐き、
「私は闇だ。露季の持つ闇。」
と呟いた。
私は出す言葉が見つからなかった。




