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僕らに吹く風に揺れる花  作者: ヨハン
未来へ走る少女
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変化

嬉しいコメントありがとうございます! 僕も出来れば次は氷室ルートが書きたいですw でもとりあえず、久代ルートはちゃんと書き終えるつもりですw

 今朝はいつもよりも眠い。純粋に寝不足だった。

 昨夜、ベッドに入っても全く寝付けなかった。それは間違いなく、久代のあの行動によるものだった。


「……」


 何気なく頬を触る。思い出すと少し顔が熱くなる。

 隣を歩く風花は不思議そうにこちらを見ている。


「ハル君?」


「え?」


「どうかした? 顔赤いよ?」


「あ、いや。今日も暑いなっ」


 手で仰ぐ動作をし誤魔化そうとする俺を、風花は更に不思議そうに見つめる。

 

「な、なんだよ?」


「んー……」


 風花はやけに澄んだ目でこちらを見てくる。

 その目で見つめられると心が見透かされる気がする。風花も野上と似ているな。


「いや、なんでもないー」


「……ほっ」


 朝からどうしてこんなに冷や冷やさせられるのだろう。


「あ、結ちゃん。おはよー」


「お、風花ー!」


 学校の校門前で久代と出くわす。

 久代は風花には普通に挨拶をした。しかし、俺を見るとすぐに目を逸らす。


「お、おはよ。ハルっち」


「あ、あぁ。おはよう」


 久代も昨日のことを少し意識しているのだろうか。

 明らかに様子がいつもと違う。


「……」


 風花はそんな俺達をじっと見つめる。


「風花?」


「……あぁ、なるほど」


「おーい、風花ー?」


 風花は勝手に一人で何かを納得したようだ。

 そして、立ち止まる俺達をそっとしておくように歩き出す。


「野上君の言ってた意味がなんとなく分かったかも。というわけで私は先に行くねー!」


 野上……あの野郎、いつか何とかしないとな。

 俺は呆れたような目で風花の後姿を見送る。


「あ、あのさ。ハルっち」


 久代の声に俺は振り向く。


「どうした?」


「テスト終わった週の次の週の休み、どっちか空いてるか?」


「え?」


「その日、どっか出かけたいなーって思って……出来れば二人で」


 久代は微かに頬を赤くしながら提案する。

 二人で出かけるって、それじゃまるでデートじゃないか。いや、デートか。


「い、忙しいならいいんだ!」


「いや……多分大丈夫だけど。急にどうかしたのか?」


「……ちょっと確かめたいんだ」


「え? 確かめるって何を……」


「じゃ、私も先に行くぞ」


 何を確かめるのか。それを聞く前に久代はその場を立ち去ってしまった。






 数日間に及ぶ期末テストも最終日を迎える。

 テストが終わる度にクラスの生徒の大半は憂い顔になっていた。氷室はいつも通りのクールな表情、野上も穏やかな顔だったので二人は順調だったようだ。

 風花と清川、久代は例に漏れず……まぁ、皆あれだけ頑張ってたしきっと大丈夫だろう。

 俺は特に順調でも駄目駄目でもなく、至って普通だった。

 

「陽菜ちゃんどうだった……?」


「……聞いちゃ駄目だよ風花ちゃん」


 この二人はお互いに傷を舐め合うような態度だ。変な意味ではない。


「ハルっち、よく分からなかったぞ……」


「まぁ、大丈夫だろ多分」

 

 久代はそこまで悪くないと思うんだけどな。

 ちゃんとやり方は理解できていたし。


「氷室はどうだった? 僕、個人的に氷室には負けたくないなぁ」


「ふん。私はいつも通りだ。お前なんかと比べるな」


 氷室の凄い物言い。しかし野上は微妙に笑っている。

 うん、だって氷室結構対抗心むき出しだもんな。

 あくまでクールを装う氷室と、あくまで穏やかを装う野上。この二人の間では謎の心理戦が行われているようだった。






 とりあえずそんな感じでテストは終わった。放課後になり、テストを終えた生徒達は夏休みへ向けて色々と語り合っていた。

 俺は帰り支度をしていた。風花や野上、清川もそれぞれ帰り支度をしている。

 

「皆テストが相当嫌いなのねー……今の皆は凄く輝いて見えるわ」


「あ、琴姉……じゃなかった。美里先生」


 帰り支度中、琴姉が教室に入ってくる。

 女子生徒数名に手を振られると笑顔で手を振り返している。


「今は別に先生付けなくてもいいわよ。ハルはどうだったの?」


「俺はまぁまぁ普通……かな?」


「家に教師がいるっていうのに全く勉強聞いてこなかったものねぇ……」


 琴姉は恨めしそうにこちらを見てくる。


「うっ……ま、まぁいいじゃん終わったんだから」


「お姉ちゃん寂しかったのよ……うぅ」


「変な泣き真似は辞めてくれ」


 琴姉はわざとらしく泣き真似をしてみせる。

 確かに一度も勉強聞いてないな。


「琴姉は夏休みどうするんだ?」


「夏休みでも教師は忙しいのよ……男子生徒や男性の先生にお誘いはよく受けるんだけど」


「だろうな」


 琴姉は年齢以上に若く見えるからなぁ。


「ハルは?」


「んー……」


 あと一週間で夏休み。一応来週の休日は久代と出かけることになっているが。

 俺は自分の机でだらけている久代をちらりと見る。


「あら~……? 久代とどこか行くの~?」


 からかうような口調で俺に尋ねてくる琴姉。

 

「まぁな」


「青春ねぇ~。まぁ楽しんできなさいよ」


 琴姉はそう言って教室から出て行く。琴姉も楽しい夏休み送れるといいな、そろそろ。

 

「俺も帰るとするか」


 俺は席を立って歩き出す。

 教室を出る前に久代の席へ行く。


「……」


「いっ……何するんだー!」


 机に突っ伏していた久代の頭を軽く指で弾く。

 

「お、いつも通りの久代だ」


「私はいつでも私だぞ!」


「そりゃ良かった。てっきり性格が変わったのかと」


「何を言って……あっ」


 久代は何かを思い出したように口を押さえ俺から目を逸らす。

 

「あ、あれはだな……忘れろ!」


 視線を泳がせながらそう言う久代。こういう姿見るとちょっとからかいたくなるな。


「無理だな。あんな久代はレアだろ」


「なっ! 忘れろ!」


「頬にキスしてきたのはどこの誰だったかなー」


「!! うぅ……ハルっちのばかぁ……」


 久代涙目。そして顔真っ赤。

 やばい。ちょっとやり過ぎたか。


「ごめん、ちょっと悪ふざけが過ぎた」


「ぁ……」


 久代の姿があまりにも怒ったリンに似ていたために頭を撫でてしまった。

 久代はその瞬間小さな声を漏らし俯く。


「あ、悪い。つい……」


「うー……私は部活に行く! 馬鹿ハルっちの馬鹿!」


 馬鹿って二回言われてしまった。

 久代はカバンを持って教室を出ようとする。教室を出る直前にこちらを向く。


「べ、別に嫌ってわけじゃないぞ……撫でられるの」


 久代、ツンデレ発動。

 いやお前そんなキャラじゃないだろと思いつつもツンデレが好きな俺はちょっとドキッとしてしまう。普段は元気で時々大人しくなる女友達のツンデレというのも新鮮で良いと思う。


「あれがハル君の好きなツンデレっていうのかな?」


「わっ、風花!」


 風花が後ろから尋ねてくる。

 思わず驚いてしまう。


「一緒に帰ろ、陽菜ちゃんと野上君もいるよ」


「あ、あぁ」


「それとね、ハル君」


「なんだよ……」


「じれったいね、ハル君と結ちゃんって」


「な……っ」


「って野上君が」


 野上は後で絶対に懲らしめるとして……。

 周りにはそんな風に思われているんだろうか。


「私は二人ともお似合いだと思うよ?」


「風花まで……俺とアイツはそんなんじゃないって」


「んー……なんだかな。ハル君が鈍感なのは昔からだけど……」


 俺鈍感じゃないと思うんだけどな。


「ギャルゲ……ていうのかな? あれの主人公みたいだね」


「ギャルゲの主人公と一緒にするなよ……」


 ギャルゲのように上手くいくならこんな風にはなってないだろう。

 少なくとも、あの手のゲームの主人公は少しの時間があればヒロインをモノにしてるし。無駄にイケメンだしスペック高いし。

 出来ることならあんなフラグ建築能力とハイスペックな所を吸収したいくらいだ。

 

「じゃあ聞くけどさー……ハル君は結ちゃんのことどう思ってるの?」


「………………」


 俺は答えることが出来なかった。

 ただ、少なくとも嫌いではない。久代のいる生活は楽しいし、久代がいないとつまらないと思う。

 でも、好きかと聞かれると何も言えない。

 俺は久代をどう思っているのか。その答えはどこにあるのか。それはまだ分からない。

一応ここでこの小説の方式をおさらいしましょうw 一章は共通のお話ですが、そこからはヒロイン毎に別々の話を書きます。特定のルートでの話はそのルートだけの話で、別のヒロインのルートには全く関係しません。(設定とか共通のイベントは別ですが……) 一人のヒロインのルートが終わり、別ヒロインのルートが始まる場合は一章の最後まで時間が戻ります。 つまり、一章の最後の話が分岐点ってことですね。キャラを一人一人別々に攻略出来るゲームと同じと考えてくださいませ。 というわけで、引き続きこの小説をよろしくお願いします!

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