表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
農民の俺が育てた作物、なぜかドラゴンに跪かれて管理社会が崩れ始めました  作者: 森乃こもれび


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/111

第56話 位相負荷

 例外調査局の会議室は、

 以前より静かだった。


 報告は増えている。

 だが、

 破壊は起きていない。


 それが逆に不気味だった。


 壁一面に貼られた地図には、

 小さな印が増えている。


 夜が来ない村。

 凍らない川。

 縫い直された都市跡。

 影が伸びない丘。


 どれも局所的。

 だが、

 分布に偏りがある。


「接合線上だ」


 エリオットが言う。


「接合線?」


 リナが問い返す。


「世界を一枚の布と仮定する。

 だが、

 実際には複数の布を縫い合わせている」


 川で感じた抵抗。

 消失した都市の地層断層。

 畑の侵入不可境界。


「縫い目には負荷が溜まる」


 彼はチョークで線を引く。


「世界が固定されすぎると、

 接合部に張力が集中する」


「固定されすぎる?」


「管理だ」


 静寂が落ちる。


 管理社会は秩序を保つ。

 法を整え、

 水路を整え、

 土地を均す。


 それは正しい。


 だが、

 世界が自然に“揺らぐ”構造なら。


「揺らぎを止め続ければ、

 圧はどこへ行く」


 リナが低く言う。


「縫い目へ」


 エリオットは頷く。


「それが位相負荷仮説だ」


 世界は層構造。

 法則は重なっている。


 本来はわずかにずれているものを、

 文明は固定する。


 すると、

 ずれが溜まる。


 一定値を超えると、

 局所的固定が発生する。


「夜が止まり、

 水が凍らず、

 空間が進まない」


 それは破壊ではない。


 **負荷逃がし**だ。


「では竜は?」


 副官が問う。


「圧調整装置の可能性」


 エリオットは即答する。


「原因ではなく、

 逃がす側だ」


 畑では、

 人が線を越えた。


 負荷が集中し、

 竜が現れ、

 空間を固定した。


「だが最近は竜が来ない」


 リナが言う。


「圧が分散しているか、

 処理能力を超えているか」


 会議室が静まる。


 処理能力。


 竜は無限ではない。


「もし処理能力を超えたら」


「縫い直しが起きる」


 消えた都市。


 変わった川底。


 微妙にずれた地層。


 縫い直し。


 その語は、

 まだ正式記録に載せない。


 だが、

 内部では共有される。


「主任」


 リナが静かに言う。


「これ、進行してます」


「否定はしない」


 印は増えている。


 間隔は短くなっている。


 位相負荷は、

 増大している。


 その夜、

 畑でカイルは空を見た。


 星の並びが、

 ほんのわずかに違う。


 気のせいかもしれない。


 だが、

 土の奥で、

 以前より深い振動がある。


 竜は現れない。


 均衡は保たれている。


 だが、

 固定点が増えれば、

 世界は硬くなる。


 硬くなった世界は、

 折れやすい。


 例外は、

 崩壊ではない。


 崩壊の前兆でもない。


 ただ、

 圧の証だ。


 位相負荷は、

 静かに積み上がっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ