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トキヒサの記憶とトキヒサの懸念

挿絵(By みてみん)


 末次さんが行ってしまった後、景色がどんどん暗くなっていくけど、ちょうど時間切れになったってことかな。結局ここが何だったのか気になるけど、後で確認するかな。・・・いや、ちょっとだけ。ちょっとだけ寄り道するか。

 前にテルペリオンと記憶を遡ったのを応用すればなんとか出来るんじゃないか?例えば、そうだなエイジェスの記憶を見るとか。・・・少し違うか。じゃぁどうしようか、俺の記憶を見ても仕方がないだろうし、となると。

 気になるのはやっぱり途中で末次さんに呼ばれたアレンか。なんで俺のことをアレンなんて呼んだのか、ずっと気になっていたし。時間もないからそれでやってみることにしようかな。

 『アレンなるものの記憶を辿る』

 ぐっ、これは、いつの記憶だ?目線が低い、子供の頃か。でもここは、地球ではないな。あれは魔源樹か。枝が集められて、杖が作られて。俺の杖、いやアレンの杖か。父親もいる。すごく険しい顔をしているけど。なんで杖を取り上げるんだ?同年代が魔法の練習をしている姿が羨ましい。俺は父親に稽古をつけてもらっている。素手で戦う格闘技の練習ばかりしている。月日が流れ、目線が高くなっていく。同年代の姿を見る限り、多分17歳くらいの高校生かな。なにかの競技会か。アレンは素手で挑んでいくが、悉く魔法に阻まれている。いいところは何もない。周りから悪口が聞こえる。時代遅れだの、無駄な努力だの、ただの馬鹿だのと。アレンは走り、人里から逃げていく。そのまま旅立つ、ゴブリンを蹴散らし、ドワーフの街に滞在し、妖精のイタズラに苦しめられ、やがてガーダンの村に辿り着く。村では何かの競技会が開かれていた。魔法のない競技会が開かれていた。当たり前のように参加する。当たり前のように勝ち進む。当たり前のように優勝する。旅の中で自分の格闘術は洗練され、免許皆伝のガーダンに匹敵するほどの技術を身に着けていた。ガーダンの村での暮らしはとても充実したものだった。でも、何か物足りない。再び人里に戻る。逃げ出してから10年の月日が経っていた。同年代の暮らしは一変していた。皆それぞれ仕事を持ち、家庭を持ち、だが俺だけは独りぼっち。人里で仕事を探してみる。戦闘能力が高かったので、魔物の討伐屋としての仕事を貰えた。順調に実績を作っていく。ドラゴンと出会う。さらに月日が経つ。おそらく40代のある日、新人の指導を頼まれる。まだ年端も行かない少女だったが、魔法で筋力を増強し巨大なハンマーを振るう豪快な戦い方をしていた。とても仲の良いパートナーになった。2人で・・・いろいろ・・・立ち向か・・・やがて・・・でも、

 景色が崩れていく。もう時間切れだ。まだ行けそうではあるんだけど、いや今は止めておこう。仕方がないよな。

 

 「九十九君!?大丈夫なの?」

 「うーん、委員長?どうした?」

 「どうしたじゃないでしょ。突然どっか行っちゃうから、驚くじゃない。」

 「ちょっと委員長、声が大きいって。」

 「あっ。」

 巨人の家に忍び込んでいるんだもんな。それにしてもアレンの記憶を探っている間は委員長からは俺の事が認識できなかったみたいだな。心配させて悪かったな。

 「話は後で、早く帰ろう。」

 「そうね。」

 引き続き隠蔽してもらいながら早く巨人の家を出ていくことにする。みんなこっちの事をちらちら見てくる当たりどうことになったのかすごく気になっているみたいだけど、みんな黙々と歩いているな。でも巨人の家から少し遠ざかった頃、マコトは我慢できなくなったみたいだな。


 「それで、どうだったんだ?」

 「大丈夫だった。」

 「認めてもらえたのか?良かったな。」

 「まぁな。」

 女子3人も安心しているような、少し驚いているような複雑な顔をしているけど、でも感心しているみたいだな。みんなが思ってるよりもっと大変だったんだけど。そうだ、ヨシエ委員長に確認しておかないと。

 「ねぇ、委員長。あれって、俺の深層心理だったの?記憶とかじゃなくて?」

 「え?うん。深層心理と記憶は無関係じゃないから、どちらとも反映されてもおかしくないけど。どうかしたの?」

 「まぁね。末次さんの事が終わったら話すよ。」

 あとはデンメスを倒すだけだし、それが終わってからにしよう。すごく重要な事だけど、すごく無慈悲な事な気もするからな。

 「どこへ行っていたんだ?」

 テルペリオンか。もうこんなところまで戻ってきていたんだな。

 「テルペリオン様、これは、」

 「いや、みんなは先に帰っていてくれ。テルペリオンと話がある。」

 「そ、そう?いいの?」

 「ああ。」

 みんなはテルペリオンに一礼しながら帰っていく。それを見てテルペリオンは何か言いたげだったけど、俺がその目をジッと見ると黙って通してくれて、ありがたいな。

 「話とはなんだ?」

 「デンメスの所に行って来た。あの子の気持ちを確かめたかったんだ。」

 「それだけか?」

 テルペリオンは訝しむように俺を見てくるけど、今どこまで話すかはちょっと迷っているんだよな。

 「もう1つあるんだけど、あの子の事が終わってからでいいかな?」

 「何故だ?」

 「聞いたら、他の事が手につかなくなると思うから。」

 テルペリオンの目がさらに険しくなっちゃったけど、末次さんの事はちゃんと決着つけたいんだよね。約束したし。

 「良かろう。終わったらすぐに教えてもらうがな。2人同時でも良いと、デンメスと話してある。とっとと決着をつけることだ。」

 「そうなのか?それってデンメスに不利なんじゃないか?」

 「さてな。都合が良い分には問題ないだろ。」

 「そりゃそうだけど。」

 まぁいいか。パトリックと2人なら戦いやすいしな。それにしても、アレンの事を話したら、テルペリオンは俺のことを許してくれるのだろうか。


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