表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢を語る桃源郷  作者: 四太郎
39/50

涙の再会

 村長の屋敷の門番に、村に来た要件を訪ねられファイアは、

「この村の川縁にある鍛冶屋の知り合いだ。旅の途中でね、ついでに寄ろうかと思っているのさ〜」


「そうかい。まあ、村長に取り次ぐほどの用じゃね~な。好きにしな」


「あの…。私はドロシアの兄ギュッタです、妹が何時もお世話になっております。」


「……? お前、ギュッタじゃねえか! ちょっと待ちな。」

 門番は屋敷に一旦引っ込んだかと思うと、1人の少女を連れて来た。


 妹のドロシアだ、元々ブロンド髪に青い目で母親譲りの美少女だったが、すっかりメイドの服装が板につき、垢抜けていた。


 ドロシアはギュッタを見つけると泣きながら駆け寄ってきた。

「兄ちゃん! 今までどうしていたの!? 2ヶ月ほど前にクラノスの兵隊さんが来て、プリエトに居るって聞いていたけど。便りもなくて…」


「ドロシア、ご免よ。そんなに泣くなよ、色々あって便りが出せなかったんだ。」


 門番の話では、村長の奥方に気に入られ奥方の御側係になって奉公人としての修行に励んでいるとのことだ。

 ギュッタは、ドロシアにお土産に銀とガラスでできたブローチを渡すと、ドロシアは大層喜び、今後はまめに手紙を出す約束をして別れた。


「カーンさん、どうされました?」


 ファイア(グレン・カーン)

「俺、泣きそう…」


「ヨナ?」


「俺、母子家庭7人兄弟の1番上で、クラノスから出稼ぎに来ているんだ。グッと来たぜ」


「どうしよう…。これから、教会に預けた弟にも会いに行くんだけど。カーンさん、ヨナも大丈夫?」


「お供するぜ!」


「右に同じさ〜」


 馬場に戻るとファイアの馬に、小さな飛竜のハナが騎乗していた。


 3人は馬で村の教会まで移動した。


「デュー! 兄ちゃんだぞ!!」


 デューは少し驚いたが…ギュッタを強く睨みつけると、そのまま教会の中に駆け込んでしまった。

 ギュッタは、長い間弟を1人にしたことを後悔した。

 暫くすると、村にいた頃大変世話になった僧侶が出てきて、ファイアやヨナタンに挨拶をした。


「ギュッタ! 立派になりましたね。村ではあれから色々ありましたよ」


 僧侶は3人に昼ごはんを振る舞い、去年の冬から起きたことを説明してくれた。

 父親が酒毒で暴れ、教区の修道院で終生奉仕活動をすることになったこと。

 妹のドロシアは村長の奥方に好かれ忙しくなり、安息日の礼拝でもまともに会えなくなったこと。


「あの様な父でも、デューにとっては身内のでしょう。殴る蹴るで危ないのに実家に戻ろうとし、修道院に行く父を泣きながら後を追い、大変でした」


 ギュッタにはデューが、父親を慕う理由が分からない。

 父親と暮し続ければ、デューは間違いなく父親の暴力で殺されている。

 ギュッタは、僧侶にお土産のお菓子を手渡し、教会を去った。


 背後でデューの声がする。

「こんな物、要るものか!!」


 ファイアもヨナタンも、ギュッタに声をかけられなかった。


「夢を追うのは難しいです。でも、何が起きても私は前にしか進みませんよ。フフフ」

 ギュッタは、ファイアとヨナタンに笑ってみせた。


「お前は強い。だから俺の夢さ~」


 ギュッタは苦笑いしながらヨナタンに話しかけた。

「ヨナ、読み書き苦手だって言っていたけど、家族に便りくらいは出せよ。俺みたいに嫌われちゃうぞ」


 ヨナタンは神妙に頷いた。

 飛竜のハナは空で甲高く鳴いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ